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スバルが導入した世界初の「歩行者保護エアバッグ」
新型スバル・フォレスターには世界初と考えられる技術が適用されている。サイクリスト対応歩行者保護エアバッグだ。スバルは2016年に発売したインプレッサ(先代)から、歩行者保護エアバッグを標準装備した。現在ではクロストレック、レヴォーグ、レヴォーグ・レイバック、フォレスター、WRX、レガシィ・アウトバックにも展開が広がっている。

スバルはスバル車乗車中の死亡事故およびスバル車との衝突による歩行者・サイクリストなどの死亡事故ゼロを目指して開発に取り組んでいる。歩行者保護に関しては、衝突した際に死亡に至る重大な傷害を負わせないような技術の開発を行なっている。歩行者がクルマと衝突すると、脚から腰〜胸〜頭部の順にバンパーからボンネットフードに沿ってぶつかっていく。

ボンネットフードはできるだけ硬い部分を作らないような構造にし、変形しやすい構造にして衝突のエネルギーを吸収し、衝撃を緩和する空間をエンジンルーム側に設けている。しかし、フロンドガラスの下端やAピラーと呼ばれるルーフに向かって立ち上がる柱状の部位は車体骨格を形成する都合から衝撃吸収構造にはできない。
日本の事故実態のデータから歩行者の頭部傷害がクルマのどの部位で発生しているか調べてみると、ピラー周辺、カウル周辺、フロントガラスが多いことがわかる。そこで、歩行者保護エアバッグの出番というわけだ。

フロントバンパーの内側に配された圧力チューブに一定の圧力が加わると、エアバッグECUが歩行者と衝突したと判断し、歩行者保護エアバッグを展開。フロントガラス下端からAピラーにかけてのエリアをU字型にカバーし、歩行者の頭部に与える衝撃を緩和する。


歩行者だけでなく自転車に乗った人にも対応
一方で、事故データはサイクリストの事故割合が多いことも示している。状態別死者数の推移を見ると、歩行者が36.2%、自転車が12.3%で1割以上いることがわかる。直近5年間でスバル車が関わった事故死亡者割合を見ると、歩行者が55%に対してサイクリストは14%だ。事故の実態調査は、歩行者が受傷する部位では頭部が最も多く、前述したようにフロントガラスやピラー周辺に頭部が衝突するケースが多いことを示している。
スバルが行なったシミュレーションは、歩行者がクルマに衝突すると、腰を起点にボンネットフードに倒れこみ、その弾みで頭部がフロントガラス下端付近に衝突する様子を示している。サイクリストの場合は自転車に乗っているため腰の位置が高く、衝突するとボンネットフードの上に腰が乗り上げる格好になる。そのため、頭部がAピラーの上方にまで達してしまう。

そこで、サイクリスト対応歩行者保護エアバッグは、歩行者保護エアバッグでAピラーの中ほどまでだった展開範囲をAピラーの上方まで広げた。広げればそれでオーケーというわけにはいかない。開発にあたっては苦労もあった。

ガスをスムーズに流して展開させ、狙いの位置に留まらせることが苦労のひとつ。バッグに縫い目と壁を設けて内部構造を工夫し、ガスの流れを調整した。また、フロントガラスの付け根部分にエアバッグの展開スペースを確保するとともに、展開した際にバッグを支持する強度・剛性を確保した。

小動物が衝突した際に歩行者やサイクリストだと誤検知して展開しては困る。歩行者やサイクリストが衝突した際にのみ確実に展開するようセンシングを担保するのも、開発の際に苦労した点だという。これに関しては実車試験を繰り返して精度を高めた。安全性能への気配りはスバル車の持ち味。新型フォレスターはこの領域でも一歩前進している。
動画で見る「サイクリスト対応歩行者保護エアバッグ」が作動する瞬間
スバルは報道陣に向けてこの「サイクリスト対応歩行者保護エアバッグ」が作動する瞬間を公開。ここではスバルが撮影した動画で、作動シーンを見ていただこう。その展張速度が如何に速いかがよくわかる。また、スロー再生でどのように展張していくかも確認できる。
(動画:SUBARU)