三井化学、生成AIとIBM Watsonの融合による実用検証を開始

三井化学と日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)は生成AI(ジェネレーティブAI)のひとつであるGPT(Generative Pre-trained Transformer)とIBMのAIであるIBM Watsonを融合することで、三井化学製品の新規用途探索の高精度化と高速化の実用検証を開始した。

実用検証の背景

三井化学は2022年6月からIBM Watsonによる新規用途探索の全社展開をスタートさせている。これまでに20以上の事業部門がIBM Watsonを実用し、100以上の新規用途を発見。今年度は研究開発やコーポレート部門も含め、更に実用部門が拡大される。事業部門の一つのテーマにつき500万件以上の特許・ニュース・SNSといった外部のビッグデータをIBM Watsonへデータ投入し、さらに三井化学固有の辞書も構築している。

長年の豊富な経験や専門知識を持った営業・事業領域の現場のスペシャリストが、IBM Watsonを活用して効率的にビッグデータを分析すること(下図ご参照)で、先入観や既知の知見にとらわれない新規用途の発見が実現された。例えばSNSデータ分析では、「ある地方電鉄の車中で、カビ臭い」という投稿が多いことを見つけ出し、従来の営業手法では思いつかなかった電車内の防カビ製品の販売活動へと繋げている。

このようにIBM Watsonの新規用途探索において成果は出ているものの、まだ新規用途の発見にはある程度の時間が掛かるという課題が残る。この課題に対し先端デジタル技術の生成AIのひとつであるGPTを活用することで、特許やニュース、SNSといったテキストデータから、三井化学が注目すべき新規用途を生成・創出。さらにその注目すべきとする根拠や外部環境要因を明らかにして、新規用途探索の精度とスピードをアップさせることで、新規用途の発見を激増させる。

実用検証の概要

そこで三井化学と日本IBMは、GPTのひとつであるMircosoftのAzure OpenAI等を活用した実用検証を開始した。新規用途探索という目的に合わせて、GPTに対する指示を洗練させ、三井化学が注目すべき新規用途候補を特定・抽出する。さらにこの結果をIBM Watsonへ適用してキーワードを絞り込んで分析することで、まだWatson実用に慣れていないユーザーでも、短時間で新規用途を発見することができる。また、SNS動画も含めたマルチモーダル化を行い、更に、これまでIBM Watsonを活用して発見してきた新規用途の情報をGPTへフィードバックすることで、新規用途創出の自動化の実現を目指す。

三井化学は、今後大きく発展する生成AIとIBM Watsonを活用し、更に、Sales Force Automation(SFA)/Marketing Automation (MA)、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)やロボティクスと連動させ、事業とR&Dといった異なるステークホルダー間の情報を融合させることで、市場開発から製品開発までのスピード加速を目指す。本取り組みで、三井化学における事業領域のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進、製品のトップライン(売り上げ)やマーケットシェアの拡大を目指す。

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