【37th MOONEYES Street Car Nationals®レポート vol.4】

日本車もアメリカンカスタム!?『MOONEYES Street Car Nationals』の国産旧車にネオクラやレア車まで一気に見せます!!

今回で37回目を数える『MOONEYES Street Car Nationals®』(以下、SCN)が、2025年5月11日(日)にお台場の青海駐車場を会場として今年も開催された。アメリカ車が主役のカーショーと勘違いされることの多いSCNだが、DOMESTICと呼ばれる日本車ベースのカスタムジャンルも負けず劣らずの人気を誇っている。今回は写真を中心にSCNにエントリーしたDOMESTICを紹介しよう。
REPORT:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu) PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)/MotorFan.jp

SCNの主役はアメ車だけじゃない!
身近な国産車をベースにカスタムしたDOMESTICも熱い!!

2025年5月11日(日)、お台場の青海駐車場を会場として『MOONEYES Street Car Nationals®』(以下、SCN)が開催された。

『第37回MOONEYES Street Car Nationals®』のイベントレポート第1回はこちら。

今から38年前の1987年3月に第1回が行われたSCNは、「MOON OF JAPAN」主催の国内初のアメリカン・カスタムショーとなった。それから38年が経過した今回、エントリー車両は1100台にも達し、名実ともに国内最大級のアメリカン・カスタムの祭典へと成長した。会場ではアメリカ車のエントリーが目立つものの、DOMESTICと呼ばれる日本車のエントリーも台数的にけっして負けてはいない。

そのカスタムスタイルもHOTRODあり、ミニトラックあり、USDMあり、スポコンありとさまざまで、どのクルマもオーナーの個性とこだわりが色濃く表現されており、1台として同じマシンが存在しない。

Z31型日産Z-car。すなわち、日産フェアレディZの北米仕様の逆輸入車だ。左ハンドルのZは日本車のウェットな感覚がなくなり、明るく陽気なアメリカンな雰囲気がプンプンと漂う。

アメリカン・カスタムというとアメリカ車をベースにしたカスタムを想像しがちだが、じつはルールに縛られない自由なカスタムこそがその醍醐味であり、必ずしもアメリカ車をベースとする必要はないのだ。

Z31のリヤビュー。2by2も悪くはないが、やはりZはショートホイールベースの2シーターがCOOLだ。

実際、ヨーロッパ各国で開催されるアメリカン・カスタムのイベントに行くと彼の地のDOMESTIC、すなわちヨーロッパ車をベースにしたカスタムカーを見かけることが多い。

ダイハツ・コペンベースのCOPERCHE 887GT-K。オートサロン2025に出展したことで話題となったカスタムカーで、FRP製のボディキットを纏ったことでポルシェ997GT3風のルックスに変身した。

例えば、イギリスなら初代オースチン・セブン(1959年に誕生したBMCミニの初期型ではなく、1922~1939年にかけて生産された小型大衆車のほう)やフォード・ポピュラーをベースにしたHOTRODを見かけることが多いし、スウェーデンではボルボ・アマゾンを改造したHOTRODやLOWRIDERが定番のカスタムとなっている。また、フランスではプジョーやシトロエン、ルノーベースのアメリカン・カスタムが珍しくはない。

COPERCHE 887GT-Kのリヤビュー。巨大なウイングが目を引く。コンビランプはポルシェ純正品を流用しているようだ。

長期不況の税制の影響でリーズナブルで維持費の安いクルマのカスタムが人気に

排気量に関係なく一律に課税されるアメリカとは違い、日本やヨーロッパでは排気量に応じて自動車税が累進的に高くなる制度となっている。なかでも日本は大排気量車に贅沢税的な高額な自動車税が課せられる上、おまけに新車登録から13年を超えると根拠不明瞭な15%もの増税が課せられる。

カスタムペイントが美しい日産ダットサントラック(D21型)ベースのお手本のようなミニトラック。フロントグリルはビレットグリル化され、エアサスで限界まで低めた車高に台形のビレットホイールが組み合わされている。

おまけにガソリン税は半世紀以上も暫定税率が続き、消費税の二重課税もあって極めて重税感が高い。このような政権与党による悪政が続く状況では、おいそれと大排気量車を買うのも難しい。

