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名車2000GTの伝統を継承した70型スープラ

1986年2月、トヨタは国内で初めてスープラを名乗ったA70型スープラ(通称、ナナマルスープラ)を発売した。A70型スープラは、「セリカ」をベースに1978年に誕生した上級スペシャリティカー「セリカXX(海外名:スープラ)」の3代目であり、これを機に日本でもスープラを名乗るようになった。
70型スープラは、1967年に登場した名車「トヨタ2000GT」の血統を継承した本格FRスポーツあることを宣言し、「TOYOTA 3000GTスープラ」というキャッチコピーを掲げた。その宣言通り、スポーツモデルらしいシャープなスタイリングと、2000GT以来の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンション、パワフルな直6エンジン(1G系/7M系)が搭載された。

ボディは、ロングノーズ/ショートデッキで構成される3ドアハッチバックで、空力性能を意識してフロントグリルのないリトラクタブルヘッドライトや大型エアカットフラップなどを採用し、Cd値は当時トップクラスの0.33を達成。シャープなシルエットだが、ライバルである2シーターの日産「フェアレディZ」に対して、5名乗車できるラグジュアリーな雰囲気で差別化を図った。



エンジンは、直列6気筒の高性能エンジンを搭載。トップグレードの「3.0GTターボ」には、当時最強の最高出力230ps/最大トルク33.0kgmを発揮する3.0L直6 DOHCインタークーラーターボ(7M-GTEU)を搭載し、0-100km/h加速は6.4秒、最高速度は232km/hと圧巻の走りを披露。その他にも、日本初のツインターボを導入した185psの2.0直6 DOHCエンジン(1G-GTEU)とNA(無過給)エンジンも用意された。トランスミッションは、5速MTおよび4速ATの組み合わせ、駆動方式はFRである。

パワフルな走りをアピールするように、1987年の全日本ツーリングカー選手権では、デビュー戦でいきなり優勝を飾るなど、レースでもその実力を遺憾なく発揮した。

マッシブなスタイリングに変貌したA80型スープラ
1993年5月にデビューしたA80型スープラ(ハチマルスープラ)は、シャープなシルエットだった先代から一転、エアロダイナミクスを追求した低重心のダイナミックなフォルムに変貌し、テールを大胆に切り落としたウェッジシェイプが特徴だった。

軽量かつ高剛性のボディに、ハンドリング性能と乗り心地を両立させる4輪ダブルウィッシュボーンと4輪ベンチレーテッドディスクブレーキを装備。その他にも、走行安定性と操縦安定性の向上のため、新開発のトラクションコントロールや横Gセンサー付4輪ABS、トルセンLSD(リミテッド・スリップデフ)も設定された。

パワートレインは、最高出力225ps/最大トルク29.0kgmの3.0L直6 DOHC(2JZ-GE)、280ps/44.0kgmのツインターボ(2JZ-GTE)の2種エンジンと、5速MTおよび電子制御OD付4速ATの組み合わせ、駆動方式はもちろん伝統のFRだ。

走り自慢のA80型スープラは、スーパーGTの前身であるJGTC(全日本GT選手権)のGT500クラスに、チューンナップした4.3L V8エンジンに換装して挑戦、1995年からフル参戦して初優勝。1997年には6戦中5勝をマークしてシリーズチャンピオンに輝き、ついにJGTCで初タイトルを獲得したのだ。
A80型スープラは、大ヒット映画「ワイルド・スピード」シリーズに登場し、世界中のクルマ好きだけでなく、映画ファンからも熱い視線を集めた。しかし、2000年を迎えて排ガス規制や燃費規制に膨大なコストがかかるようになり、2002年にいったん生産を終了した。
待望の復活を果たしたBMWと共同開発のA90型GRスープラ
2019年5月、生産を休止していたスープラが多くのファンの要望に応えて17年ぶりに「GRスープラ」として復活を果たした。

GRスープラは、協業関係にあるBMWとの初の共同開発モデルということで大きな注目を集めた。伸びやかなロングノーズ/ショートデッキの低重心フォルムを継承し、ダブルバブルルーフやヘッドライトの位置を車両の内側に寄せたシルエットは、名車「トヨタ2000GT」を彷彿させるものがあった。

パワートレインは、BMW製の最高出力340ps/最大トルク51kgmを発揮する3.0L直6 DOHCツインスクロールターボ(B58)、258ps&197psの2.0L直4 DOHCターボ(B48)の3種のエンジンと、8速マニュアルモード付ATの組み合わせ。FR駆動ながらフロントミッドシップの前後重量配分50:50によって、力強い動力性能とシャープな操縦安定性が実現された。

多くのファンの期待に応えて復活したGRスープラは、発売当初は海外生産のためか供給が追いつかず、発売前の予約であっという間に売り切れた。
ファイナルエディションで、ついにスープラが生産終了
2025年4月にトヨタから残念な発表があった。スープラの生産を終了し「GRスープラRZ」(3.0L直6ターボモデル:最高出力387ps/最大トルク51.0kgm)をベースにした日本国内150台(グローバルで300台)の限定車「GRスープラ“A90ファイナルエディション”」が最後のスープラになるという。

ファイナルエディションはすべてにおいてブラッシュアップが図られたが、エンジンについては吸排気系や冷却系の改良によって、最高出力は387ps→441ps、最大トルクは51.0kgm→58.2kgmと大幅に向上。ちなみに、車両価格は1500万円に設定された。

すでに、次期スープラはハイブリッドカーか!?という噂が飛び交っており、2度目の復活を多くのファンが望んでいる。
A70型スープラが誕生した1986年は、どんな年
1986年にはA70型スープラの他に、トヨタの3代目「カムリ/ビスタ」や日産「スカイライン(R31型)」の2ドアクーペなどが発売された。3代目カムリは、ワールドカーとして特に米国市場で人気となったFFセダン。R31型スカイラインは前年1985年に発売された4ドアから派生、RB20型エンジンと”セブンス”と呼ばれた硬派なイメージで走り屋にも人気を得た。
またホンダが、米国で高級ブランドチャンネルのアキュラを設立。F1では、ウィリアムズ・ホンダがコンストラクターズタイトルを獲得。ホンダのエンジンは1991年まで6年連続でF1を制し、最強のエンジンサプライヤーに君臨した。
自動車以外では、この年から日本でバブル景気が始まったとされ、地価と株の上昇が始まった。男女雇用機会均等法が施行され、土井たか子氏が憲政史上初の女性党首となった。ソ連のチェルノブイリ原子力発電所がメルトダウンを起こし、広範囲に放射性物質が拡大し大惨事を引き起こした。ビートたけしがFRIDAY編集部を襲撃し、ファミコンソフトの「ドラゴンクエスト」が大ヒットした。
ガソリン112円/L、ビール大瓶311円、コーヒー一杯404円、ラーメン394円、カレー520円、吉野家牛丼376円、アンパン92円の時代だった。

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名車「トヨタ2000GT」の流れを汲んだトヨタのフラッグシップスポーツとして進化を続けた「スープラ」。直列6気筒エンジンをフロントミッドシップ搭載してスポーツカーの理想を追求した、日本の歴史に残るクルマであることに、間違いない。