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■エレガントなクーペながらセリカ譲りの走りができたカレン
1994(平成6)1月27日、トヨタのスペシャリティクーペ「カレン」がデビューした。ベースは、WRCでも活躍した6代目「セリカ」、カレンはその豪快な走りを引き継ぎながらも外観はちょっとお洒落なクーペに仕立てられたセリカの兄弟車である。

カレンのベースとなった6代目セリカの初代はセリカLB

日本初のスペシャリティカーとして「セリカ」がデビューしたのは1970年のこと。セリカのスタイリングは、ロングノーズのピラーレス・ハードトップのクーペスタイル。スポーツカーのようなスタイリングと性能を持ち、快適性も重視した先進のスポーツクーペは、若者を魅了して大ヒットモデルになった。

続いてセリカのデビューから2年半たった1973年、セリカの人気をさらに加速させたセリカLB(リフトバック)がデビュー。最大の特長は、なだらかな傾斜を持つ開口可能なテールゲートをヒップアップさせたリフトバックスタイルだ。
人気の秘密は、デザインだけでなく、優れた走りにもあった。エンジンは、1.6Lに加えて2.0L直4 SOHCを設定、特に2.0L直4 DOHCエンジンを搭載したトップグレード「セリカLB 2000GT」は当時の若者を魅了。「スカイライン2000GT」と真っ向勝負しても負けない圧巻の走りを披露、1970年代を代表するスポーツクーペとして爆発的な人気を獲得した。
今回紹介するカレンのベースとなった6代目セリカは、このセリカLBを初代としている。
カレンのベースとなった6代目セリカ

セリカLBの4代目以降はWRCで大活躍した高出力エンジンを搭載した4WD「2000GT-FOUR」のホモロゲモデルを設定。5代目のGT-FOURは、WRCでドライバーズ&メイクス・チャンピオンの両タイトルを獲得するという偉業を成し遂げた。
1993年に登場した6代目セリカも、剛性の向上と軽量化を図った新設計のプラットフォームによりスポーツ性を一層高めた。全車3ナンバーボディとなり、ハッチバッククーペと翌1994年にはコンバーチブルが用意された。
エンジンは、最高140psを発揮する2.0L直4 DOHC(ハイメカツインカム)と180psの2.0L直4 DOHC(スポーツツインカム)、さらに1ヶ月遅れで登場した2000GT-FOURには250psを発揮する2.0L直4 DOHCインタークーラー付ターボが設定された。
6代目セリカをベースにしてお洒落なクーペの兄弟車カレン

1994年1月のこの日、カレンはデビューした。シャシーやインテリアは6代目セリカと共通とし、全長を55mm長くし、リアをノッチバックのクーペに仕立てた実質的にはセリカの兄弟車となる2ドアクーペである。

ただし、WRCで活躍したセリカのハードでダイナミックなイメージとは大きく異なり、女性でも気軽に乗れるチョッとお洒落な雰囲気に変更。フロントデザインは、4つの独立した異形丸型ヘッドライトを特徴とするセリカに対し、カレンはフロントコンビネーションランプと薄型のフロントグリルによりスポーティかつエレガントなスタイリングに変わった。とはいうものの、骨格やエンジン(140ps&180psの2.0L)はセリカと同じなので力強い走りは健在だった。
トランスミッションは、5速MTおよび4速ATが組み合わされ、駆動方式はFFのみでセリカに設定された4WDは装備されなかった。ただし、ハイグレードには4WS(4輪操舵)が装備された。

車両価格は、171.5万~217.0万円に設定。当時の大卒初任給は19万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約208万~263万円に相当する。
カレンは、デザインもスタイリッシュで、走りも含めて全体の完成度は高かったが、販売は苦戦した。当時、1980年代に一世を風靡したクーペの市場は、すでにRVやステーションワゴンに奪われて存在しなかったのだ。

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カレンは、名車セリカの陰に隠れた少しマイナーなモデルという印象で1999年に1代限りで生産を終えた。クーペ市場が衰退したこともあるが、かつての“デートカー”ほど豪華でなく、女性をターゲットにした“セクレタリーカー”のように小振りでもなく、コンセプトが中途半端であったことも否めない。
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