~グリーンイノベーション基金を活用~

IHI:アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の社会実装に向けた実証事業を開始

日本郵船、ジャパンエンジンコーポレーション、IHI原動機、日本シップヤードは、グリーンイノベーション基金事業(注1)の一環である新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業の公募採択を受け、協力機関である日本海事協会を合わせた5者で、2021年12月より「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発」を開始する予定。アンモニアを燃料とすることによって、航海中の温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG) 排出量を従来よりも大幅に削減することが可能となり、2030年よりも早期の社会実装を目指すとともに、将来的には船のゼロエミッション化実現を目標に取り組みを進める。

目標

 他国に先駆けて国際競争力のあるアンモニア燃料船の開発を実現することおよび日本が主導するアンモニア燃料船に係る安全ガイドライン・法規制等の整備に貢献することが、5者の最大の目標である。目標達成のため、日本国内の舶用エンジンメーカー、造船所、船級協会、海運会社が一体となり、研究開発段階から、エンジン開発、本船建造、商業化まで一貫して連携する。

背景

 2016年のパリ協定発効を機に、脱炭素化の世界的な機運が高まっている。日本国政府も2050 年までにGHGの排出を全体としてゼロにし、カーボンニュートラルを目指すと宣言するなど、脱炭素社会の実現に向けたエネルギーシフトの動きがいよいよ加速しつつある。海運分野でもGHGの排出削減が喫緊の課題となっており、船舶用燃料を従来の重油から液化天然ガス(LNG)へ転換、さらに水素やアンモニアといった次世代のゼロエミッション燃料普及に向けて研究開発が進んでいる。アンモニアは燃焼しても二酸化炭素(CO₂)を排出しないため、地球温暖化対策に貢献する次世代燃料として期待されており、さらにアンモニアの原料となる水素にCO₂フリー水素(注2)を活用することで燃料のライフサイクルまで考慮したゼロエミッション化の実現が可能と言われている。

 このような背景のもと、経済産業省は2050年までのカーボンニュートラルに向けてグリーンイノベーション基金事業を開始し、その一環であるNEDO助成事業にアンモニアを活用したエンジン搭載船舶の開発について応募、今回採択された。

実証事業の概要及び参加各社の役割

 今回、アンモニア燃料タグボートの開発・運航とアンモニア燃料アンモニア輸送船の開発・運航が採択され、それぞれNEDOの助成を受けて実証事業を実施する。

(1) アンモニア燃料タグボート(A-Tug: Ammonia-fueled Tug Boat)の開発・運航

 アンモニア燃料は、着火しにくい難燃性がボトルネックになるため、本プロジェクトではパイロット燃料として少量の燃料油を使用する想定をしている。2024年度の就航をターゲットとして、アンモニア燃料混焼率80%以上を達成することによるGHG排出量削減を目指す。将来的には、バイオ燃料等をパイロット燃料として使用することによってGHG排出総量ゼロを達成することを視野に入れて混焼率向上に取組み、実証運航にて安定運航を確認していく。

・日本郵船
プロジェクト統括、船舶の設計、機器配置の検討・搭載、法規対応
・IHI原動機
アンモニア燃料4ストロークエンジン(注3)の開発
・日本海事協会
アンモニア燃料タグボートの安全性評価
A-Tugのイメージ

(2) アンモニア燃料アンモニア輸送船(AFAGC: Ammonia-fueled Ammonia Gas Carrier)の開発・運航

 2026年度の就航をターゲットとして、貨物としてアンモニアを運搬し、航海中はその貨物および貨物から気化するアンモニアガスを燃料として動くコンセプトのアンモニア燃料アンモニア輸送船の開発・運航を目指す。

 船舶を動かす主機においてアンモニア燃料混焼率最大95%、発電機を動かす補機においてアンモニア燃料混焼率80%以上を達成することによるGHG排出量削減を狙う。

・日本郵船
プロジェクト統括、船舶の設計・法規対応
・ジャパンエンジンコーポレーション
アンモニア燃料2ストロークエンジン(主機)(注4)の開発
・IHI原動機
アンモニア燃料4ストロークエンジン(補機)の開発
・日本シップヤード
船体開発・本船の建造手法の検討
・日本海事協会
アンモニアを主燃料とするアンモニア運搬船の安全性評価

期間およびスケジュール

 期間:2021年12月~2028年3月31日(予定)

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