沖電気:EV用パワー半導体向け「劣化・寿命連続モニタリング試験サービス」開始

劣化・寿命連続モニタリング試験の様子

 OKIグループで信頼性評価と環境保全の技術サービスを展開するOKIエンジニアリングは、電気自動車(EV)用の電源装置などに搭載され、安全性・信頼性確保のために高い精度での寿命予測が求められるパワー半導体(※1)を対象にした「劣化・寿命連続モニタリング試験サービス」を開始した。独自に構築した全自動ログシステムにより「高温逆バイアス試験(※2)」時の劣化・故障を常時モニタリングすることで、寿命予測精度を大きく向上させるとともに、ワイドギャップパワー半導体(※3)への対応も可能とした。パワー半導体メーカー、高品質なパワー半導体を自社製品に採用したい装置メーカーを顧客として7月27日からサービスを開始し、年間5,000万円の売り上げを目指す。

 パワー半導体の中でも特に、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などを使用したワイドギャップパワー半導体は、従来のシリコン(Si)パワー半導体より高電圧・高温・高速動作が可能で、高出力省エネ電源用として電気自動車、産業機器、鉄道車両、一般家電分野などで採用が進んでおり、安全性・信頼性確保のための寿命予測の精度向上ニーズが高まっている。寿命予測は「高温逆バイアス試験」により行われるが、従来は、試験回路基板に複数のパワー半導体を搭載し、所定の時間ごとに試験を中断して、冷却後に専用テスターで電気的特性を測定して特性劣化や故障を判定していた。しかし、この方法では所定の時間内に劣化・故障が発生した個数は分かっても、個体別の劣化経過や故障時刻を正確に把握することはできず、精度の高い寿命予測は困難だった。

 新サービスは、「高温逆バイアス試験」と、データロガー、試験回路基板、故障検出装置(リーク電流測定器)を接続した独自開発の「全自動ログシステム」を組み合わせることにより、個体別に劣化経過と故障発生の常時モニタリングを可能とした。1,000Vまでの電圧源に対応しており、ワイドギャップパワー半導体の試験も可能。OEGが培ってきた長期信頼性試験のノウハウを活用して、適用温度に耐えられる試験回路基板や、試験対象のパワー半導体の特性にあった故障検出装置を設計・自作し、複数のパワー半導体のうちの1個が故障しても残りの半導体の試験に影響を与えない保護回路も付加した。これにより、所定の時間ごとに試験を中断する必要がなくなり、試験期間全体を18%短縮する効果もあげている。

販売計画

標準価格  個別見積り
販売目標  年間5,000万円
サービス提供開始時期  2021年7月27日

※1:パワー半導体
高い電圧、大きな電流に対しても壊れないよう、通常の半導体とは違った構造を持った半導体。主に電圧・周波数を変える、直流を交流、交流を直流に変えるなど、電源装置に使用される。
※2:高温逆バイアス試験(HTRB:High Temperature Reverse Bias試験)
最大定格温度で、ドレイン・ソース間に高電圧の逆バイアスを印加し、ゲート酸化膜やPN接合が破壊されないことを確認する信頼性試験のこと。
※3:ワイドギャップパワー半導体Si半導体に比べ、より広いバンドギャップを持つ、GaNやSiCなどを使った化合物半導体。Si半導体から置き換えることで、電子機器のさらなる小型化や高効率化を実現できる。近年、SiCのウェーハ基板は半導体材料としての品質が高まり、ウェーハの大口径化、大電流化、低価格化が進んでおり、多くの機器に採用されはじめている。

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