MRはソレックス・ツインキャブレターを採用して125psを発揮
快晴に恵まれた11月の休日、芝生の上に車両が展示されたクラシックカーフェスティバルが活況を呈していた。そこで青空と芝生のグリーンに映えるオレンジの車体が目に留まった。それは残存数が少ないものの根強い人気を誇る三菱の名車、ギャランGTOだった。これは話を聞かないわけにはいかない!
三菱ギャランGTOは1969年の東京モーターショーに、ほぼ市販型のまま発表された和製スペシャルティカーの元祖とも呼べる存在。アメリカ風にダックテールを採用した「ダイナウェッジライン」と呼ばれるデザインを取り入れ、4メートルをわずかに超える程の小さなボディながら、迫力あるスタイリングを実現していた。当初はMⅠ、MⅡ、MRの3グレードが用意され、いずれも1.6Lエンジンを搭載していた。
トップグレードのMRには三菱初のDOHCエンジンが採用されたことがエポックだった。1.6リッターの4G32型DOHCエンジンは吸気にソレックス・ツインキャブレターを採用することで125ps/6800rpmのハイパワーを実現していた。ところが1972年いっぱいで排出ガス規制への対応から廃止されてしまい、わずかな数しか生産されなかった。
MRは排出ガス規制に対応できず生産を終了してしまい、73年のマイナーチェンジで新たにGSRがトップグレードに設定された。GSRには2リッターSOHCエンジンが搭載されていたが、新たにオーバーフェンダーを標準装備することで付加価値としていた。
当初、MRにはオーバーフェンダーが標準装備と記述していましたが、実際はGSRに標準装備されたもので、MRにオーバーフェンダーはつきません。お詫びして訂正します。(11月26日)
このギャランGTO MRを所有する稲福一春さんは68歳というから、発売当時は17歳だった。そのころGTOに憧れたことから、後にGTOの軽自動車版とも言える三菱ミニカスキッパーを所有したこともあるそうだ。念願のGTOを手に入れたのは2015年のことで、個人売買で巡り会った。ただ、入手したままで乗ることはなく、以前整備士だった経験があることから自らレストアを開始するのだ。
外観はご覧の通りに新車のような輝きを取り戻している。さらに70年代当時に販売されていたヒーローズレーシング製アルミホイールを入手。これもアルミ部は根気よく磨き、塗装部は剥離したうえで自ら塗装し直している。またエンジンもオーバーホールされているので、DOHCらしい鋭い吹け上がりを楽しめるという。ただ、同調を取るのが難しいツインキャブレターの調整には手を焼いたとか。
一方室内は補修部品が入手難のため、補修程度に止めている。この時代のクルマは部品がほぼないのが泣きどころ。ただ、8トラックのステレオを取り付け当時の雰囲気を再現しつつ、新しいオーディオやドライブレコーダー、ETCなどを装備して実用性を高めている。
これだけ完成度が高いからさぞお気に入りなのだろうと思って聞くと、「実は今、ダルマ・セリカをレストアしているんですよ」と教えてくれた。ダルマと呼ばれるトヨタの初代セリカは発売当時、ギャランGTOのライバル車。その2台を所有して自らレストアしているとは、筋金入りのマニアと言えるだろう。さらに初代サバンナRX-7まで所有されているというから驚きだ。