史上最高益・好決算続出 自動車メーカーの2024年3月期決算を比較する トヨタ、ホンダ、日産、スズキ、マツダ、SUBARU

5月13日のスズキ、SUBARUの決算発表で、国内自動車メーカー各社の2023年度(2024年3月期)の決算がまとまった。各社、半導体不足の解消や為替(円安)の影響で、好決算となっている。トヨタ、ホンダ、日産、スズキ、マツダ、SUBARUの決算を「売上」「営業利益」「営業利益率」「販売台数」から見てみよう。

決算説明では売上高(営業収益 厳密には売上高と営業収益は異なる意味だ)、営業利益、経常利益、配当、ROEなどの数字が発表される。

営業利益は「本業の売上高から売上原価、販売費、一般管理費を差し引いたもの」で新聞記事等では「本業の儲け」を表すと書かれている(経常利益は、本業以外で得た収益と損失が含まれている)。

今回は、売上高、営業利益、営業利益率に注目して、トヨタ、ホンダ、日産、スズキ、マツダ、スバルの決算を見ていこう。また、販売台数の2023年度実績、2024年度見込みについてもまとめてみた。

トヨタ 営業利益5兆円超え! 来期は意志ある足場固め

2024.3月期前期比2025.3月期見通し増減
営業収益45兆0,953億円121.4%46兆0,000億円102.0%
営業利益5兆3,529億円196.4%4兆3,000億円80.3%
営業利益率11.9%+4.6ポイント9.3%▲2.6ポイント

トヨタ・レクサス販売台数

2024.3月期前期比2025.3月期増減
1,030.9万台107.3%1,040.0万台100.9%

さまざまなメディアで報道されているように、トヨタの2024年3月期の決算(国際会計基準)は、桁外れに素晴らしいものだった。本業の儲けを示す営業利益は、5兆3529億円。日本企業で初めて5兆円を超えた。売上高にあたる営業収益(45兆0953億円)も営業利益も日本企業として最高だった。

営業利益率は11.9%。前年度が7.3%(この数字も悪いものではない)を大きく改善している。国内メーカーで利益率2番手のスバル(9.6%)と比べても11.9%の凄さがわかる。トヨタは直近でもっとも高かった2015年度でも10.0%だった。

好業績を支えたのが、利益率の高いHEV。24年3月期のHEVの販売台数は前期比で87万台増えて約359万台だった。また、為替の影響(円安)も業績に好影響を与えた。

HEVについて、佐藤社長は「豊田(章男・現会長)が社長時代からずっと信念を持って、5年前に”BEV遅れてるぞ”と、だいぶ言われているなかで、勇気を持って現会長の豊田が”これがマルチパスウェイなんだ”と軸をぶらさずにやってきたからこそ」と語っていた。

この桁外れの好決算は、一年の実績でなせるものではない。リーマンショックによる赤字からスタートした前社長(豊田章男氏)の13年間があったからこそ、だ。

2009.3月期から2022.3月期までの13年間で損益分岐台数が約30%も改善。研究開発費も1995-2008年平均から124%アップしている(2009-2021年度平均)。苦しい時期に研究開発費を削らなかったことがいま花開いたと言えるだろう。

2025年3月期は営業収益が46兆円(+2%)、営業利益は前期(2024年3月期)から1兆0529億円減の4兆3000億円を見込む。これは単純な減益を意味するのではない。

決算発表で説明されたところによると、5兆3529億円の3529億円は、市場環境(為替など)によるもので、本来の儲ける力は5兆円で、2024年3月期も同じ5兆円を稼ぎ出す力はあるという。5兆円から7000億円(人への投資3800億円、成長領域へのプラス投資3200億円)を見込んで4兆3000億円という数字が出てきたわけだ。佐藤社長は、これを「意志ある足場固めの時期」と表現していた。

ホンダ 四輪事業の利益率改善が鍵

2024.3月期前期比2025.3月期見通し増減
売上収益20兆4,288億円120.8%20兆3,000億円99.4%
営業利益1兆3,819億円177.0%1兆4.200億円102.8%
営業利益率6.8%+2.2ポイント7.0%+0.2ポイント

