トヨタ新型RAV4のデザインを分析。ボディサイズはほぼ同一、その上で新しさを感じさせるポイントとは?

5月21日、待望のワールドプレミアを果たしたトヨタ新型RAV4。世界中で好調なセールスを遂げ、スマッシュヒットとなった現行モデルと見比べると、そのデザインは正常進化と言えるもの。では、新型RAV4らしさはどこに表現されているのだろうか。

「どこへでも行けそう」という価値を進化させたデザインで表現する

6代目となる新型RAV4は、現行モデル(5代目)からボディサイズがほとんど変わっていない。新型の全長4600mm×全幅1855mm×全高1680mm、ホイールベース2690mmという諸元は、現行モデルに対して全高が5mm低いだけ。これは現行モデルが好評なセールスを博し、世界中のユーザーから「今のサイズを変えないでほしい」という声が届いていたからだという。

そこで新型は現行とほぼ同一のパッケージを踏襲しつつ、「さらに大胆で力強く、かつ、ワクワクしちゃう楽しさを表現した」と、トヨタのデザインを統括するサイモン・ハンフリーズさん(取締役・執行役員 デザイン領域統括部長)は語る。

5月20日(水)午前10時にワールドプレミアされた新型RAV4。
ワールドプレミアの場でプレゼンテーションを行ったサイモン・ハンフリーズ氏。取締役・執行役員であるとともに、デザイン領域統括部長を務める。

エクステリア:RAV4らしさを継承した正常進化だが、クオリティは向上している

新型RAV4のエクステリアデザインの狙いは「多様な価値観を持つお客様へ、新しいAdventureを提供」すること。「どこへでも行けそう」なデザインを表現するため、「ビッグフット」「リフトアップ」「ユーティリティ」という3つのポイントを重視した。大径タイヤによりSUVらしい踏ん張りの効いたスタンスを実現し、余裕のある最低地上高により高い走破性を想起させ、さらにリヤゲートの角度を立てることで使いやすいキャビン&ラゲッジ空間を表現している。

フロントフェイスは、シュモクザメの頭の形から着想を得たハンマーヘッドデザイン。最近のトヨタ車ではお馴染みの顔つきだが、新型RAV4ではボディ全体の塊で構成された「SUVハンマーヘッド」でタフさを演出している。

ボディ色では「アーバンロック」を新開発。ソリッドな印象ながらメタリックの陰影感も感じさせる絶妙な塩梅のグレーで、先進性とタフさを併せ持つ新型RAV4のエクステリアにマッチしていた。

新型RAV4のデザインは、先代モデルとほぼ同じデザインチームによるものだという。新型は、「RAV4」らしさを知り尽くしているデザイナーたちが手掛けたからこその進化と言えるだろう。
ボディ全体の塊で構成された「SUVハンマーヘッド」の採用によりタフさを表現する。
2018年から米国で販売が始まり、2019年に日本デビューを果たした先代モデル。標準車と「ADVENTURE」の2スタイルがあり、写真のモデルはオフロードイメージを強めた後者の方。
新色「アーバンロック」の開発中の様子。

では、新型RAV4のエクステリアを見て、デザイン専門誌『カースタイリング』の難波 治編集長はどのような印象を抱いたのだろうか。発表会場で実車を観察してのファーストインプレッションを聞いてみた。

「今回の新型RAV4は、現行モデルからの正常進化と言えるでしょう。現行モデルに足りなかった質感を与え、全体のクオリティを上げたデザインです。

ひと目見た瞬間にRAV4だとわかるデザインのキーは新型でも踏襲しています。例えば、ルーフの後端末のカクッとした折れとか、リヤフェンダー周りの構成とか、ホイールアーチの切り取り形状とか、ルーフとCピラーの関係性とか。ただ現行モデルは線が目立って面質が伴っていなかったのですが、新型RAV4では構成する面などの質感をゆったりとさせて、全体をしっかりとさせています」

上が現行モデル、下が新型RAV4。

「そして、ベルトラインのウェッジ感は、水平方向に抑え、スピード感よりもSUVとしてのしっかり感を向上。また、タイヤを大径化させて佇まいを改善、向上させています」

リヤウインドウの角度を立てつつ、リヤフェンダーを張り出させることでユーティリティの向上とダイナミックさの演出を両立している。

「フロントはハンマーヘッドを与えつつ、RAV4らしい台形感を醸し出しています。一方、リヤは今回のチェンジで一番変化したところで、厚みがあり、しっかりとしたスクエアな印象を与えています。とはいえ、リヤもコーナー部分の立体構成は現行モデルと同様、リヤフェンダーの膨らみを上手く活用し、コーナー台形を見せるようにして、背面視でのボディの座りを良く見せています」

