シリーズではなく「群」といて開発されてきたクラウン
トヨタでは4つのクラウンを「シリーズ」ではなく「クラウン群」と呼ぶ。「もっといいクルマづくり」を基本に、新プラットフォームYNGAを開発し、組織は「カンパニー制」を導入。その結果、クルマを単一開発だけに留めず、「群」として開発ができ、ユーザーニーズには「群戦略」で提供していくスタイルができたと自画自賛している。
つまり、多様化するニーズには、車両も多様化する必要があり、クラウンは4つのモデルを製作し、多様なニーズに応えていく。その大トリを務めるのが「クラウン・エステート」というわけだ。
開発の背景には「大人のアクティブキャビン」というワードがあり、既存のクラウンの価値や固定観念では発想・理解できない、新しいクラウンエステートが誕生している。
エステートのラインアップはE-Four・AWDのみ。最低地上高は165㎜〜175㎜で、アウディのオールトラックやメルセデスのオールテレインのような都市型クロスオーバーだ。エンジンはハイブリッドとプラグイン・ハイブリッドの2タイプ。FFをベースとするGA-Kプラットフォームを採用し、エステートの個性がぼやけない製品企画といえる。
2.5Lのガソリンエンジンは、A25A-FXS型でハイブリッド用に開発した41%の熱効率を持つ環境エンジン。このエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド(Zグレード)と外部充電が可能なPHEV(RSグレード)をラインアップしている。
ただし、HEVのエンジンはPHEVよりエンジン走行領域が広いため、出力を上げ、PHEVの177㎰に対して190㎰とし、トルクも219Nmに対し236Nmとなっている。
前後モーターはHEV、PHEVともに共通で、フロントが5NM型で134kW(182㎰)/270Nm、リアが4NM型40kW(54㎰)/121Nmとなっている。ただし、エステートハイブリッドのフロントモーターは、クロスオーバーやスポーツに搭載されるフロントモーター(3NM型)よりは高出力にしてある。その理由は車重が関係し、クラウン群の均質な走行性能とするための気遣いともいえるものだ。
今回は上位グレードの「RS」を試乗。PHEVは、86㎞までEV走行が可能で市街地はすべてEV走行だった。高速道路での合流ではエンジンが稼働したものの、巡航するとEV走行に切り替わった。静粛性は非常に高く、EVの魅力である反応の良さと力強さもあり、クラウンらしい品位を感じさせる。
そして幅広大径タイヤを装着しながらも、しなやかな乗り心地も見事だ。クラウンが持つ品格と質感の中では、特に後席の乗り心地に配慮した「リア・コンフォートモード」はエステートならではの装備だ。
これは4輪操舵機能のDRSと連続可変ダンパーのAVSを連動させ、さらにアクセルを踏み込む速度や量を連動させているため、車体のピッチングや揺れを抑える制御を行ない、フラットライドを実現している。
エクステリアでは顔が印象的。バンパー一体型のフロントグリルはボディと同色で、個性的でもあり独創的とも感じられる顔だ。さらに水平基調のデイタイムランプを採用したハンバーヘッドフェイスはトヨタの顔として印象付けられる。
エステートの特徴ともいえるラゲッジは、後席を倒すとトヨタ初の2mのフルフラットスペースができ、これまでのクラウンでは想像もできない、車中泊を快適にするキャビンが待っている。アウトドアな道具を満載し、上質な走行性能と品格を備えた大人のアクティブキャビン、それがクラウン・エステートなのだ。
























2.5L プラグインハイブリッド車 | 2.5L ハイブリッド車 | |
4WD(E-Four) | 4WD(E-Four) | |
ESTATE RS | ESTATE Z | |
車両型式•重量•性能 | ||
車両型式 | 6LA-AZSH39W-CNXZB | 6AA-AZSH38W-CNXGB |
車両重量(kg) | 2,080※1 | 1,890※1 |
車両総重量(kg) | 2,355※1 | 2,165※1 |
最小回転半径(m) | 5.5 | |
燃料消費率(km/L・WLTCモード)km/L | 20.0 | 20.3 |
寸法•定員 | ||
全長(mm) | 4930 | |
全幅(mm) | 1,880※2 | 1880 |
全高(mm) | 1625 | |
ホイールベース(mm) | 2850 | |
トレッドフロント/リヤ(mm) | 1,605/1,615 | |
最低地上高(mm) | 165 | 175 |
室内長/幅/高(mm) | 1,930/1,540/1,200※3 | |
乗車定員(名) | 5 | |
エンジン | ||
型式 | A25A-FXS | |
総排気量(L) | 2.487 | |
種類 | 直列4気筒 | |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン | |
最高出力〈ネット〉kW(PS)/r.p.m. | 130(177)/6,000 | 140(190)/6,000 |
最大トルク〈ネット〉 N•m(kgf•m)/r.p.m. | 219(22.3)/3,600 | 236(24.1)/4,300〜4,500 |
燃料タンク容量(L) | 55 | |
フロントモーター | ||
型式 | 5NM | |
最高出力 kW(PS) | 134(182) | |
最大トルク N•m(kgf•m) | 270(27.5) | |
リヤモーター | ||
型式 | 4NM | |
最高出力 kW(PS) | 40(54) | |
最大トルク N•m(kgf•m) | 121(12.3) | |
トランスミッション | 電気式無段変速機 | |
車両価格 | 810万円 | 635万円 |
※2. 充電ポート(充電リッド)を全開にした状態の最大値は、2,130mmとなります(社内測定値)。
※3. パノラマルーフを装着した場合、室内高は1,150mmとなります。
STYLE WAGON(スタイルワゴン) 2025年5月号 No.353より
