三菱電機、台湾ITRIが開発したCO₂回収装置を用いてCO₂回収技術の実証試験を開始

三菱電機は、工業技術研究院(台湾、以下、ITRI※1)が開発したCO₂回収装置を三菱電機の先端技術総合研究所(兵庫県尼崎市)に設置し、排ガスからCO₂を回収する実証試験を6月9日に開始することを発表した。

三菱電機とITRIは、グリーンな社会への変革に向けた研究協力に関する基本協定を2024年4月に締結し、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向け、CCU※2技術の研究開発に取り組んでいる。

今回、三菱電機は、ITRIが開発したCO2回収装置を先端技術総合研究所の蒸気発生ボイラーに接続し、蒸気発生ボイラーの排ガスに含まれるCO2を回収する。このCO2回収装置は「固体吸着方式」が採用されており、固体吸着材にCO2を吸着させた後に、固体吸着材を加熱してCO2を脱離することで回収し、次の工程(還元など)へ進む。排ガスからのCO2回収においては、従来、アミン※3系の水溶液などにCO2を吸収させる「液吸収方式」が用いられてきたが、CO2回収時の加熱エネルギーの多くが水溶液の蒸発に使用されてしまい、エネルギー損失が発生することが課題となっていた。

今回、採用された「固体吸着方式」では、蒸発によるエネルギー損失は発生せず、CO2回収に必要なエネルギーを低減できる。また、三菱電機が空調冷熱システムや産業システムなどの幅広い分野で長年培ってきた、高度なシステム設計・制御技術やエネルギーマネージメント技術を活かし、よりエネルギー効率の高いCO2回収技術の確立が目指される。

三菱電機とITRIは、持続可能な未来を創るためにこの実証試験の成果を活用し、CO2の回収から利用まで一貫して実現するCCUシステムを早期に社会実装していくことを目指して研究開発を加速していく。さらに、三菱電機が取り組むE&Fソリューション※4と組み合わせて、カーボンニュートラルの実現に向けた工場などにおけるCO2排出量の削減も推進される。

CCUシステムとCO2回収技術の実証試験の概要

【注釈】

  1. ITRI:
    Industrial Technology Research Institute
  2. CCU:
    Carbon dioxide Capture and Utilization。発電所や工場などから排出されたCO2を分離・回収し、資源として燃料や化学製品の製造に有効利用する
  3. アミン:
    窒素原子を中心として構成されている化学物質で、CO2をよく吸収し、加熱や減圧によって放出することが可能
  4. E&Fソリューション:
    Energy & Facility(エネルギー&ファシリティ)ソリューションの略称

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