50年前(1972年)に創刊されたカーデザイン専門誌「カースタイリング」。しばらく休刊していたが、2024年からウェブサイトで復活し、2025年3月には紙媒体として『カースタイリング 2025 Vol.1』を発行した。カーデザインに興味がある方は、ぜひ手に取ってみていただきたい。 難波 治編集長はスズキでカーデザイナーのキャリアをスタート。その後独立し、デザインコンサルタントとして多数の自動車メーカーのデザイン開発に携わる。2008年からスバルのデザイン部長として辣腕を振るった後、東京都立大学教授を経て、2024年にカースタイリング編集長に就任。

インテリア:ランドクルーザーにも通じる、頼り甲斐のある四駆らしさを表現

続いて、インテリアを見てみよう。こちらの狙いは「知能化」と「多様化」を人を中心としたデザインで表現すること。インパネは低重心化、つまり40mmほど上面を低くするとともに表示や操作系の機器を集約して配置することで見晴らしの良い視界と運転中の視線移動の最小化を実現している。

また、スマートフォンのワイヤレス充電のスペースをエアコンのセンターアウトレットのすぐ下に配置するなど、利便性向上を狙ったレイアウトの変更を実施。さらに一部グレードではシフトレバーを新開発のバイワイヤータイプ(スイッチ式)に変更したのも新型RAV4の特徴だ。

難波編集長は、新型RAV4のインテリアを「全体の造形は水平基調で、緩やかなカーブなどを用いない“仕事用の室内”的なデザインです。外観と同様、しっかりとしたSUV感を演出し、頼り甲斐のある四駆車らしい室内にしています。これはランドクルーザーなどと通じる考え方です」と評している。

インパネ上面を40mm低くするとともに、水平基調をさらに推し進めたインパネ。センターモニターやシフトなどを島のように一体的に配置することで、使いやすく、かつモダンな印象に仕上げた。
センターコンソールはスマートフォンのワイヤレス充電器付きポケットを中央部に配置。シフトスイッチの採用も目新しい。

「GR SPORT」を新設定。3つのスタイルで多様なユーザーの好みに応える

さて、新型RAV4では3つのスタイルを用意したのもトピックだ。現行モデルでも「ADVENTURE」グレードと標準車でデザインの差別化が行われていたが、新型RAV4はさらにそれを推し進め、より個性を明確化した。まず、「CORE」は洗練さを感じさせる佇まいで、街中でも似合いそうな雰囲気。バンパーとの一体感を強めたグリルが目を惹く。

新型RAV4「CORE」

「ADVENTURE」はラギッド感(無骨さ)がひと際強調されている。フェンダーにはモールを追加するとともにワイドトレッド化を実施したほか、フロントノーズのピーク位置(グリル上端部分)の位置を上げることでオフロード感の強いプロポーションを実現。バンパーも縦に大きい開口部が設けられるなど、迫力満点のフロントフェイスをつくり出している。

新型RAV4「ADVENTURE」

そして、RAV4では初の設定となる「GR SPORT」にも注目したい。走りのチューニングはもちろんだが、エクステリアにも専用アイテムを多数投入。「GR SPORT」のモデルで共通のファンクショナルマトリックスグリル(「G」をモチーフにした六角形のメッシュ形状)、低中速域でもダウンフォースを発生して操縦安定性を向上させる前後スポイラー、そして専用軽量アルミホイールなどでスポーティさを存分にアピールする。

新型RAV4「GR SPORT」

最後に、難波編集長に三度ご登場いただき、新型RAV4のデザインを総括していただこう。

「RAV4は北米マーケットでも売れている人気車種で、トヨタにとって大切な商品です。現行モデルでラギッド方向にガラリと趣を変えて大成功した商品性はそのまま、新型へ引き継ぐ戦略を採っています。そして新型ではより質感を上げることで、おそらく価格も高くなることを含んで、お客様満足度を上げる手法を採ったものと推察できます。

今回はRAV4としての立ち位置を改革する必要はなく、育てて、RAV4ファンを増やすこと。そして現行モデルを所有するユーザーも買い換えたいな、と思わせる戦法を選択したものと思います」

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