「ストレッチしても5ナンバー枠に収まった全長」バブルが生み出した摩訶不思議な1台!コロナスーパールーミー

室内長は、なんと先代センチュリーを超えている

限定500台、ホイールベースを210mm延長

上からクラウン→マークII→コロナ→カローラ…と、トヨタ車ヒエラルキーの一翼を担ってきたコロナ。会社の役職に置き換えると、恐らく堅実な係長クラスになるのだろうが、バブル景気で日本が浮ついていた9代目T170系の時代、突如として不可思議なモデルが追加された。それが1990年に登場したコロナスーパールーミーだ。

Bピラー部を210mm延長した500台の限定モデル。その最大の特徴となるのがBピラーのストレッチ部で、さすがはトヨタクオリティ。どこで継いでるのか全く分からず、室内側はドアトリムと同じ素材で仕上げられる。また、サイドビューが引き締まって見えるよう、ウインドウにはオーナーがスモークフィルムを貼っている。

当時、すでに国産車のストレッチリムジンは、Y31セドリック/グロリアにロイヤルラウンジ(なんとホイールベース+600mm!)やブロアムL(同+150mm)が存在し、後にはプラウディアのストレッチ版と言えるディグニティ(同+285mm)なども登場してきたが、どれも3.0Lクラスの高級セダンであって、2.0Lクラスの大衆車=コロナがベースのスーパールーミーは、5ナンバー枠に収まったボディサイズを含めて極めて異色の存在だった。

「実は上が白、下がシルバーのボディ色はスーパールーミー専用。オールペンされちゃったクルマも多いですけど、ノーマルだったら一発で分かりますよ!」とはオーナーの平間さん。なるほど、クルマが変態的ならば、オーナーも変態的というわけである。

外装を舐め回すようにチェックしたら、次は室内だ。ステアリングやペダルが交換されているが、ダッシュボード周りの眺めは素のコロナと全く同じ。スーパールーミー的な演出は見当たらない。

気になるのは、何と言っても後席の居住性だ。おもむろにリヤドアを開けて座ってみると、ホイールベース+210mmの恩恵は凄まじく、足元が信じられないくらい広い。それも、余裕で足を組めるなどという生易しいレベルではなく、フロアに体育座りして乗っていられそうなほど…と表現すれば、広さをイメージしてもらえるだろうか?

さらに、前席のヘッドレストを抜いてフルリクライニングさせると、見ての通りフラット化も可能! 210mmストレッチの恩恵は大きすぎる。また、取材車両には装着されていなかったが、センターアームレストの上に装着するテレビもオプション設定されていた。

いやはや、後席の居住性は想像を遥かに超えていた。さらに調べてみたところ、コロナスーパールーミーの室内長2120mmという数値は、同じ時代の10系セルシオの2010mmを10cm以上も上回るどころか、先代センチュリーの2045mmさえ大きく凌ぎ、初代レクサスLSの2150mmに肉迫するという驚愕の事実まで発覚したのだ!

試乗は高速がメイン。カタログ値125psの3S-FEは、数値以上の力強さを感じさせながら加速していく。100km/h巡航時のエンジン回転数は2400rpm。2.0L NAの4速AT車としてはかなり低めに抑えられ、静粛性にも燃費にも大きく貢献してくれている。

が、なにより感心したのは、ロングホイールベース化が効いてるであろう直進安定性の高さと上質な乗り心地に尽きる。そこに大衆車コロナの面影はなく、目をつむればまるでマークII…いや、クラウンに乗ってるかのようなフィーリングを味わえると言っても過言ではない。また、ストレッチに伴うボディ剛性の低下も皆無。路面のうねりやギャップ通過時に、ヨレやねじれを感じることがなかったことを付け加えておこう。

ただでさえクオリティが高いトヨタ車なのに、その上、開発費をふんだんにかけられた時代に誕生したコロナスーパールーミー。変態グルマでありながら、実は至って真面目に作られているというギャップがたまらないのだ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:ST171改
全長×全幅×全高:4690×1690×1370mm
ホイールベース:2735mm
トレッド(F/R):1470/1440mm
車両重量:1190kg
エンジン型式:3S-FE
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ86.0×86.0mm
排気量:1998cc 圧縮比:9.3:1
最高出力:125ps/5600rpm
最大トルク:17.2kgm/4400rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式(F/R):ストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ(F/R):185/65R14

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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