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コンセプトカーそのもののルックス
2019年の東京モーターショーの日産ブースで話題となった、アリアコンセプトは、『ニッサン・インテリジェント・モビリティ』を具現化したモデルとして注目を集めた。電動化、高知能化など、先進技術を集約し、高級感あふれる内外装によって、今後の日産ブランドの象徴的存在として位置づけられていた。
それから足かけ4年。ようやく試乗する機会を得た。アリアのラインアップは66kwhと91kwhのふたつのバッテリーにそれぞれFFと4WDが用意され全4タイプ。66kwhモデルのB6、91kwhのB9。4WDモデルはe-4ORCEとネーミングされている。
今回は22年5月に発売が予定されているアリアのファーストモデルで、ベーシックタイプのB6・FF仕様。全グレードが出揃うのは22年夏以降を予定しているという。
モーターショーの記憶は少々薄れてしまっているが、グリルやグラスエリアの面一感やうねりを持った流れるボディラインなど、ショーモデルを思わせるような造形美を持つ。あのときのまま、と言っても誰しも納得するに違いない。
室内に目を向けてみると、ステッチの入った厚みのあるシートは先に限定販売されたB6・limitedと同仕様がラインOPによって用意され、インパネ周りは12.3インチのディスプレイが横にふたつ並び、左右に湾曲して広がるアンダーパネルには透過型のスイッチを配置し質感、先進性ともに目を惹かれる。
足元はほぼフラットで左右に広く、シート間には前後に電動で移動する大型のセンターコンソールを持つなど、運転席、助手席ともにラウンジに腰かけているようなゆったり感を味わえる。エクストレイルに比較して70mm長いホイールベース2775mmを得たことでリヤシートの足元も広く、サルーンとしての味わいすら持ち得ている。
クルマは走ってナンボである
もちろんクルマは走ってナンボである。
内外装を褒めたのも、それにしっかりと機能がついてきているからだ。スターターボタンを押してみても、透過式のスイッチやメーターに灯がともる以外一切無反応。昔のリーフのようにウィーンッもクオーンッもない。電気自動車である主張もなければモーターの存在感もない。それでいながらひと踏みすればスッと1.7トン近いボディを動かしてしまう。
そのときの音もしない。言い過ぎのようだが、個人的には街乗りレベルの加速時に音の変化は感じられず、常に高い静粛性を保ってくれている。高速での合流で極低速域から高速レンジへと加速する際にモーター音は確かにあるが、速度と回転音がガソリン車の加速フィール同様にリンクし、パワーの上昇音が気にならない。
新開発の巻線界磁式モーターと呼ばれるユニットは、いままで経験した低速での太いトルク感とは異なり、一層の滑らかさに加えて力強さが期待値通りに発生。初期の頭打ち感が少なく、リニアにトルクを引き出してくれることで、モーター本体の音対策以上に静粛性を生み出してくれている。感覚に素直な加速感が功を奏している。
タイヤには吸音スポンジ入りを採用している(試乗車はダンロップ製だったが、ブリヂストン製もあり)というが、路面からの振動によるロードノイズの吸収に加えて、空気の圧縮音であるパターンノイズの発生も抑えられ、速度の変化による音変化も少ない。
そのうえ、クルマ自体の遮音性にもこだわっていることで、多角的に音を断ち切ることで、電気自動車本来の静粛性が生み出されたと言える。
12年前にデビューしたリーフではエンジン音だけはモーターに置き換わったことで静かだったものの、風切り音やロードノイズなどはむしろ目立ってしまっていたのとは隔世の感がある。
走行性能的にはEV専用の新設計シャシーと高応答大径ダンパーの採用による効果が大きい。路面からの無駄な動きを遮断して静粛性を保っていることに加えて、足元が路面をしっかりとつかみモーターのパワーを無駄なく伝達。フロント駆動でありながらゼロ発進加速を行なってみてもステアリングは常に締まり感があって、強力なトラクションを生んでくれている。接地感が高いから操作に対する応答も良く、ハンドリング的には正確さがあって落ちついている。
加速中の姿勢も大きく変化することがなく、低重心の効果によって高い安定感をキープし、気がつけば思った以上の速度域までたどりつくことができる。ただ、負荷がかかっているときには、シャシーの強さによる恩恵を感じられた半面、一定走行に移ると路面からのうねりなどに反応しやすくフロントの上下動が多い。どっしり構えたリヤの落ち着き感に対して、フロントはモーターのパワーを最大限生かすべく味つけが、やや強く出てしまっているようだ。
アリアはショーモデルのコンセプトどおり、SUVでありながらその中身は高級感に溢れ、電気自動車・BEV本来の魅力を最大限に発揮。電気自動車の先駆者として、ようやく真打ちを登場させたことで、製造中止が決まっている上級セダン系を引き継ぐ次世代モデルとしての役割を持って、日産を代表するモデルになっていくに違いにない。
これからのEV戦略と次世代モデルの強化が楽しみである。
日産アリア B6 2WD 全長×全幅×全高:4595mm×1850mm×1665mm ホイールベース:2775mm 車重:1960kg サスペンション:Fストラット式/Rマルチリンク式 駆動方式:FWD 駆動モーター 形式:AM67型交流同期モーター 定格出力:45kW 最高出力:218ps(160kW)/5950-13000pm 最大トルク:300Nm/0-4392rpm バッテリー容量:66kWh 総電圧:352V 交流電力量消費率WLTCモード:166Wh/km 市街地モード 159kW/km 郊外モード 170kW/km 高速道路モード 176kW/km 一充電走行距離(WLTCモード):470km 車両本体価格:539万円 試乗車はop込みで オプション:BOSEプレミアムサウンドシステム13万2000円/プロパイロット リモートパーキング+ステアリングスイッチ+ヘッドアップディスプレイ+アドバンストアンビエントライティング+ダブルシャークフィンアンテナ+パノラミックガラスサンルーフ+プロパイロット2.0 57万3500円