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ダイハツ・ムーヴは軽自動車に”ハイトワゴン”というジャンルを生み出したスズキ・ワゴンRのライバルとして誕生したのはご存知の通り。
一方でダイハツはタントでワンボックスではないリヤスライドドアを備えた”スーパーハイトワゴン”を開拓。今や軽乗用車市場はこのスーパーハイトワゴンが席巻しており、ワゴンRやムーヴといったスイングドア系ハイトワゴンはメインストリームからは外れてしまっている。
そして、7代目へとフルモデルチェンジしたムーヴはついにスイングドアと決別し、リヤスライドドアを採用。ダイハツはこれで、ムーヴ、ムーヴキャンバス、タントとリヤスライドドアモデルを3車種も揃えたことになる。
ここでは新型ムーヴとタント、ダイハツのリヤスライドドアモデル2台を比較してみよう。

エクステリアとサイズ
エクステリアは先代の面影を残しつつもシャープを増したデザインとなった。リヤで跳ね上がったウェストラインやその上部でブラックアウトされたピラーによるフローティングルーフデザインは非常に現代的だ。


3つのデザインパターンを用意するワゴンRに対して、元々シャープ路線だったムーヴだけに新型ではカスタムとノーマルを分けるラインナップを廃止してカスタム方向のデザインにまとめられた印象を受ける。
一方で、タントはノーマルとカスタム、さらに言えばSUVテイストのファンクロスも設定するスーパーハイトワゴンの定番ラインナップ。ファミリー層をメインにしつつ、多様なユーザーの嗜好とライフスタイルに応える。こうした作り分けも市場規模の大きいスーパーハイトワゴンだからこそと言えるだろう。
ボディサイズは軽自動車枠という規格があるため、全長(3395mm)や全幅(1475mm)などはその規格に縛られる。大きな違いが全高で、新型ムーヴが1655mm(4WD:1670mm)、タントが1755mm(4WD:1775mm)とその差は100mmもある。

ホイールベース(2460mm) のほか、トレッド※(前:1300mm/後:1295mm)も共通となっている。(※FF車)
なお、車重は新型ムーヴが860kg〜890kg(4WD:900kg〜940kg)、タントが880kg〜930kg(4WD:930kg〜980kg)と新型ムーブが20kg〜40kgほど軽量なのは、車高の違いからすれば当然か。

室内サイズは新型ムーヴの全長2140mm×全幅1335mm×全高1270mmに対し、タントは全長2125mm×全幅1350mm×全高1370mmと、タントの室内高が高いの当然としても室内長や室内幅は僅かだが新型ムーヴが上回っている。

ホイールはRSが15インチアルミホイールに165/55R15サイズのタイヤ、Xが14インチスチールホイール+ホイールキャップに155/65R14サイズのタイヤを装着する。
タントもカスタムRSが15インチアルミホイールに165/55R15サイズのタイヤ、RS以外が14インチスチールホイール+ホイールキャップに155/65R14サイズのタイヤを装着する。
ホイールやタイヤのサイズと組み合わせは両車共通。また、14インチスチールホイールに装着されるホイールキャップも新型ムーヴとタントは共通のようだ。
また、15インチホイールで4.7m、14インチホイールで4.4mの最小回転半径や、FFが150mm、4WDが165mmの最低地上高も共通となっている。
インストゥルメントパネル&メーター
インストゥルメントパネルまわりの最大の違いはメータークラスター。新型ムーヴはオーソドックスなクラスターだが、タントはセンター付近まで伸びる横長のクラスターになっている。また、コンソール中央のセンターディスプレイが新型ムーヴでは大型化しているのもタントとの違いだ。



シフトレバーとエアコン操作パネルの位置やインターフェースは概ね共通しているほか、ステアリングも共通。ただし、新型ムーヴRSには右スポークにクルーズコントロール系のスイッチが追加されていた。

メーター自体もムーヴがオーソドックスなアナログメーター(RSがスピードと回転の2眼、Xがスピードのみの1眼)なのに対し、タントはデジタルメーターを採用している。
シート&ユーティリティ
シート形状は新型ムーヴもタントも共通のように見える。ただし、新型ムーヴはRSとGがネイビー、XとLがグレージュとカラーは2種類だが、タントカスタムのようなレザー調と組み合わせたコンビシートは無い。また、ファブリック生地もタントに採用されている撥水加工ではない。
また両車の違いとしては、タントではフロントシート背面に配置される後席用折り畳みテーブルが新型ムーヴには用意されていない点が挙げられる。
ラゲッジルームはユーティリティ性が特に求められるタントの方が数値的にも余裕がある。具体的には、フロア高が新型ムーヴが660mmに対しタントが580mm。開口高は車高の差が如実に表れ、新型ムーヴが865mmでタントが1061mm。開口幅は新型ムーヴが1052mm、タントが1007mmと新型ムーヴが健闘している。
やはり最大の違いは車高(室内高)以上にリヤスライドドア。新型ムーヴが通常のスライドドアであるのに対し、タントの特長である右側ドアにピラーを内蔵するミラクルオープンドアを備え、助手席側フロントドアと右リヤスライドドアを開けた時の開口面積の広さは唯一無二と言えるだろう。


パワートレイン
搭載されるエンジンはどちらもKF型の658cc水冷直列3気筒DOHC12バルブ。インタークーラーターボ仕様が64ps/6400rpm・100Nm(10.2kgm)/3600rpm、NA仕様が52ps/6900rpm・60Nm(6.1kgm)/3600rpmと出力も変更なし。
トランスミッションも両車ともにCVTだ。
しかし、実は燃費が世代や車重の差ほどに違いがなく、カタログ値ではNAモデルは僅かながらタントの方が数値が良い。良かれ悪しかれその差はごく僅かなのだが、車重や前面投影面積の差を考えると意外な数値だ。
新型ムーヴ | タント | |
X(FF) | 22.6km/L | 22.7km/L |
X(4WD) | 20.6km/L | 21.4km/L |
RS(FF) | 21.5km/L | 21.2km/L |
RS(4WD) | 19.9km/L | 19.6km/L |
フロントがベンチレーテッドディスク、リヤがドラムのブレーキや、フロントがマクファーソンストラット、リヤがトーションビーム(4WDは3リンク)のサスペンション形式も両車共通となっている。
グレードと価格は?
新型ムーヴはカスタムが廃止され、グレードは「RS」「G」「X」「L」となり、「RS」のみターボエンジン搭載車となる。4WDは全グレードで用意されている。価格については以下の表のとおり。
グレード | 価格(FF) | 価格(4WD) |
L | 135万8500円 | 148万5000円 |
X | 149万500円 | 161万7000円 |
G | 171万6000円 | 184万2500円 |
RS | 189万7500円 | 202万4000円 |
タントはカスタムに「カスタムRS」と「カスタムX」、ノーマルは「Xターボ」「X」「L」というグレード設定。カスタムのNAエンジンモデル、ノーマルのターボエンジンモデルもラインナップし、全グレードに4WDを用意する充実したラインナップだ。
グレード | 価格(FF) | 価格(4WD) |
L | 148万 5000円 | 161万4500円 |
X | 161万7000円 | 173万8000円 |
Xターボ | 173万2500円 | 185万3500円 |
カスタムX | 187万円 | 199万1000円 |
カスタムRS | 196万3500円 | 208万4500円 |
「L」や「X」なら新型ムーヴはタントの12万円〜13万円安。「RS」なら6万円〜7万円安とその差は縮まる。モデル的にやや古め(2019年デビュー)ということもあるが、+10cmの車高(室内高)とミラクルオープンドアでこの価格差はタントにお買い得感がある。
ムーヴキャンバスとのバッティングは?
新型ムーヴとタントにおいては、車高の違いのほかにやはりミラクルオープンドアが大きな違いとなっている。
一方で、ダイハツのリヤスライドドア軽自動車といえばムーヴキャンバスが先行しており、人気を博している。サイズやユーティリティで両車はバッティングしそうにも思われるが、ムーヴキャンバスは女性をメインターゲットにしたファニーなデザインが特徴。

新型ムーヴは廃止された”カスタム”寄りのシャープなデザインのみになったことを考えると、ムーヴキャンバスがノーマルラインで、新型ムーヴがカスタムラインと考えることもできる。
価格的には新型ムーヴが135万8500円〜202万4000円であるのに対し、ムーヴキャンバスは157万3000円〜200万7500円となっており、ややムーヴキャンバスの方がボトムラインは上だが価格帯としてはほぼ拮抗している。装備や世代差を考えると新型ムーヴの方がお得な設定のようにも考えられる。