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SCNの主役はアメ車だけじゃない!
身近な国産車をベースにカスタムしたDOMESTICも熱い!!
2025年5月11日(日)、お台場の青海駐車場を会場として『MOONEYES Street Car Nationals®』(以下、SCN)が開催された。
今から38年前の1987年3月に第1回が行われたSCNは、「MOON OF JAPAN」主催の国内初のアメリカン・カスタムショーとなった。それから38年が経過した今回、エントリー車両は1100台にも達し、名実ともに国内最大級のアメリカン・カスタムの祭典へと成長した。会場ではアメリカ車のエントリーが目立つものの、DOMESTICと呼ばれる日本車のエントリーも台数的にけっして負けてはいない。

そのカスタムスタイルもHOTRODあり、ミニトラックあり、USDMあり、スポコンありとさまざまで、どのクルマもオーナーの個性とこだわりが色濃く表現されており、1台として同じマシンが存在しない。

アメリカン・カスタムというとアメリカ車をベースにしたカスタムを想像しがちだが、じつはルールに縛られない自由なカスタムこそがその醍醐味であり、必ずしもアメリカ車をベースとする必要はないのだ。

実際、ヨーロッパ各国で開催されるアメリカン・カスタムのイベントに行くと彼の地のDOMESTIC、すなわちヨーロッパ車をベースにしたカスタムカーを見かけることが多い。

例えば、イギリスなら初代オースチン・セブン(1959年に誕生したBMCミニの初期型ではなく、1922~1939年にかけて生産された小型大衆車のほう)やフォード・ポピュラーをベースにしたHOTRODを見かけることが多いし、スウェーデンではボルボ・アマゾンを改造したHOTRODやLOWRIDERが定番のカスタムとなっている。また、フランスではプジョーやシトロエン、ルノーベースのアメリカン・カスタムが珍しくはない。

長期不況の税制の影響でリーズナブルで維持費の安いクルマのカスタムが人気に
排気量に関係なく一律に課税されるアメリカとは違い、日本やヨーロッパでは排気量に応じて自動車税が累進的に高くなる制度となっている。なかでも日本は大排気量車に贅沢税的な高額な自動車税が課せられる上、おまけに新車登録から13年を超えると根拠不明瞭な15%もの増税が課せられる。

おまけにガソリン税は半世紀以上も暫定税率が続き、消費税の二重課税もあって極めて重税感が高い。このような政権与党による悪政が続く状況では、おいそれと大排気量車を買うのも難しい。

そうしたことから、懐事情の軽い若者が代用アメリカ車として身近な国産車をカスタムしたことが、もともとのDOMESTICのはじまりであった。ところが、時間の経過とともに独自の文化が醸成され、いつしか独自の魅力を放つカスタムジャンルとして各国で定着して行った。

日本の場合、長引く不況の影響により維持費が安く燃費の良い軽自動車や商用車、コンパクトカーをベースにしたカスタムが熱い。その中でも軽自動車は、排気量にしてアメリカ車の1/8程度。車体サイズもフルサイズのセダンやSUVの6割ほどしかない。

それでいて、セダンやハイトワゴン、SUV、クロカン4WD、ミニバン、トラック、スポーツカーとほぼすべてのジャンルを網羅している。これを盆栽的な感覚でカスタマイズすることで愛らしくもカッコイイマシンに仕上げることができるのだ。

また、軽自動車と並んで新車価格がリーズナブルで維持費の掛からない商用車も人気を集めている。具体的な車種を挙げれば、トヨタ・プロボックスなどのライトバン、トヨタ・ハイエースや日産NV200などのワンボックスバン、トヨタ・ハイラックスや日産ダットサントラックなどのミニトラック(ピックアップトラック)系だ。

