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日本のドラレコ市場は飽和状態?成長市場?
事故や煽り運転、交通トラブルなどの際の証拠として、ドラレコーの映像が重要な役割を果たすようになった。今や装着が常識かと思いきや、装着率は約64%という調査がある(パイオニア調べ・2024年11月)。

日本におけるドラレコ販売(装着)台数は個人・法人合わせて約268万台と言われ、その多くが個人ユーザーだ。また、シェアとしてはコムテックが大きなシェア(約52%)を占めており、ユピテル(14%)、JVCケンウッド(13%)と続く。(※)
※2024年データ(Mio調べ)

また、現状でのドラレコのタイプとしては前後が記録できる2カメラタイプが主流となっているほか、昨今ではデジタルルームミラーと一体化したタイプが伸長しているという調査結果もある。

国内市場においては、ドラレコのメーカー別シェアはやや固定化している傾向があるものの、タイプ別ではデジタルミラー一体型(電子ミラータイプ)には伸び代が残されているようだ。この流れは、新規導入よりも買い替え時に需要が見込めそうだ。
「Mio」って知ってる?
Mioは台湾に本拠を構えるカーエレクトロニクス系のグローバル企業「MiTAC」グループが展開するドラレコを中心としたブランド。Mioブランドのドラレコは、台湾では圧倒的シェアを誇り、アメリカやアジアを中心に売上を伸ばしている。日本でも2024年秋から販売を開始。1カメラ、2カメラ、デジタルミラー一体型の3タイプ5アイテムを展開している。

今回の新製品発表会ではさらに3カメラ型とデジタルミラー一体型の最上位モデル、さらにデジタルミラー一体型のエントリーモデルがお披露目された
注目の新製品は3カメラのデジタルミラー一体型「MiVue ER58」
今回の新製品発表会でお披露目された中で一番の注目アイテムがデジタルミラー一体型のトップモデルになる「ER58」だ。
これまでのデジタルミラー一体型モデル(ER40、ER50)は前後の2カメラだったが、ER58はリヤカメラに外向きだけでなく車内向きも追加。車内側カメラにより前後カメラではカバーしきれない左右の映像を録画できるようになっているのが特徴だ。

録画範囲の広さとしては360°カメラタイプが挙げられるが、このタイプのカメラを一般的にドラレコを設置するルームミラー付近のフロントウインドウに設置すると、車内の様子はもとより乗員の顔まで映ってしまう点が忌避されるという。また、カメラの性質上、画質的にも証拠能力が弱くなってしまう点もデメリットになるようだ。
ER58の3カメラタイプは、左右の映像はリヤ側のインナーカメラで録画するため、乗員の顔は映らないで済むというわけだ。

カメラは高画質の従来モデル同様に前後カメラとも2Kとなっている。また、ソニー製の「STARVIS2」超高感度CMOSセンサーを採用しており、夜間でも明るくクッキリとした映像を記録でき、万が一の証拠能力はさらに高まっていると言えるだろう。
従来のトップモデルだったER50が実勢価格4万1580円(Amazon・Mioストア)となっており、3カメラとなったER58は5万円前後という価格が予想される。
※「ニト」とは?
画面の輝度=明るさの単位で「nit」または「nt」と表記され、「ニト」や「ニット」と呼ばれる。カンデラ毎平方メートル(cd/m2)とも。

なお、ER50とER58に採用される1500ニトというスペックは、現状では業界唯一の高性能。昼間に反射光がデジタルミラーに映り込んでしまうことがある状況でも、映り込みを抑えて明瞭な映像を映すことができるのだ。
デジタルミラー一体型にエントリーモデル「MiVue ER20」を追加
Mioブランドが日本のドラレコ市場で展開するにあたり、成長市場と見込んだデジタルミラー一体型。従来モデルとしてもER40、ER50の2モデルをラインナップしているもののそれぞれ3万7423円、4万1580円と高い。もちろん、価格に見合った高性能ではあるものの、市場にはより安価な製品も多数あり、新規参入ブランドの製品としてこの価格はユーザー的には敷居が高い。

そこで、エントリーモデルとなる「ER20」をラインナップに追加することになった。
ER20は画質こそ4Kには及ばないものの、前後カメラはフルHDとなる1080Pの性能を確保しつつ、上位モデル同様に「STARVIS2」を採用。もちろんデジタルミラーはタッチパネルとなっている。

ER40の3万7423円に対し、エントリーモデルとして安価な価格設定が期待される。この性能で2万円台の実勢価格が実現されれば、先行する同クラスのコムテックやケンウッドの製品との比較対象にもなってくるだろう。
デジタルミラー一体型以外にも3カメラモデル「DR50」を設定
Mioが現在ラインナップしているデジタルミラー一体型以外の製品は1カメラ型1モデル(DR30)、2カメラ型2モデル(DR35、DR40)となっている。いずれもフルHD以上のカメラに「STARVIS」CMOSセンサーを採用。GPSはもちろん、2カメラモデルはWi-Fiも備えた高性能モデルとなっている。

さらに今回発表されたのが、フロントカメラが4K+リヤカメラ2Kの高画質に加え、車内とクルマの左右を後方から録画する2Kのリヤインナーカメラも追加した3カメラモデル「DR50」だ。DRシリーズ最高画質となる4Kカメラに加え、CMOSセンサーは「STARVIS2」にグレードアップ。単純なカメラ性能ではデジタルミラー一体型のER58をも上回ることになる。

3カメラやSTAVIS2のメリットについてはER58でも紹介済み。ドラレコの性能としてはクラストップレベルと言えるだろう。この高性能は、今もドラレコ市場で主流となっているデジタルミラー一体型ではない2カメラタイプのシェアに食い込むことができるだろうか?
従来モデルのDR40が実勢価格2万1800円(Amazon・Mioストア)。より高画質なフロントカメラとインナーカメラを追加したリヤカメラ、STARVIS2の採用でより高価格になるのは確実だが、3万円台前半が想定されているというが、これはかなり戦略的な価格となるだろう。
日本市場進出への意気込み
いずれの新製品も発売を急いでいるという話だが、実際に販売開始となるのはモデルによって5月から夏前くらいになるそうだ。
新製品発表会では、ブランドアンバサダーとして、元SKE48のアイドルであり、ライダーやラリーのコドライバーとして活躍する梅本まどかさんが司会を務め、MiTACデジタルテクノロジーズのスティーブ・チャン代表取締役社長とトニー・リン商品開発部上席部長も来日し、市場概況や日本での展開、製品の紹介などが行われた。

導入される新製品はもちろん、3年保証に加えユーザーサポートなども完全に日本対応体制を整えているとのことで、この発表会でMioブランドの日本市場展開への強い意気込みを感じさせた。
国産メーカーが圧倒的に強く、やや飽和気味の感があるドラレコの日本市場において、高性能なデジタルミラー一体型モデルの投入はドラレコ業界の”黒船”になるのか?大いに気になるところである。