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■8代目サニーの派生車として登場したサニー・ルキノ
1994(平成6)年5月24日、日産自動車の8代目サニーをベースにしたスペシャルクーペ「サニー・ルキノ」がデビューした。8代目サニーのコンポーネントをベースにした3ボックスの2ドアクーペだが、やや大人し目のスタイリングのためか、市場でインパクトを残せなかった。

サニークーペの歴史

始めてサニーにクーペ「サニークーペ」が設定されたのは、1966年に誕生した初代サニー「ダットサン・サニー」の2年後の1968年3月のこと。サニークーペは、ルーフからリアエンドまでシャープな直線で形成されたファストバックスタイルを採用し、パワートレインは最高出力60psの1.0L直4 OHVツインキャブ仕様エンジンと4速MTおよび3速ATの組み合わせ。675kgという軽量ボディのおかげでクーペに相応しい軽快な走りができた。その後の歩みは以下の通り。
・2代目(1970年~):ボディは大型化したが、スタイリッシュなデザインとなり、1.2L直4 OHVを搭載。1971年には、サニー初の1.4L直4 SOHCエンジンを追加。

・3代目(1973年~):直線基調のノッチバックから、曲面を多用したグラマラスなハッチバックスタイルに変更。エンジンは、2代目を踏襲したが、SUツインキャブを搭載したエクセレントクーペも登場。

・4代目(1977年~):FR最後のサニーとなり、直線基調のシャープなデザインに戻った。1980年に排気量1.5Lに拡大したエンジンとEGI(燃料噴射)仕様が追加。

・5代目(1981年~):FFとなって先代同様、直線基調のシャープなスタイリングを採用。エンジンは、OHVから1.5L直4 SOHCに換装されて最高出力95psだったが、1982年に115psのターボエンジンを搭載した「ターボルプリ」を追加。
これをもって、サニーにラインナップされたクーペは終了したが、その後サニーから独立した派生車として、「サニーRZ-1(1986年~)」、「NXクーペ(1990年から)」、今回の「サニー・ルキノ」が登場した。
ルキノの実質的な先代にあたるサニーRZ-1とNXクーペ
「サニーRZ-1」は、1985年にデビューした6代目サニーの翌1986年に追加された。シャープなウエッジのスタイリングが印象的だが、スポーティというよりはパーソナルクーペといった雰囲気だった。

エンジンは、1.5L直4 SOHCと最高出力100psを発揮するターボ仕様が設定された。4ヶ月後には、最高出力120psの日産初の1.6L直4 DOHCエンジンを搭載したハイスペックモデルが登場したが、それでもトヨタとホンダの1.6L直4 DOHCエンジンには敵わず、苦しい販売を強いられた。

「NXクーペ」は、1990年にデビューした。デザインは、NDI(米国デザイン・インターナショナル)が担当し、当時米国で流行っていたオフィスで働く女性が通勤などで使う「セクレタリー(秘書)カー」を意識して仕立てられた。
緩やかな丸みを基調としたオーバルシェイプのフォルムと窪んだ丸目のヘッドランプがソフトな雰囲気を印象付けた。パワートレインは、1.5L/1.6L/1.8L直4 DOHCエンジンと、5速MTおよび4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFのみ。バブル期のイケイケの日本市場では、ややソフトなイメージのセクレタリーカーの需要はなく、やはり販売は苦戦した。
サニーシリーズ最後のクーペとなったサニー・ルキノ
1993年5月のこの日、「サニー・ルキノ」がデビューした。基本的なコンポーネントを8代目サニーと兄弟車「パルサー」から流用した、オーソドックスな3ボックスの2ドアクーペである。


FFレイアウトと長いホイールベースによって、クーペにしては広い室内空間が確保され、5名乗車が可能。パワートレインは、最高出力105psを発揮する1.5L直4 DOHCと140psの1.8L直4 DOHCの2種エンジンと、5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFだった。

車両価格は、1.5Lの標準グレードが129.8万円、1.8Lのトップグレードが174.8万円に設定された。当時の大卒初任給は19万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約157万円と212万円に相当する。


ルキノは、商品力強化のために1995年に3ドアハッチバック、1996年RVブームに対応してRV風に仕立てた「ルキノS-RV」を追加したが、日本での販売は苦戦を強いられた。一方、排気量を2.0Lに拡大した「200SX」の車名で販売した米国では、主に独身女性から人気を獲得した。

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クーペは、セダンをベースにして若者向けに派生したクルマである。したがって、カッコよくて運転が楽しいというクルマ本来の2つの魅力を持ち合わせなくてはいけない。そういったことから考えて、RZ-1、NXクーペ、ルキノなどは、とりあえずちょうどいい感じのクーペには違いないが、クーペ本来のインパクトに欠けていたように思う。
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