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ジムニーへの期待を超えるためハードウェアにも手が入る

パワートレインやシャシーなど基本的なメカニズムはジムニーシエラとジムニーノマドで共通と考えていいだろう。つまり、エンジンは1.5L 4気筒の縦置きであり、トランスミッションは5速MTと4速ATを設定。四輪駆動方式はパートタイム式で副変速機によるハイ/ローの切り替え機能を持っているものとなる。

ホイールベースが伸びているということは、ジムニーの悪路走破性を支えるラダーフレームも延長されている。単純にフレームを伸ばしただけでは剛性が落ちるのは自明であり、ジムニーノマドのラダーフレームにはセンターにクロスメンバーが追加されている。同様に後輪へ駆動力を伝えるプロペラシャフトも伸ばしているが、こちらもただ長くするだけでなく直径を拡大することで剛性アップを果たしているというから抜かりない。

シャシーセッティングでは、フロントのコイル/ショックアブソーバー/スタビライザーをいずれもジムニーノマド用に最適化。フロントで注目なのはブレーキで、ベンチレーテッドディスクにするなど重量増に合わせたパフォーマンスアップを図っている。
参考までに、ジムニーノマドのタイヤ空気圧の指定値は前後とも180kPaと、いまどきのクルマとしては驚くほど低い。もっとも、これはジムニーシエラと同じ値であり、オフロードを含めたジムニーらしい走行性能を考慮した結果といえそうだ。




圧倒的な利便性を手に入れた。AT車にはACCを装備

ジムニーノマドのハードウェアを、ホイールベースを伸ばしたジムニーシエラと捉えてしまうのは大きくいえば正解だが、ディテールに注目すると異なる部分もある。
なんとジムニーノマドのAT車にはACC(追従クルーズコントロール)が備わるという。残念ながら、低速ではキャンセルされてしまうタイプだが、ジムニーシエラでは設定速度を維持するだけのクルーズコントロールであることを考えると、ジムニーノマドの上級・上質を実感できる機能といえるだろう。ただし、ジムニーノマドであっても5速MT車は追従機能を持たないクルーズコントロールの装備なるということだ。
積載能力においてもジムニーノマドは拡大している。
全長のストレッチ分がホイールベースだけであり、テールゲートのデザインを含めてオーバーハングに変化がないとなれば荷室スペースは3ドアと5ドアで共通なのでは? と思うかもしれないが、さにあらず。
3ドアのボディは16インチタイヤを履く軽自動車のジムニーに合わせて、大きなホイールハウスとなっているのに対して、ジムニーノマドではホイールハウスの出っ張りが抑えられているため、ラゲッジルームが広がっているのだという。


ただし、後述するようにリヤシートが居住性重視のタイプになっているためフルフラットにするには、純正アクセサリーを使ってラゲッジを底上げする必要がある。それでも4名乗車時の積載性能についてアドバンテージを感じるのは事実。これまでのジムニー・シリーズにはない、ファミリーユースに対応できるという点においてジムニーノマドは新しいユーザー層を開拓しそうだ。


欲張らず4人乗りにしたことで最適パッケージを実現

端的にいえば、「子どもが生まれたからジムニー(3ドア)を降りる」ことになった元ジムニー・オーナー、「ジムニーの世界観には憧れているけれどファミリーカーとして使えなさそうだから」という理由で踏み切れなかったジムニーの潜在的なファンといったクラスタにとって、ジムニーノマドは、まさに福音となるはずだ。
そこで、最後にジムニーノマドのストロングポイントとなる後席居住性についてお伝えしよう。
リヤシートは一段階のリクライニングしかなく、基本的にはアップライトな姿勢で座ることになる。そのためヘッドクリアランスについてはけっして有利なパッケージングではない。写真でもわかるように身長165cmの筆者であれば狭さは感じないが、175cmを超えてくると頭上の狭さが気になるかもしれない。




一方、ひざ周りの余裕につながるタンデムディスタンスは全長3.9m足らずとは思えないほど十分に確保されている。このあたり、ホイールベースの延長が明確に効いているといえそうだ。新設されたクォーターウインドウ内側など後席周辺もしっかり樹脂パーツでトリムされているのは、ジムニーノマドの特徴。


乗降性についても好印象、フロントはドアが短くなったことで3ドア比で狭い場所での乗りやすさが増したと感じるし、最低地上高210mmの本格クロカン4WD車として見るとリヤも乗り降りが想像以上にしやすい。
こうした乗降性には、後席の両端を大きくカットした形状も効いているのだろう。5ドアの小型乗用車で4名乗車というのは物足りなさを感じるかもしれないが、後席を2名掛け仕様と割り切ったからこそ実現したジムニーノマドのパッケージングはむしろ評価すべきといえるのではないだろうか。