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キープコンセプトながらハイブリッドを追加
トヨタには隠し玉があった。エスティマをベースに5ナンバーサイズに縮小した3列シートミニバンの存在である。1992年、通称「子エスティマ」と呼ばれるエスティマ・ルシーダ/エミーナが登場。「親エスティマ」よりも安価で取り回ししやすく、トルクフルなディーゼルターボも用意されたことなどから、ルシーダ/エミーナはたちまち人気車となった。だが、それも長くは続かなかった。
主役に躍り出たのはホンダ。1994年にオデッセイが登場し、空前のヒットを呼ぶ。さらに1996年、ステップワゴンが登場しこちらも大ヒットした。この2台は、多人数乗車モデルの勢力図を一変させたと言っていい。ルシーダ/エミーナもこの2台に大きく市場を奪われた。
ホンダの2台はともにFFのアコードをベースにしていた。一般的なワンボックスカーは、1列目シート下にエンジンを搭載し後輪を駆動するキャブオーバー型を採用していた。1990年代に入りワンボックスカーは短いノーズを備えミニバン化していくが、中身はキャブオーバー型を踏襲していた。1991年登場の日産バネット・セレナ、1996年登場のトヨタ・タウンエースノア/ライトエースノアもそうだった。それらはFFベースのステップワゴンに惨敗してしまう。ここで「ミニバンはFFベース」という不文律ができ上がったと言っていい。
そのような背景もあり、10年というロングセラーモデルの初代エスティマだが、2000年に登場した2代目は当然のようにFF車ベースに大変革。ワンモーションのフォルムについては初代のイメージを踏襲した。2.4Lに加え、3L V6エンジンも搭載。より万人向けとなった2代目エスティマは、高い人気でユーザーに迎えられた。
その少し前、1997年にトヨタは世界初の量産ハイブリッドカー、プリウスを登場させ、その圧倒的な燃費性能は世界中に衝撃を与えた。ハイブリッド第2弾として選ばれたのが、意外にもエスティマだった。
2001年、エスティマハイブリッドが登場。新開発のハイブリッドシステムTHS-Cを搭載し、リア駆動用のモーターも備えた。車重が重くて燃費が悪い、と思われていたミニバンのイメージを払拭することにひと役買った。
ちなみに、この2代目エスティマをベースに開発されたのが、2002年に登場した初代アルファードである。
2006年に3代目エスティマが登場した。まさに2代目のキープコンセプトと言えるモデルで、伝統のワンモーションフォルムを採用。エンジンは2.4Lに加え、パワフルな3.5L V6も設定し、ハイブリッドはTHS-Ⅱに進化していた。3代目エスティマも根強い人気を保っていたが、2019年に生産終了してしまう。
そう、勢力図が変化していたのだ。トヨタにはすでにアルファード&ヴェルファイア、ノア&ヴォクシーという大人気ミニバンが揃っており、エスティマの役目は終わったと判断されたのだ。
エスティマ自体は一大ムーブメントとまではいかなかったものの、子エスティマの健闘もあって結果ロングライフに。そして10年ぶりにモデルチェンジして2代目と進化した。タマゴデザインのワンモーションフォルムはキープしつつ、特徴のひとつであったミッドシップはFFとなった。2.4Lエンジンに加え、3.5L V6も搭載。広大な室内スペースを確保しながら、乗用車ライクな乗り味を両立。当時は画期的だった話題のハイブリッドを追加したこともあり、爆発的なヒットを記録した。
ミニバン初のハイブリッド
リムジン仕様もあった!?
3代目登場、しかし一時代を築きながらも消滅の憂き目
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STYLEWAGON(スタイルワゴン)2024年9月号
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]