ダットサントラックのエンジンルーム。左ハンドルの逆輸入車ということで、国内仕様にはないキャブレター仕様のZ24型2.4L直列4気筒エンジンが搭載されている。ヘッド回りには魅せることを重視してメッキが施されている。

そうしたことから、懐事情の軽い若者が代用アメリカ車として身近な国産車をカスタムしたことが、もともとのDOMESTICのはじまりであった。ところが、時間の経過とともに独自の文化が醸成され、いつしか独自の魅力を放つカスタムジャンルとして各国で定着して行った。

トヨタ・クラウンバンとしては最終型となる9代目。角ばったレトロなスタイリングにメッキバンパーの組み合わせによるクラウンバンはアメリカン・カスタムの素材として人気が高い。ローダウン&カスタムペイントの組み合わせにより、1970年代のアメリカ製フルサイズ車の雰囲気を再現している。

日本の場合、長引く不況の影響により維持費が安く燃費の良い軽自動車や商用車、コンパクトカーをベースにしたカスタムが熱い。その中でも軽自動車は、排気量にしてアメリカ車の1/8程度。車体サイズもフルサイズのセダンやSUVの6割ほどしかない。

クラウンバンのリヤビュー。車両の後方にはヤマハSR400を乗せたトレーラーを牽引していた。

それでいて、セダンやハイトワゴン、SUV、クロカン4WD、ミニバン、トラック、スポーツカーとほぼすべてのジャンルを網羅している。これを盆栽的な感覚でカスタマイズすることで愛らしくもカッコイイマシンに仕上げることができるのだ。

1987~1996年にかけて生産された2代目ホンダ・シビックシャトルは、当時としては長寿モデルとなったホンダのステーションワゴンだ。写真の車両は足まわりをローダウンし、さりげなくアメリカンな雰囲気を演出している。

また、軽自動車と並んで新車価格がリーズナブルで維持費の掛からない商用車も人気を集めている。具体的な車種を挙げれば、トヨタ・プロボックスなどのライトバン、トヨタ・ハイエースや日産NV200などのワンボックスバン、トヨタ・ハイラックスや日産ダットサントラックなどのミニトラック(ピックアップトラック)系だ。

2代目シビックシャトルのリヤビュー。最近ではなかなか街中でお目にかかれないこうしたクルマと出会えるのもSCNの魅力となっている。

カスタムジャンルとしては古株のミニトラックの人気が高いのは当然のことだが、4ナンバーのライトバンや箱バンの人気が高いのは、新車・中古車価格もリーズナブルなこと、維持費が安いこと、商用車と違って余計な装備がついておらず、シンプルな設計でカスタムがしやすいことが理由なのだろう。とくにこれらの車種はローダウンだけでなく、軽トラや軽バンで人気に火がついた「アゲトラ」や「アゲバン」などのカスタムとの相性が良いことでも知られている。

8代目ダットサントラック(720)。

これらの車種の難点は1年車検の煩わしさだが、手間を惜しまなければ比較的手軽に安くカスタムカーを楽しめるということで、若い世代を中心にカスタムファンの間で注目が高まっている。

2024年のヨコハマホットロッドカスタムショーにてBest Mini Truckのアワードを受賞した1999年型トヨタ・タコマ。
2024年のヨコハマホットロッドカスタムショーのイベントレポートはこちら。

マイナー車やマイナーグレードがCOOL!SCNにおける国産旧車カスタムの世界

また、SCNは珍しい国産旧車が数多くエントリーすることでもよく知られたイベントである。一般的なクラシックカーショーでは、ハコスカやケンメリ、トヨタ2000GTなどのオリジナル度の高い国産スポーツカーが花形となるのだろうが、カスタムしてナンボのSCNでは、フェアレディZのような人気車種の場合、ストックの車両よりもエンジンをアメリカンV8に載せ替えるなどしたカスタムカーのほうが注目を集めるし、廉価グレードやマイナー車種、商用車をベースにしたマシンの人気も高い。

1987~1992年にかけて生産された三菱ギャランVR-4。ほぼノーマル車ながら、今やレッドデータブックに載りそうな絶滅危惧車なので紹介することにした。

また、ほかのカーショーではまずお目にかかれない希少車と出会えるのもSCNの魅力のひとつだ。今回のSCNリポートの第1回目で紹介したスズキ・ワゴンRC2のようなマイナーグレードや、過去にはフォード(起亜)・フェスティバセダンやコロナスーパールーミーのようなレア過ぎて存在さえ知られていない車種のエントリーもあった。

