エンジンとモーターはどのように折り合うか——ハイブリッドの協調制御[内燃機関超基礎講座]

内燃エンジンと電気モーターを搭載するハイブリッド車、そのシステムは複雑だが、操作系は通常の自動車と変わらない。ドライバーはひとつのアクセルペダルでふたつの動力源をコントロールすることができる。それこそが協調制御のなせるワザなのだ。
TEXT:高橋一平(TAKAHASHI Ippey)

エンジンと電気モーター、ふたつの動力が混在するハイブリッドシステムは、協調制御なくして成立しない。ドライバーがモニタリングしながらコントロールすることが不可能なほど多くの制御要素が存在している。そこで電子制御を用いるわけだが、ハイブリッドシステムにおいては、すべてにおいて「…しながら」という複数要素の制御が必要だ。

例えば、加速時にはスロットル操作をしながらモーター電流を制御。制動時には回生発電を行ないながら、ジェネレーターの発電抵抗によって発生する制動力で、ブレーキが効き過ぎないよう、ドライバーが踏んでいる油圧式ブレーキの油圧を操作、さらに速度に応じたトランスミッションも制御も行なわれている。これら「……しながら」という要件の成立に必要不可欠な要素こそが、協調制御だ。仮にエンジン走行中に、突然モーターの駆動力が加わったらドライバーにとって許容し難い違和感となることは間違いない。このようなことが起きないよう、電子制御スロットルを絞りながら、モーターに電流を加えるという制御を行なっている。

日産のIntelligent Dual Clutch Control

3.5ℓ・V型6気筒エンジンに、最大出力50kWのモーターを組み合わせる。本来トルクコンバーターが収まる部分にモーターを置いたことで、外見、寸法・重量ともに一般的なV6エンジン+ATとほとんど変わりのないものとなっている。

エンジン/モーター間と、トランスミッション出力部の2カ所にクラッチを設けた、1モーター、2クラッチのシステム。トランスミッションは7速のステップATだが、トルクコンバーターがモーターに置き換えられるかたちとなっており、スターティングデバイスとしてモーターを利用する。これによりモーター追加のために新たなスペースを用意する必要がなくなった同時に、ダイレクト感あふれる走行を実現。高度なクラッチ制御により、高速走行中のエンジン始動・停止も可能となっている。バッテリーは346V/1.4kWhのリチウムイオン。

EV走行から追い越し加速に入る際の加速度とエンジン回転の変遷。点線はコンベンショナルなエンジン車。HEVでは加速度が瞬時に立ち上がり、エンジン+モーターの加速が持続する。下のグラフでは、シフトの素早さと、トルクの乱れをモーターで抑えながらエンジンを始動する様子がうかがえる。
エンジン始動を伴うダウンシフト時の制御。EV走行時からアクセルを大きく踏み込んでダウンシフトしながら加速する時の様子。始動したエンジンに協調するかたちで、モーターのトルクが素早い変化を繰り返していることがわかる。

トヨタのTHS-II

クラウン・ハイブリッドに搭載される、FR用ハイブリッドシステム。プリウスに搭載されるTHS-IIシステムを縦置き配置に改めたもので、その動作もほぼ同じだ。写真左側にエンジンが接続されるかたちとなる。

状況に応じてシリーズ方式とパラレル方式のふたつを使い分けるというという独自性溢れるハイブリッドシステム。一般的な変速機構を持たず、プラネタリーギヤの作用を巧みに利用することで、さまざまな動作モードを作り出す。シリーズ方式として動作する時は、エンジンでMG1(モータージェネレーター)を駆動することで発電し、その電力でMG2を走行用に使用。パラレル方式としての動作時はエンジンとMG2の駆動力を混合する。他の多くのシステムと同様、エンジンを停止して、バッテリーとモーターのみで走行するEV走行も可能だ。

スバルのハイブリッド・リニアトロニック

リニアトロニックの特徴的なレイアウトはそのままに、プライマリープーリーの後方にモーター(モータージェネレーター)を配置。CVTより下流の駆動系を切り離す走行用クラッチの追加により、停止時のエンジンを用いた発電も可能となっている。

ボクサーエンジン用としてスバルが独自開発したCVT、リニアトロニックをベースにモーターを追加したハイブリッドシステム。走行用に用いられるモーターの出力は10kWというもので、モーターのアシストでボクサーらしい力強い加速感を演出するという、ドライブフィール重視の制御が行なわれる。既存のメカニズムとレイアウトを最大限に利用することで、ハイブリッド化のための追加要素を最小限に抑えた合理的な設計は、同システムを特徴づける要素のひとつで、コンベンショナルモデルと同様にシンメトリカル4WDも装備している。

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