トヨタの小型ピックアップ「ハイラックス」誕生。いち早く米国に進出してブランドイメージの基礎を構築【今日は何の日?3月21日】

一年365日。毎日が何かの記念日である。本日3月21日は、ランドクルーザーとともに米国市場でトヨタブランドを浸透させ、現在も世界140カ国以上で愛され続けている「ハイラックス」が誕生した日だ。

米国で愛されて世界的なロングセラーになった小型ピックアップ

1968(昭和43)年3月21日、トヨタの小型ピックアップトラック「ハイラックス」が誕生した。翌1969年から米国に輸出され、使い勝手の良さと優れた耐久信頼性で高い評価を獲得、米国におけるトヨタのブランドイメージの基礎を構築したロングセラーモデルだ。

ダットサントラックに対抗してトヨタが投入した小型ピックアップ

トヨタの「ライトスタウト」と日野自動車の「ブリスカ」の統合後継モデルとして1968年に誕生した初代ハイラックスは、トヨタが企画し、日野が開発と生産を担当した共同開発の小型ピックアップトラックである。

1968年に誕生した初代「ハイラックス」

頑強なセパレートフレーム構造に、スタイリッシュなデザインを採用。パワートレインは、70PSを発生する1.5L(その後、1.6Lに変更)直4 OHVエンジンと4速MTの組み合わせ。サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン、リヤはリジットアクセルを採用、駆動方式はFRだったが1年後に4WDが追加された。

3名乗りで積載量は1トン、荷台長は1850mmで使い勝手の良さと優れた耐久信頼性で好評を得た。車両価格は標準グレードが51万円/DXグレードが54万円。ちなみに、当時の大卒初任給3.1万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で標準グレードが約378万円に相当する。

トヨタの北米進出とハイラックスの躍進

日本のモータリゼーションに火が付いた1960年代後半、日本メーカーは世界最大の米国市場へ目を向け始めた。

1958年に初めて米国に輸出された初代「クラウン(トヨペットクラウン)」。評価されずに販売停止。

トヨタは、1957年カリフォルニア州に米国トヨタ自動車販売を設立し、翌1958年に「クラウン」と「ランドクルーザー」の本格的な販売を開始した。しかし、当時のクラウンは高速性能が米国の道路事情では通用せず、すぐに販売を休止。一方のランクルは、自慢のタフさが評価されて人気を獲得、米国でのトヨタブランドを築く礎となった。

ハイラックスの米国輸出は、モデル誕生の翌年、1969年から始まり、ランクルのタフさを継承した小型ピックアップとして日本以上に米国で人気を獲得。米国では、ハイラックスのようなピックアップは一般的な商用よりも、気軽で便利なパーソナルカーとして活用されるケースが多い。荷物が運べて、どこでも走れる、ちょうど開拓時代から愛用されていた“馬”のような位置づけなのだ。

1958年に初めて米国に輸出された20系「 ランドクルーザー」。信頼性の高さが高評価された。

さらにもうひとつ、GM/フォード/クライスラーのビッグ3にもピックアップはあったが、ハイラックスのようなコンパクトサイズのピックアップがなかったことが大きかった。

初代「ハイラックス」の1トン搭載の荷台

RVブームをけん引した派生車ハイラックスサーフ

ハイラックスは、1972年に2代目、1978年には3代目へと進化し、米国全土にその名は浸透して、その成果を日本のモデルへフィードバックバックすることもあった。

そして、4代目ハイラックスの派生車として1984年に初代「ハイラックスサーフ」がデビューした。ハイラックスサーフは、ハイラックスにFRP製トップを設けて、広い車室空間と荷室スペースと、多くの荷物を積んでどこにでも行ける走破性の高さが受け、当時日本でブームに火をつけたRVとなったのだ。1980年代後半には、バブル経済を追い風に、ハイラックスサーフはアウトドア派から高い支持を受け、RVブームを代表するヒットモデルになった。

1984年発売の初代「ハイラックスサーフ」

しかし、バブル崩壊後にスタイリッシュな乗用車系のSUVが人気を集めるようになったことから、2009年に「ランドクルーザー・プラド」に吸収されるかたちで生産を終了。ハイラックスサーフとプラドは同クラスだが、日本市場が求めているのはピックアップトラック派生のハイラックスサーフではなく、ランクル派生の乗用車系SUVのプラドだったのだ。ハイラックスサーフは海外では「4Runner」の名前で現在も販売され、人気を博している。

56年もの間、世界140カ国以上で活躍するハイラックス、トヨタでの累計販売台数はカローラの次に多い。商用車だけに注目度は低めだが、長くトヨタを支えている看板モデルのひとつである。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…