ギャランVR-4のリヤビュー。当時の三菱の看板車種であり、4VALVE、4WD、4WS、4IS、4ABSなどのハイテク装備を惜しみなく注ぎ込み、当時としてはクラストップクラスの205psを叩き出した。なお、後期型では最高出力は240psまでパワーアップしている。

また、日産サニーカリフォルニアや初代ホンダ・アコード、2代目レオーネのような1970~1980年代の大衆車が充実しているのもSCNの面白いところではある。

左ハンドル仕様が珍しい2代目スバル・レオーネツーリンワゴン4WDターボの後期型。国内仕様では二段
ルーフになっていないのはバンボディのみとなるが、アメリカ市場ではこのボディタイプのステーションワゴンも存在するようだ。
初代ホンダ・アコード。左ハンドルの北米仕様車だ。

もちろん、アメリカン・カスタムで人気車種となるクラシック・クラウンやサニートラックはエントリー台数としては多く、これらの車種を手に入れてローダウン、大径ホイール、派手なカラーへのリペイントなどの定番のカスタムを施せばバッチリとキマる。

初代日産プレジデント。

しかし、不人気どころか存在すら半ば忘れられているマイナーな車種をベースに、そのクルマの隠れた魅力を引き出すべく、COOLに、センス良く、オリジナリティ溢れたマシンにカスタマイズすれば、誰もが振り返るような最高の1台に仕上げることだってできるのだ。

鮮やかなイエローゴールドのペイントが美しい「ハチマキグロリア」こと2代目プリンス・グロリアワゴン。

もしもこの記事の読者の中でSCNをはじめとするMOONEYES主催のイベントに興味があるという人がいれば、愛車の買い換えるのではなく、今乗っているクルマ……例えば、それが親や親戚から譲られたクルマであったり、中古車店の片隅でひと桁万円で売られていたポンコツ車であったとしても、それをベースにカスタマイズを施してはみてはどうだろうか?

2代目トヨタ・クラウン。

それが不人気車や不人気グレードであったとしても、不要なバッジやモールなどを取り外して外観をスッキリさせ、車高を少し下げて、ホイールを交換すればそれだけで見違えるようにカッコ良くなることもある。塗装業者に払う費用がなければ、DIYで自家塗装にチャレンジしても良いだろう。昨今流行のマットペイントなら素人仕事でもどうにかカタチになるものだ。

2代目トヨタ・クラウンピックアップ。

大金をかけてプロに作ってもらうばかりがカスタムカーではない。COOLなマシンに仕上げるのに必要なものは、ちょっとのお金とアイデア、センス、そしてやる気。予算が少ないのなら手を動かして自分だけの個性的なマシンを作る。それこそがカスタムの楽しさであり、醍醐味なのだ。

3代目トヨタ・クラウンピックアップ。

そして、マシンが仕上がったら来年のSCNにエントリーしてみよう。会場で同好の仲間が見つかるだろうし、ひょっとすると会場で思わぬ注目を集めてアワードにノミネートされるかもしれない。

SCNにエントリーした様々なDOMESTICマシンたち

初代トヨタ・カローラバン。
初代トヨタ・ハイラックス。
7代目ダットサン・トラック(620)。
ホンダ・ライフステップバン。
トヨタ・コロナマークII 1900SS。
トヨタ・セリカリフトバック。
日産サニートラック。
ダットサン・ブルーバード810ワゴン。1976~1979年にかけて生産された5代目ブルーバードの輸出仕様。
ホンダ・ラファーガ。直列5気筒エンジンを縦置きフロントミッドシップとしたレイアウトが特徴だった。
北米仕様の日産キューブ。通算3代目に当たり、このモデルから左ハンドル仕様が生産され、右側通行圏にも輸出を開始した。
ノーズブラを装着したスバル・プレオ。
日本では販売されなかったスバル・トライベッカ。
スバル・レヴォーグ。
11代目ホンダ・シビックのタイプR。
マツダ・プロシード。
日産ADバンの派生モデルAD MAX。
マツダ・ボンゴブローニィ。 
日産NV200もカスタムベースとして人気があるようだ。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…