ホンダ 販売台数

2024.3月期前期比2025.3月期増減
410.9万台111.4%412.0万台100.3%

ホンダの決算も好調だった。営業利益は1兆3819億円(前期比77.0%増)で過去最高を更新。売上高、当期純利益も過去最高を記録した。営業利益率は、6.8%(前期が4.6%)と2.2ポイント改善している。ホンダの場合は、四輪事業だけでなく二輪・パワープロダクツ事業もある。

営業利益率は
四輪事業:4.1%、二輪事業:17.3%で、四輪事業は売上が約4分の1の二輪事業と営業利益がほぼ同じである。

2024年度の売上収益は20兆3000億円(▲0.6%)、営業利益は1兆4200億円を見込む。研究開発費は、2023年度より2253億円増やした1兆1900億円となっている。

日産 『Nissan NEXT』最後の年、来期は新たな経営計画『The Arc』

日産の決算説明会の様子
2024.3月期前期比2025.3月期見通し増減
売上高12兆6,857億円119.7%13兆6,000億円107.2%
営業利益5,687億円150.8%6,000億円105.5%
営業利益率4.5%+0.9ポイント4.4%▲0.1ポイント

日産 販売台数

2024.3月期前期比2025.3月期増減
344.2万台104.1%370万台107.5%

日産は、2023年度に売上高を前期比+20%、営業利益+51%を達成した(売上高は12兆6857億円、営業利益は5687円)。世界販売は中国以外で好調。国内は+6.5%、北米は+23%、欧州は+CVT17%、その他地域は+14%となった。中国は24%ダウンの79万4000台にとどまった。

2024年度は売上高7.5%アップの13兆6000億円、営業利益は6000億円を見込む。

内田 誠CEOは「当社は『Nissan NEXT』の取り組みを通じて、事業基盤の強化に取り組んできました。2024年度からは新たな経営計画『The Arc』をスタートします。市場環境やお客さまのニーズにあわせ、バランスのとれた商品ポートフォリオを構築し、最適な事業戦略を実行することで、お客さまに高い価値を提供しながら、持続的な利益ある成長を目指します」と述べた。

マツダ

2024.3月期前期比2025.3月期見通し増減
売上高4兆8,277億円126.2%5兆3,500億円110.8%
営業利益2,505億円176.4%2,700億円108.0%
営業利益率5.2%+1.5ポイント5.0%▲0.3ポイント

マツダ 販売台数

2024.3月期前期比2025.3月期増減
124.1万台111.8%140.0万台112.8%

マツダの決算も良い数字が並んだ。

ラージ商品群を投入した北米での販売が好調だったこともあって売上4兆8000円で過去最高を更新した。営業力衛は76.4%プラスの2505億円で、これも過去最高。

2024年度は、新型CX-70、CX-80、CX-50のハイブリッドモデル導入などで成長をはかり、売上10.8%増、営業利益7.8%増を見込む。

スズキ

2024.3月期前期比2025.3月期見通し増減
売上高5兆3,743億円115.8%5兆6,000億円104.2%
営業利益4,656億円132.8%4,700億円101.0%
営業利益率8.7%+1.1ポイント8.4%▲0.3ポイント

スズキ 販売台数

2024.3月期前期比2025.3月期増減
316.8万台105.6%325.4万台102.7%

スズキの決算も過去最高だ。

為替影響や原材料価格の落ち着きに加え、半導体不足影響の解消やコストに見合った適正な価格設定等の取り組みが奏功した格好だ。

2025年3月期は販売台数増加により、売上・利益ともに過去最高を見込む。

SUBARU

2024.3月期前期比2025.3月期見通し増減
売上収益47,029124.6%47,200100.4%
営業利益4,682175.0%4,00085.4%
営業利益率9.6%+2.5ポイント8.5%▲1.1ポイント

SUBARU 販売台数

2024.3月期前期比2025.3月期増減
97.6万台114.6%98.0万台100.4%

スバルの2024年3月期決算も好調だった。売上収益は販売台数増や販売価格改定等による売上構成差等で+6661億円、為替レート差で+2403億円により、大幅増の4兆7029億円となった。営業利益率は9.6%と高水準だった。スバルの利益率は、2016年3月期(17.5%)、2015年3月期(14.7%)と2018年3月期までは非常に高かったが、2022年3月期は3.3%まで下落してしまっていた。

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