東レより、3Dプリンタ向け真球ポリアミド6粒子「トレパールPA6」が販売開始

東レは、今般、高強度で高耐熱性、高い表面平滑性を有する、パウダーベッド方式3Dプリンタ※1に対応した真球ポリアミド粒子「トレパールPA6」の量産体制を確立し、販売を開始したことを発表した。現有設備は2025年度にフル稼働の見通しであり、さらなる増能力を含め事業拡大が図られている。

パウダーベッド方式3Dプリンタは、原料に金属粒子や樹脂粒子を使用し、高い寸法精度で効率良く造形できることが特徴となっている。金属は特に高強度が求められる用途に用いられる一方、樹脂は軽量性やコスト面で優れることから、産業用途に広く使用されているが、現在市場で主流となっているポリアミド12を含む樹脂粒子は不定形状であり、機能評価のための試作品や実用部品に使用するには、造形物表面を研磨などの後加工で処理することが必要で、コストやリードタイムに課題が残る。

そこで東レは、使用現場の「面粗度※2を改善してほしい」「より厳しい条件下で強度や耐熱性の高い素材を使用したい」というニーズに応えるため、独自のポリアミド粒子化技術※3を高融点なポリアミド6に適用させ、世界初の真球ポリアミド6粒子となる「トレパールPA6」を創出した。

「トレパールPA6」は高強度や高耐熱、高い表面平滑性を有しており、複雑で精密な形状の造形物を3Dプリンティングすることができるほか、研磨などの後加工工程も削減させることができる。また、粒子が真球のため、強化剤のガラスファイバーを配合しても3Dプリンティングに要求される流動性を確保でき、優れた表面平滑性を維持しながら、高い剛性、強度や耐熱性を両立した造形を実現する。

東レからは、本製品の特長を活かし、強度や耐熱性、精密性が要求される自動車エンジン部品やハンドツールなどの用途を中心に、まずは試作品作製向けへの使用が提案されている。将来的には、実用部品向けに3Dプリンタ市場への展開が目指される。

なお、本製品は、3Dプリンタ事業を展開するアスペクト社の3Dプリンタ「RaFaEl/AM-E3(300HT、550HT)」において適合認証を既に取得している。

東レは、3Dプリンタ向け樹脂素材として、2017年に発売したPPS樹脂パウダー「トレミルPPS」に本製品を加え、さらなるラインナップの拡充を進める。また、独自の粒子化技術や粒径制御を東レで展開する他ポリアミドにも適用することで、拡大する3Dプリンタ分野において新たな価値提供を推進する。

■「トレパールPA6」を使用した3Dプリンタ造形物(造形物製作:アスペクト)

インテークマニホールド
サイズ:185mm×105mm×85mm)

※1 パウダーベッド方式3Dプリンタ
3Dプリンタの中で最も主流な方式の1つで、主に工業用に用いられる。金属粒子や樹脂粒子を敷き詰め、熱源となるレーザで造形する部分を溶融・凝固させることを繰り返し、造形する。

※2 面粗度(めんそど)
造形物表面には、高さや深さ、間隔の異なる山や谷が連続した複雑な起伏が生じる。この微小なものを「表面粗さ・面粗度」と呼び、表面粗さ・面粗度は加工品の精密さだけでなく、表面の手触り、シール性の高さ、塗装性能などにも影響することから、造形物を構成する大きな要素になっている。

※3 独自のポリアミド粒子化技術
ポリアミドの重合技術をベースに研究を重ね、モノマーからポリアミドを重合すると同時に真球粒子を作製する新技術。各種ポリアミド(PA6、66、12など)に適用が可能。

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