【海外技術情報】GM:アルティウムドライブを構成する3タイプのモーターを初公開

The motors that will power GM’s Ultium-based EVs were built as a scalable family, sharing design principles as well as similar tooling and manufacturing strategies. Pictured are the stators of all three motors.
GMの次世代EVが搭載する『アルティウムドライブ』を構成する3タイプのモーターが、同社が開発しているパワーエレクトロニクスと共に世界初公開された。本稿では、その概要をお伝えしたい。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

GMの『アルティウムドライブ』とは?

 GMのマーク・ロイス社長は、ミシガン州マキナック島で開催されたマキナック政策会議にて、同社の次世代EVが搭載する『アルティウムドライブ』を構成する3タイプのモーターを世界初公開した。

 本題に入る前に、『アルティウムドライブ』について復習しておこう。『アルティウムドライブ』は、電気モーターとシングルスピードトランスミッションとを組み合わせて、『アルティウムバッテリーセル』により生み出された電力により駆動される。この『アルティウムバッテリーセル』はホンダ向け次世代EV2車種にも搭載され、共同開発されることも発表されている。

 そして『アルティウムドライブ』はファミリーとして、高性能モデルとオフロードモデルとを含めて、前輪駆動、後輪駆動だけでなく、全輪駆動にも適用できるとされ、5つのドライブユニットが発表されている。全輪駆動アシスト・前輪駆動・後輪駆動・トラック用前輪駆動またはトラック用後輪駆動・トラック用全輪駆動である。それを構成するモーターは3種類。全輪駆動アシストモーター、一次前輪駆動モーター、一次前輪or後輪駆動モーターである。

『アルティウムドライブ』の概要については、過去の当コラムで説明しているので、そちらを参照して欲しい。https://car.motor-fan.jp/tech/10017133

GMの『アルティウムドライブ』を構成する3種類のモーターを世界初公開

 さて、今回発表されたのは、その『アルティウムドライブ』を構成する3種類のモーター。180kWの一次前輪駆動モーター、255 kWの一次前輪および後輪駆動モーター、それに62kWの全輪駆動アシストモーターだ。

180kWの永久磁石EVモーターは前輪駆動および全輪駆動に使用される
255kWの永久磁石EVモーターは全輪駆動および後輪駆動に使用される。
62kW誘導EVモーターは全輪駆動のアシストに使用される。

 これら3種類のモーターはスケーラブルなファミリーとして構築されており、またモジュラー設計とされている。だから基本的な構造は共有されている。

 デトロイト地域会議所が主催した会議にてロイス氏は以下のように述べた。
「20年に渡る電気駆動システム開発と100年以上もの量産技術を融合させることで、当社は素早くEVに移行できるようになりました。開発範囲はハードウェアとソフトウェアの両方を網羅しており、将来の競争において大きな優位性を得ることができるでしょう」

 180kWモーターと255kWモーターは、重希土類材料への依存を最小限に抑えることを目的として設計された、永久磁石モーターである。62kWモーターは誘導モーターであり、いずれも優れたトルクと出力密度を提供して、高性能車から作業用トラックまで、幅広い車種への搭載が可能である。1台のEV車両は、最大で3つの電気モーターを搭載できる。2022年モデルのHUMMER EVの最上級モデルでは、3つの255 kWモーターを搭載する。これは最高出力1,000hpに相当する。

Ultium Driveソフトウェア開発

 今回の発表では、これまで触れられてこなかったソフトウェア開発にも言及していた。GMは『アルティウムドライブ』に合わせて、モーターコントローラー用のソフトウェアも新開発した。これが最小限のコンポーネントセットで多様な車両に搭載するための鍵となる。

 その開発拠点は、ミシガン州ウォレンのグローバルテクニカルセンター、ミシガン州ポンティアックにあるグローバル推進システムである。そしてミルフォード実験場は、ソフトウェア開発に携わる約11,000人のGM製品開発チームメンバーの一部である。このソフトウェア開発チームメンバーの数は、今後さらに増強される。

 チームは、コンピューター支援および仮想エンジニアリングを使用して、迅速、安全、かつ費用効果の高い方法へとシフトしている。人工知能と機械学習は、『HUMMER EV』のようなモータートルクを分散する効率的な方法を決定するのに役立ち、またオフロード対応車両が舗装路においても快適に運転できるようにする。

 GMのEVモーターの背後にあるソフトウェアは、多くのアプリケーションで再利用でき、市場投入までの時間を短縮し、将来のEV拡張の基盤を提供する。

パワーエレクトロニクスはドライブユニットに直接統合され、信頼性を高めながら、コスト、重量、製造の複雑さを軽減する。

 GMはまた、パワーインバーターモジュールやインバーターといった、主要なパワーエレクトロニクスコンポーネントのソフトウェアを設計した。これがバッテリーからのDC電圧をAC電圧に変換して、モーターに電力を供給する。『HUMMER EV』の優れた0〜60mph加速は、主に、モーター制御、パワーエレクトロニクスに加えて、ソフトウェアの恩恵によるものである。

 現行のGM製EVでは、インバーターおよび付属のパワーモジュール、オンボード充電モジュールなどはすべてドライブユニットの外部に搭載されている。これを『アルティウムドライブ』ベースの車両ではドライブユニットに直接統合させることで、コストと製造の複雑さを軽減する。一部のパワーエレクトロニクス製品は、現行のGM同等製品よりも重量と体積が50%小さくなり、それでいて機能は25%増しとなる。

『アルティウムドライブ』を搭載したGMのまったく新しいEVモーターと統合パワーエレクトロニクスは、今年後半に2022年『HUMMER EV』でデビューする予定である。

著者プロフィール

川島礼二郎 近影

川島礼二郎

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系…