継ぎ足し給油はクルマにも悪影響が

オートストップ後の継ぎ足し給油が禁止されている第一の理由は、給油口から溢れ出した燃料による火災を防止するためだ。しかし、そのリスクは外部への燃料の漏洩だけにとどまらない。
もう一つの深刻な問題は、クルマの燃料供給システムに異常を生じさせる恐れがある点だ。
燃料タンクには、温度変化による内圧の上昇を逃がす役割と、タンク内で気化したガソリンをエンジンへ導いて燃焼させるための経路が備わっており、気化したガソリン蒸気はその配管途中にある「チャコールキャニスター」で一時的に貯蔵される。
オートストップを無視して給油を続けると、本来はガソリン蒸気のみが通るチャコールキャニスターに液体のガソリンが直接流れ込んでしまい、内部に充填されている活性炭が目詰まりを起こして本来の機能を失う恐れがある。
さらに、チャコールキャニスターへ液体ガソリンが流入すると、エンジンへ供給されるガソリン蒸気の濃度も高まることで、燃料供給過多の状態となりやすく、加速不良やアイドリングの不安定化といった不具合が発生しやすい。
それ以外にも、処理しきれないガソリン蒸気が外部へ漏れ出し、車内までガソリン臭が漂うようになるほか、メーターに警告灯が点灯する場合もある。チャコールキャニスターは環境保護の観点からも重要な部品であり、警告灯が点灯したままの状態では保安基準に適合しないため車検にも通らない。
多くの場合、液体のガソリンが流入して飽和状態となったチャコールキャニスターは交換するしかなく、作業工賃まで含めると数万円の修理費用が生じる。
「溢れなければ大丈夫」は間違い

ガソリンは温度変化によって体積が増減することも忘れてはならない。一般的にガソリンは油温が1℃上がるごとに体積が0.135%増加するため、仮に給油量が50リットルで油温が10℃上昇したとすると、体積が0.675リットル増えることになる。
昼夜の気温差はもちろん、とくに夏場は地下のタンクに低温で貯蔵されていた燃料が、給油後に外気温などの熱にさらされることで体積を大きく増やす。
たとえ給油時は溢れない程度の量だったとしても時間差で体積を増やし、タンク内で行き場を失ったガソリンがチャコールキャニスターに流入する恐れもある。オートストップ後の継ぎ足し給油は、そのリスクを高めることにほかならない。
たとえ一度の過剰な給油で不具合は出なくとも、それが繰り返されることでチャコールキャニスターの劣化は着実に進行していくだろう。
ガソリンの入れすぎはクルマの故障リスクを高める

セルフガソリンスタンドの注意書きなどには「継ぎ足し給油をしないこと」と明記されている。
また、クルマの取扱説明書にも「給油ノズルの自動停止後に追加補給をすると、気温変化などにより燃料が溢れ、火災につながる恐れがあります」といった旨が記載されている。
給油機のオートストップ機能は、給油中の漏洩事故と火災事故を防ぐだけでなく、燃料タンク内に必要な空間を確保するためにも重要な機能と言えるだろう。
給油回数を減らす目的での過剰給油や、支払額をキリのよい数字にしたいといった目的で継ぎ足し給油を行うことは、リターンに見合わない大きなリスクを抱える行為だ。