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連載前口上――全国の自転車好き(と僕自身の)ために――
40年以上、自転車を趣味とする僕にとって、クルマ選びの重要な基準は「自転車が積めるかどうか」実際、最初に買った中古車以外は、すべてそれを基準に選んでいる(最初のクルマはルーフキャリヤに自転車を載せていた)。
ぶっちゃけ前後輪を外してしまえばセダンのリヤシートにも積載できるのだが、居住空間は汚したくないし、なるべく手間をかけずに積載したい。しかし、身長が181cmある僕のロードバイクは、サドル高が1mある。荷室高が1mを越えるクルマとなると、ミニバン以外に選択肢はなくなってしまう。
ということで、「このクルマなら積めそう」というモデルをピックアップして、どうすれば積めるかを試そうというのがこちらの企画。全国の自転車好きドライバーのクルマ選びの参考になれば幸いです!
■スバル・フォレスター X-BREAK
全長4640mm 全幅1815mm 全高1730mm 車両価格 3,080,000円
ロードバイクと親和性の高いスバル・ブランド
スバルとロードバイクの関係は深い。1996年からフランスの自転車用ホイールメーカー“マヴィック”と提携し、ツール・ド・フランスを始めとする世界最高峰のロードレースに、ニュートラルサポートカーを提供している。
プロロードレースは、パンクなど機材トラブルに備えて、チームごとにサポートカーを帯同させているが、少人数がチームから離れて“逃げ”を打つような展開になると、チームのサポートカーから離れてしまうこともある。そんなケースに対応できるよう、チームの垣根を越えて交換用のホイールやスペアバイクを提供するのが、ニュートラルサポートの役割だ。
トラブルに即座に対応できるよう、バイクはルーフキャリヤに搭載しており、実際にはルーフに手の届きやすいレヴォーグが使用されているが、本企画の趣旨は、車内に積めるかどうかの評価。そこでレヴォーグではなく、フォレスターに登場願った。
SUVはフロアが高めのため、室内積載は必ずしも有利ではないが?
車内を一瞥したところ、空間的には、前後輪を外して前後をエンドサポートで支持した状態で載りそうに見えたが、試してみたら、フォークエンドサポート(前輪)の土台とホイールハウスが当たってしまう。ラゲッジ壁面のえぐりを利用すれば当たらなくなるが、そうするには後にずらす必要があり、ハンドルがはみ出る。しかも、サドルも天井に微妙に当たる。
そこでフォークエンドサポートを外してみたが、まだ天井側が少し窮屈だ、となると、サドルを下げるしかないのだが、サドルを下げれば高さは100mmちょい稼げる。ならば後輪は着けたままでいけるのでは、と試してみたら、これがドンピシャだった。
フロントフォークエンドがデッキボードに直に当たるので、ウェスで養生する必要はあるものの、バイクの固定は後席のストライカーとラゲッジフックを使えばバッチリ。ハンドルとサドルが車体に密着するので、バンジーコードで引けば安定する。
しかし、この方法ではサドルを下げる工具が必要だし、誤差0.5mmくらいで元に戻すのは神経を遣う。そこで、サドルをいじらずに載せられる方法はないかと試したのが、前後輪を外して倒立させる作戦。これも「ほぼギリギリ」というレベルで積むことができた。
ただし、問題は固定方法。3点接地を利用して安定させるには、真っ直ぐ下向きにタイダウンするのが良いのだが、ちょうど良いアンカーがない。しかも、バイク側のロープをかけたい部分は駆動系まわりになるから、汚れていることが多いし、ワイヤーやチェーンをうまくかわす方法も考えなければならない。
ということで、サドルを下げる手間をかけて、積んだ際の安定性を得るか、工具不要の手軽さを取る代わりに、固定方法を思案するかとい選択になるのだが、走行時の安全性を考えると、前者にしたほうが良いのではないかと思う。
自転車寸法図
第1形態 完成車状態 長さ1680mm 高さ1000mm 幅445mm
第2形態 前輪を外してホルダーに固定 長さ1510mm 高さ965mm 幅445mm
第3形態 前後輪を外し、後輪はリヤエンドサポートで保持 長さ1230mm 高さ880mm 幅445mm
第4形態 前後輪外して倒立 長さ1115mm 高さ870mm 幅445mm
■著者と自転車のプロフィール
ブリヂストンサイクルのNEO-COTというフレームを購入して、自分で組み上げた。92年発売のスチール製(CrMo鋼)だが、当時としては画期的なもので、ハイドロフォーミング製法で接合部の形状が最適化されている。それを見た僕は「スチールフレームの最高到達点」と直感して即購入。部品を交換しながら30年間、乗り続けている。その後、アルミフレームやカーボンフレームに押され、2021年を最後に絶版となってしまった。ホイール径は700C。
メカニズムを得意とするジャーナリストの安藤 眞氏は、40年以上も自転車を趣味とし、カングーに愛車を積んでサイクリングを楽しんでいる。身長181cm。フレームを購入して自分で組み上げた写真のロードバイクはサドル高が1mあるから、この自転車が載るクルマなら、アナタの自転車も積載できる可能性が高いはず。