自転車好きにも人気のフォレスターに27インチ級ロードバイクを積んでみた!【スポーツ自転車積載チャレンジ:第2回 スバル・フォレスター編】

愛車ルノー・カングーはロードバイクの積載性で選んだという自転車好きジャーナリストの安藤眞が、さまざまなクルマにあの手この手で「愛車」を載せて積載性を徹底チェック! 全国の自転車愛好家の皆さん、ぜひクルマ選びの参考にしてください。
REPORT:安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO:中野幸次(NAKANO Koji)

連載前口上――全国の自転車好き(と僕自身の)ために――

40年以上、自転車を趣味とする僕にとって、クルマ選びの重要な基準は「自転車が積めるかどうか」実際、最初に買った中古車以外は、すべてそれを基準に選んでいる(最初のクルマはルーフキャリヤに自転車を載せていた)。

ぶっちゃけ前後輪を外してしまえばセダンのリヤシートにも積載できるのだが、居住空間は汚したくないし、なるべく手間をかけずに積載したい。しかし、身長が181cmある僕のロードバイクは、サドル高が1mある。荷室高が1mを越えるクルマとなると、ミニバン以外に選択肢はなくなってしまう。

ということで、「このクルマなら積めそう」というモデルをピックアップして、どうすれば積めるかを試そうというのがこちらの企画。全国の自転車好きドライバーのクルマ選びの参考になれば幸いです!

スバル・フォレスター X-BREAK 

全長4640mm 全幅1815mm 全高1730mm 車両価格 3,080,000円 

現行フォレスターはハッチゲート開口幅を目一杯広く取るなど、積載性にこだわって設計されているのが特徴。自転車でもそれ以外の荷物でも載せ下ろしが頻繁な人ほど、そうした恩恵を感じられるだろう。中でも写真のX-BREAKなら、撥水系のシート記事を使うなど、アクティブユーザーにぴったりな一台だ。

ロードバイクと親和性の高いスバル・ブランド

スバルとロードバイクの関係は深い。1996年からフランスの自転車用ホイールメーカー“マヴィック”と提携し、ツール・ド・フランスを始めとする世界最高峰のロードレースに、ニュートラルサポートカーを提供している。

プロロードレースは、パンクなど機材トラブルに備えて、チームごとにサポートカーを帯同させているが、少人数がチームから離れて“逃げ”を打つような展開になると、チームのサポートカーから離れてしまうこともある。そんなケースに対応できるよう、チームの垣根を越えて交換用のホイールやスペアバイクを提供するのが、ニュートラルサポートの役割だ。

トラブルに即座に対応できるよう、バイクはルーフキャリヤに搭載しており、実際にはルーフに手の届きやすいレヴォーグが使用されているが、本企画の趣旨は、車内に積めるかどうかの評価。そこでレヴォーグではなく、フォレスターに登場願った。

SUVはフロアが高めのため、室内積載は必ずしも有利ではないが?

車内を一瞥したところ、空間的には、前後輪を外して前後をエンドサポートで支持した状態で載りそうに見えたが、試してみたら、フォークエンドサポート(前輪)の土台とホイールハウスが当たってしまう。ラゲッジ壁面のえぐりを利用すれば当たらなくなるが、そうするには後にずらす必要があり、ハンドルがはみ出る。しかも、サドルも天井に微妙に当たる。

そこでフォークエンドサポートを外してみたが、まだ天井側が少し窮屈だ、となると、サドルを下げるしかないのだが、サドルを下げれば高さは100mmちょい稼げる。ならば後輪は着けたままでいけるのでは、と試してみたら、これがドンピシャだった。

サドルを下げれば、後輪は着けたままでも積載可能。僕のバイクだと、フロントフォークに支持具を着けようとするとサドルが天井に当たってしまうので、床の傷防止のため、雑巾を敷いた。もっとサイズが小さかったり、スローピングフレームだったらフォークの支持具も付きそうだが、ホイールハウスとの干渉をどう避けるかが問題。
ラゲッジの天地は後席乗員の頭上が最も高く、開口部付近は骨格が通っているため低い。反対向きにも積めそうに見えるが、僕のバイクのサイズでは無理。前輪を外してサドルを下げて、高さが795mm以下なら、反対向きでも積めそうだ。

