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自衛隊新戦力図鑑「海のゲリラ戦」を構想する海兵隊
4月16日公開の動画で紹介されたのは、以前から「LSM(Medium Landing Ship:中型揚陸艦)」の名で計画されていたもの。イラク戦争で戦死した女性海兵隊員、ミーガン・マクラング少佐にちなみ、マクラング級の名が予定されている。現在、アメリカ海軍には「強襲揚陸艦」や「ドック型揚陸艦」など、大型揚陸艦が存在しているが、マクラング級は「中型」の名が示す通り一回りサイズの小さな艦となっている。なぜか?

マクラング級LSM建造の背景には、海兵隊の新しい作戦構想「遠征前進基地作戦(EABO)」がある。この構想は、大型艦で一挙に大規模な戦力を上陸させ、島嶼を占領するのではなく、小規模に分散した戦力を、多数の島々で機動的に展開・再配置する――というもの。優れた長距離攻撃能力を持つ中国軍に対して、西太平洋の島々を舞台に神出鬼没なゲリラ戦を展開しようというわけだ。

だから船は小型でよく、小型なぶん多数を建造することができる。現在18~35隻の大量建造が予定されている。また、小型なのでビーチング能力(海岸に直接、艦首を乗り上げる揚陸方法)を持たせることが可能で、港湾施設に頼らず、さまざまな島々に部隊や装備を輸送できる。

西太平洋の島嶼間輸送・補給任務にあたる
動画では性能面について、いくつか具体的な情報が示されている。マクラング級は800トン程度を輸送可能で、航続距離は3400海里(6400km)だ。これにより、西太平洋の広いエリアにおいて島嶼間の部隊展開や補給任務を実行することができる。艦尾にはヘリ甲板を持ち、ヘリコプターやティルトローター機、および無人機の運用も構想されているようだ。

また、マクラング級は新規設計ではなく既存設計――オランダ、ダーメン・グループのLST-100型揚陸艦をベースとしている。これは開発費の抑制に加え、迅速な建造と配備を実現するためであり、中国の軍事的膨張のスピードへの危機感の強さを物語っている。

マクラング級は「大規模上陸から分散機動」へと変化する海兵隊の作戦構想の変化を具体的に示した艦と言えるだろう。本艦は、戦闘艦艇のような派手さはないが、将来の西太平洋における海兵隊の機動性、そして部隊の生存性を支えるために不可欠な手段となるのだ。