カスタムジャンルとしては古株のミニトラックの人気が高いのは当然のことだが、4ナンバーのライトバンや箱バンの人気が高いのは、新車・中古車価格もリーズナブルなこと、維持費が安いこと、商用車と違って余計な装備がついておらず、シンプルな設計でカスタムがしやすいことが理由なのだろう。とくにこれらの車種はローダウンだけでなく、軽トラや軽バンで人気に火がついた「アゲトラ」や「アゲバン」などのカスタムとの相性が良いことでも知られている。

これらの車種の難点は1年車検の煩わしさだが、手間を惜しまなければ比較的手軽に安くカスタムカーを楽しめるということで、若い世代を中心にカスタムファンの間で注目が高まっている。

マイナー車やマイナーグレードがCOOL!SCNにおける国産旧車カスタムの世界
また、SCNは珍しい国産旧車が数多くエントリーすることでもよく知られたイベントである。一般的なクラシックカーショーでは、ハコスカやケンメリ、トヨタ2000GTなどのオリジナル度の高い国産スポーツカーが花形となるのだろうが、カスタムしてナンボのSCNでは、フェアレディZのような人気車種の場合、ストックの車両よりもエンジンをアメリカンV8に載せ替えるなどしたカスタムカーのほうが注目を集めるし、廉価グレードやマイナー車種、商用車をベースにしたマシンの人気も高い。

また、ほかのカーショーではまずお目にかかれない希少車と出会えるのもSCNの魅力のひとつだ。今回のSCNリポートの第1回目で紹介したスズキ・ワゴンRC2のようなマイナーグレードや、過去にはフォード(起亜)・フェスティバセダンやコロナスーパールーミーのようなレア過ぎて存在さえ知られていない車種のエントリーもあった。

また、日産サニーカリフォルニアや初代ホンダ・アコード、2代目レオーネのような1970~1980年代の大衆車が充実しているのもSCNの面白いところではある。

ルーフになっていないのはバンボディのみとなるが、アメリカ市場ではこのボディタイプのステーションワゴンも存在するようだ。

もちろん、アメリカン・カスタムで人気車種となるクラシック・クラウンやサニートラックはエントリー台数としては多く、これらの車種を手に入れてローダウン、大径ホイール、派手なカラーへのリペイントなどの定番のカスタムを施せばバッチリとキマる。

しかし、不人気どころか存在すら半ば忘れられているマイナーな車種をベースに、そのクルマの隠れた魅力を引き出すべく、COOLに、センス良く、オリジナリティ溢れたマシンにカスタマイズすれば、誰もが振り返るような最高の1台に仕上げることだってできるのだ。

もしもこの記事の読者の中でSCNをはじめとするMOONEYES主催のイベントに興味があるという人がいれば、愛車の買い換えるのではなく、今乗っているクルマ……例えば、それが親や親戚から譲られたクルマであったり、中古車店の片隅でひと桁万円で売られていたポンコツ車であったとしても、それをベースにカスタマイズを施してはみてはどうだろうか?

それが不人気車や不人気グレードであったとしても、不要なバッジやモールなどを取り外して外観をスッキリさせ、車高を少し下げて、ホイールを交換すればそれだけで見違えるようにカッコ良くなることもある。塗装業者に払う費用がなければ、DIYで自家塗装にチャレンジしても良いだろう。昨今流行のマットペイントなら素人仕事でもどうにかカタチになるものだ。

大金をかけてプロに作ってもらうばかりがカスタムカーではない。COOLなマシンに仕上げるのに必要なものは、ちょっとのお金とアイデア、センス、そしてやる気。予算が少ないのなら手を動かして自分だけの個性的なマシンを作る。それこそがカスタムの楽しさであり、醍醐味なのだ。

そして、マシンが仕上がったら来年のSCNにエントリーしてみよう。会場で同好の仲間が見つかるだろうし、ひょっとすると会場で思わぬ注目を集めてアワードにノミネートされるかもしれない。
SCNにエントリーした様々なDOMESTICマシンたち

