フロントフォークエンドがデッキボードに直に当たるので、ウェスで養生する必要はあるものの、バイクの固定は後席のストライカーとラゲッジフックを使えばバッチリ。ハンドルとサドルが車体に密着するので、バンジーコードで引けば安定する。

しかし、この方法ではサドルを下げる工具が必要だし、誤差0.5mmくらいで元に戻すのは神経を遣う。そこで、サドルをいじらずに載せられる方法はないかと試したのが、前後輪を外して倒立させる作戦。これも「ほぼギリギリ」というレベルで積むことができた。

工具不要のパターンとして、サドルを下げずに前後輪を外し、倒立して搭載するパターンも試してみた。天地方向はギリギリながら、問題なく搭載できた。

ただし、問題は固定方法。3点接地を利用して安定させるには、真っ直ぐ下向きにタイダウンするのが良いのだが、ちょうど良いアンカーがない。しかも、バイク側のロープをかけたい部分は駆動系まわりになるから、汚れていることが多いし、ワイヤーやチェーンをうまくかわす方法も考えなければならない。

固定は工夫が要りそう。倒立させると3点支持にはなるものの、ステアリングは回転自由なので、横に傾くと回ってしまうことがある。真下に強めにタイダウンすれば抑えられるが、ラゲッジ壁下のロープフックを使うと、横方向への力も作用するので具合が悪い。

ということで、サドルを下げる手間をかけて、積んだ際の安定性を得るか、工具不要の手軽さを取る代わりに、固定方法を思案するかとい選択になるのだが、走行時の安全性を考えると、前者にしたほうが良いのではないかと思う。

自転車寸法図

第1形態 完成車状態  長さ1680mm 高さ1000mm 幅445mm

車載時に最大のネックとなるのが、サドルの高さ。全長はフレームサイズが変わってもそれほど大きく変化しないのがロードバイクの特徴。身長150cmぐらいのライダーのサイズでも、短くなるのは40mm程度だ。

第2形態 前輪を外してホルダーに固定 長さ1510mm 高さ965mm 幅445mm

前輪を外せば全長は170mm短くなるが、サドルの高さは35mmしか低くならない。サドルを外せば高さは760mmまで下がるのだが、ロードはミリ単位でセッティングを出すし、真直度を合わせるのも面倒なので、サドルはなるべく触りたくない。

第3形態 前後輪を外し、後輪はリヤエンドサポートで保持 長さ1230mm 高さ880mm 幅445mm

前後輪を外せば全長は450mm短くなるが、高さを下げるのは前ギヤ(46t)が限界を決めるので、120mmしか低くならない。サドルを外すとハンドルステムがいちばん高くなり、710mmとなるため、車載可能なモデルは増えそう。
 

第4形態 前後輪外して倒立 長さ1115mm 高さ870mm 幅445mm

このサイズなら、セダンのリヤシートにも積めてしまう。大きめのセダンなら、トランクにも入れることができるだろう。実際、僕の仲間は、ランエボやアテンザ、フィアット500にこうして積んでやってくる。自転車乗りは、運転が楽しいクルマ好きが多いのだ。

■著者と自転車のプロフィール

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ブリヂストンサイクルのNEO-COTというフレームを購入して、自分で組み上げた。92年発売のスチール製(CrMo鋼)だが、当時としては画期的なもので、ハイドロフォーミング製法で接合部の形状が最適化されている。それを見た僕は「スチールフレームの最高到達点」と直感して即購入。部品を交換しながら30年間、乗り続けている。その後、アルミフレームやカーボンフレームに押され、2021年を最後に絶版となってしまった。ホイール径は700C。


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メカニズムを得意とするジャーナリストの安藤 眞氏は、40年以上も自転車を趣味とし、カングーに愛車を積んでサイクリングを楽しんでいる。身長181cm。フレームを購入して自分で組み上げた写真のロードバイクはサドル高が1mあるから、この自転車が載るクルマなら、アナタの自転車も積載できる可能性が高いはず。


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著者プロフィール

安藤 眞 近影

安藤 眞

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェク…