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「どこへでも行けそう」という価値を進化させたデザインで表現する
6代目となる新型RAV4は、現行モデル(5代目)からボディサイズがほとんど変わっていない。新型の全長4600mm×全幅1855mm×全高1680mm、ホイールベース2690mmという諸元は、現行モデルに対して全高が5mm低いだけ。これは現行モデルが好評なセールスを博し、世界中のユーザーから「今のサイズを変えないでほしい」という声が届いていたからだという。
そこで新型は現行とほぼ同一のパッケージを踏襲しつつ、「さらに大胆で力強く、かつ、ワクワクしちゃう楽しさを表現した」と、トヨタのデザインを統括するサイモン・ハンフリーズさん(取締役・執行役員 デザイン領域統括部長)は語る。


エクステリア:RAV4らしさを継承した正常進化だが、クオリティは向上している
新型RAV4のエクステリアデザインの狙いは「多様な価値観を持つお客様へ、新しいAdventureを提供」すること。「どこへでも行けそう」なデザインを表現するため、「ビッグフット」「リフトアップ」「ユーティリティ」という3つのポイントを重視した。大径タイヤによりSUVらしい踏ん張りの効いたスタンスを実現し、余裕のある最低地上高により高い走破性を想起させ、さらにリヤゲートの角度を立てることで使いやすいキャビン&ラゲッジ空間を表現している。
フロントフェイスは、シュモクザメの頭の形から着想を得たハンマーヘッドデザイン。最近のトヨタ車ではお馴染みの顔つきだが、新型RAV4ではボディ全体の塊で構成された「SUVハンマーヘッド」でタフさを演出している。
ボディ色では「アーバンロック」を新開発。ソリッドな印象ながらメタリックの陰影感も感じさせる絶妙な塩梅のグレーで、先進性とタフさを併せ持つ新型RAV4のエクステリアにマッチしていた。




では、新型RAV4のエクステリアを見て、デザイン専門誌『カースタイリング』の難波 治編集長はどのような印象を抱いたのだろうか。発表会場で実車を観察してのファーストインプレッションを聞いてみた。
「今回の新型RAV4は、現行モデルからの正常進化と言えるでしょう。現行モデルに足りなかった質感を与え、全体のクオリティを上げたデザインです。
ひと目見た瞬間にRAV4だとわかるデザインのキーは新型でも踏襲しています。例えば、ルーフの後端末のカクッとした折れとか、リヤフェンダー周りの構成とか、ホイールアーチの切り取り形状とか、ルーフとCピラーの関係性とか。ただ現行モデルは線が目立って面質が伴っていなかったのですが、新型RAV4では構成する面などの質感をゆったりとさせて、全体をしっかりとさせています」

「そして、ベルトラインのウェッジ感は、水平方向に抑え、スピード感よりもSUVとしてのしっかり感を向上。また、タイヤを大径化させて佇まいを改善、向上させています」

「フロントはハンマーヘッドを与えつつ、RAV4らしい台形感を醸し出しています。一方、リヤは今回のチェンジで一番変化したところで、厚みがあり、しっかりとしたスクエアな印象を与えています。とはいえ、リヤもコーナー部分の立体構成は現行モデルと同様、リヤフェンダーの膨らみを上手く活用し、コーナー台形を見せるようにして、背面視でのボディの座りを良く見せています」

インテリア:ランドクルーザーにも通じる、頼り甲斐のある四駆らしさを表現
続いて、インテリアを見てみよう。こちらの狙いは「知能化」と「多様化」を人を中心としたデザインで表現すること。インパネは低重心化、つまり40mmほど上面を低くするとともに表示や操作系の機器を集約して配置することで見晴らしの良い視界と運転中の視線移動の最小化を実現している。
また、スマートフォンのワイヤレス充電のスペースをエアコンのセンターアウトレットのすぐ下に配置するなど、利便性向上を狙ったレイアウトの変更を実施。さらに一部グレードではシフトレバーを新開発のバイワイヤータイプ(スイッチ式)に変更したのも新型RAV4の特徴だ。
難波編集長は、新型RAV4のインテリアを「全体の造形は水平基調で、緩やかなカーブなどを用いない“仕事用の室内”的なデザインです。外観と同様、しっかりとしたSUV感を演出し、頼り甲斐のある四駆車らしい室内にしています。これはランドクルーザーなどと通じる考え方です」と評している。


「GR SPORT」を新設定。3つのスタイルで多様なユーザーの好みに応える
さて、新型RAV4では3つのスタイルを用意したのもトピックだ。現行モデルでも「ADVENTURE」グレードと標準車でデザインの差別化が行われていたが、新型RAV4はさらにそれを推し進め、より個性を明確化した。まず、「CORE」は洗練さを感じさせる佇まいで、街中でも似合いそうな雰囲気。バンパーとの一体感を強めたグリルが目を惹く。

「ADVENTURE」はラギッド感(無骨さ)がひと際強調されている。フェンダーにはモールを追加するとともにワイドトレッド化を実施したほか、フロントノーズのピーク位置(グリル上端部分)の位置を上げることでオフロード感の強いプロポーションを実現。バンパーも縦に大きい開口部が設けられるなど、迫力満点のフロントフェイスをつくり出している。

そして、RAV4では初の設定となる「GR SPORT」にも注目したい。走りのチューニングはもちろんだが、エクステリアにも専用アイテムを多数投入。「GR SPORT」のモデルで共通のファンクショナルマトリックスグリル(「G」をモチーフにした六角形のメッシュ形状)、低中速域でもダウンフォースを発生して操縦安定性を向上させる前後スポイラー、そして専用軽量アルミホイールなどでスポーティさを存分にアピールする。

最後に、難波編集長に三度ご登場いただき、新型RAV4のデザインを総括していただこう。
「RAV4は北米マーケットでも売れている人気車種で、トヨタにとって大切な商品です。現行モデルでラギッド方向にガラリと趣を変えて大成功した商品性はそのまま、新型へ引き継ぐ戦略を採っています。そして新型ではより質感を上げることで、おそらく価格も高くなることを含んで、お客様満足度を上げる手法を採ったものと推察できます。
今回はRAV4としての立ち位置を改革する必要はなく、育てて、RAV4ファンを増やすこと。そして現行モデルを所有するユーザーも買い換えたいな、と思わせる戦法を選択したものと思います」