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モデルチェンジを行わず 40年にわたる支持を得る

ランドクルーザーには3種類が用意されるが、最も個性的なタイプが70だ。1984年の発売以来、40年間にわたり一度もフルモデルチェンジをしていない。この異例なクルマづくりの背景にあるのは、万一、立ち往生すると生命に危険がおよぶ過酷な使われ方だ。ランドクルーザー70は、日本の道路環境とはまったく異なる地域に向けて開発されている。
エクステリア




例えば生活圏内に10ヵ所の難所があったとする。フルモデルチェンジを行なって乗り心地や使い勝手が大幅に向上しても、10ヵ所の難所の内、1ヵ所でも立ち往生すれば生還できなくなる。そこでユーザーは「ランドクルーザー70を変化させずにつくり続けて欲しい」と願う。その結果、40年間にわたりフルモデルチェンジしていない。言い換えれば、84年の登場時点で生還できるクルマとして卓越した性能を備えていた。その一方で悪路走破力を下げずに進化も図っている。フロントサスペンションは車軸式コイルスプリング。リヤサスペンションは初代からのリーフスプリングによる車軸式を踏襲する。エンジンは直列4気筒2.8ℓクリーンディーゼルターボで、6速ATを組み合わせる。
乗降性


試乗してみると、まさに新旧の機能が混在していた。2.8ℓクリーンディーゼルターボは運転感覚が新しい。実用回転域の駆動力が高く、発進直後の1300rpm前後から過給効果を感じる。3000rpm付近では、アクセルペダルを踏み増すと駆動力が即座に盛り上がり、ディーゼルの力強さを実感できる。1980年代のランドクルーザー70が搭載したターボを装着しない3.4ℓディーゼルは、回転感覚が粗野で、最高出力は98PS、最大トルクも23㎏mだった。乏しい動力性能を5速MTを駆使してフルに引き出す楽しさもあったが、今のディーゼルは、動力性能が2倍以上でATも6速だ。クリーン性能も格段に向上している。
インストルメントパネル

一方、ステアリングの操作感覚には40年前の面影を見い出せる。悪路での使い勝手と耐久性を考えて、操舵感は今でも鈍い。峠道のカーブや高速道路での車線変更では、操舵してから少しタイミングが遅れて進行方向が変わり、ボディの重さを意識させながら外側へ大きめに傾く。乗り心地もホイールとタイヤの重さを意識させて少し粗い。40年前に比べて洗練されてはいるが、悪路を優先させた設計を感じる。
居住性


居住性にも古さが生じた。身長170㎝の大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシひとつ分弱に留まる。後席に座る乗員の足が前席の下に収まり、4名乗車は可能だが、昔のSUVの広さだ。その代わり荷室には余裕があり、リヤゲートはスペアタイヤを装着するために観音開きだから、狭い場所でも荷物を出し入れできる。不整地を走る作業車のクルマづくりだ。
うれしい装備





大幅改良発表 23年11月29日
月間販売台数 356台(24年6月~11月平均)
WLTCモード燃費 10.1km/ℓ

ラゲッジルーム


個人的な感慨で恐縮だが、ランドクルーザー70の試乗中、出版社に入社した80年代中盤の記憶が次々と蘇った。取材のために3.4ℓディーゼルを搭載するショートボディのランドクルーザー70で林道を走ると、冒険に出掛けた気分を味わえた。あの頃に運転したクルマが今でも現役で生き続けているのはうれしい。気持ちだけでも昔に戻れるからだ。

