ホンダ クロスカブ110……41万2500円(2025年12月11日発売)

2022年に平成32年(令和2年)排出ガス規制に適合した新型エンジンを搭載。合わせて前後ホイールをワイヤースポークからアルミキャストに変更し、フロントにABS付きのディスクブレーキを採用したクロスカブ110。値上がりした2026年モデルも仕様は変更なし。
標準装着タイヤはIRC製のGP-5 D/GP-5(チューブレス)で、指定空気圧はフロント175kPa/リヤ225kPaだ。
2026年モデルの新色はボニーブルーとハーベストベージュで、試乗車は2022年からの継続色であるマットアーマードグリーンメタリックだ。全部で3色をラインナップする。

二次減速比の違いによりスーパーカブ110よりもキビキビ走る

オーストラリア向けの郵政カブ「NBC110 POSTIE」をベースに、2013年に登場した初代クロスカブ110。2018年にレッグシールドを廃した2代目へと進化し、2022年のマイナーチェンジで新型エンジン&アルミキャストホイールを採用した。

最新の2026年モデルはカラーバリエーションを変更するとともに価格を改定。具体的には、従来の36万3000円から41万2500円へとアップした。4万9500円、およそ13.6%もの値上がりである。新基準原付のLiteシリーズが登場したことで、玉突き的に価格改定が実施された感は拭えないが、昨今の値上げトレンドを考慮すれば致し方のないことなのだろう。

クロスカブ110の購入を検討されている人の多くは、CT125・ハンターカブも視野に入っていることだろう。どちらも秀作ではあるが、自分がもし買うなら迷わずクロスカブ110を選ぶ。ハンターカブの走行性能はワンランク上にあり、特にブレーキを含む足周りは軽二輪クラスにも引けを取らない。これに対してクロスカブ110は、スーパーカブ110よりもモーターサイクル的なハンドリングを有するものの、その奥にはカブシリーズに共通する“ユルさ”も残されている。この絶妙なさじ加減がクロスカブ110の魅力であり、実は過去に何度も買おうかどうか迷ったほどだ。

あらためてクロスカブ110の最新モデルに試乗できることとなった。2022年モデルで現行の排出ガス規制に適合しているので、パーツリストに目を通しても走行性能に影響しそうな部品の変更は見当たらなかった。

109ccの空冷SOHC2バルブ単気筒エンジンは、セルモーターでもキックスターターペダルでもすぐに目覚めてくれる。アイドリング時の微振動はバランサーレスのシングルとは思えないほど抑えられており、排気音も柔らかくて耳に心地良い。ニュートラルから1速にシフトし、スロットルをわずかに開けるとすぐに自動遠心クラッチがつながり、軽量な車体はスルスルと前進する。

排気量は原付二種の上限いっぱい(125cc)ではないものの、発進加速は力強く、流れの速いバイパスでも不足を感じることはまずない。4段ミッションだが、3速にシフトアップするころには一般道での法定最高速度(60km/h)に達しており、エンジンの出力的にはまだまだ余裕がある。

以前、クロスカブ110に外付けのデジタルタコメーターを装着してエンジン回転数を調べたことがあり、レブリミットは8000rpmに設定されていることが判明した。1速でそこまで引っ張ると、スピードメーターの針は40km/h弱を指す。ちなみにスーパーカブ110とエンジンは共通だが、ドリブンスプロケットはクロスカブ110の方が2T大きい(リヤのタイヤサイズは同じ)。2次減速比が約5.6%ショートな分だけ、クロスカブ110の方がキビキビと反応してくれ、その差は特に上りコーナーで現れやすい。マシンのコンセプトに合わせてドリブンスプロケットの歯数を細かく変えるとは、さすがホンダと言えるだろう。

大らかなハンドリングで、フラットダートも許容範囲だ

スーパーカブ110に対してホイールベースは25mm長く、最低地上高は25mm高く、フロントタイヤは1サイズ太いクロスカブ110。これらの違いがハンドリングに影響を与えているのは明らかだ。スロットルのオンオフやブレーキングで発生する車体のピッチングは大きめであり、舵角の付き方はまるでフロント18インチのように穏やかだ。コーナーの進入から2次旋回に至る過程では、まるで軽二輪クラスのような安定性と安心感がある。この方向性をワンランクアップさせたのがCT125・ハンターカブだが、クロスカブ110はユニットステアゆえかフロント周りに適度なしなりが感じられ、これが“ユルさ”の源になっている。

以前、クロスカブ110でフラットダートに足を踏み入れたことがある。デュアルパーパスほど走破性に優れるわけではないが、車体が暴れてもハンドル幅が広いので抑え込みやすく、すぐに足が着けるという安心感も大きい。結果、意外と距離を稼げてしまったことに感心した。より高いオフロード性能を望むならCT125・ハンターカブを勧めるが、クロスカブ110もフラットダートは許容範囲と言えるだろう。

ブレーキについては、フロントにシングルディスクを採用。スーパーカブ110のシングルピストンキャリパーに対し、クロスカブ110は片押し式2ピストンを選択する。絶対制動力やコントロール性に極端な違いはなく、ビギナーが操作しても十分に扱いやすいと感じるはず。リヤのドラムブレーキもコントロール性は高く、制動に関しては最新モデルであっても不満はない。

前後ともY字スポークのアルミキャストホイールを採用。フロントブレーキはシングルディスクで、片押し式2ピストンキャリパーを組み合わせる。1チャンネル式ABSを標準装備。

最新モデルで変わったのは価格と車体色のみであり、装備やパフォーマンスは不変であることを確認できた。値上げ分の4万9500円という額は、純正アクセサリーのグリップヒーターとラゲージボックスを追加してなお余るほどであり、その影響は決して小さくはない。とはいえ、値上げがここで終わるとは限らないので、もし検討しているならできるだけ早めに決めた方がいいだろう。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

シート高はスーパーカブ110より46mmも高く、全幅(≓ハンドル幅)は90mm広いことから、ライディングポジションはわずかに大柄に感じられる。レッグシールドがないので寒い時期は下半身が冷えやすいものの、バランスを取るのに足を前方へ出しやすいなど、未舗装路でのポジションの自由度という意味ではクロスカブ110が上回る。

ディテール解説

2022年モデルで、ボア×ストロークをφ50.0×55.6mmからφ47.0×63.1mmに、圧縮比を9:1から10:1とした109cc空冷SOHC2バルブ単気筒。最高出力8.0PSを7500rpmで発生する。チェンジペダルは伝統のシーソー式。自動遠心クラッチなのでAT小型限定普通二輪免許で運転可能だ。
CT125・ハンターカブのアップマフラーに対し、クロスカブ110はダウンマフラーを採用。セルモーターのほか、キックスターターペダルによるエンジン始動も可能だ。気温5℃以下の寒い環境においても、軽く踏み下ろすだけですぐに始動する。
リヤサスペンションはツインショックで、ショックユニットはフルカバードのスーパーカブ110に対し、クロスカブ110はカバーレスとなる。リヤブレーキはドラム式だ。
ハンドルバーが露出したシンプルなコックピット。自動遠心クラッチなのでクラッチレバーは存在しない。純正アクセサリーとしてグリップヒーター(1万9965円)が用意されている。
140km/hフルスケールの指針式速度計に液晶画面を組み合わせたメーターパネルは、現行の排出ガス規制に適合した2022年モデルから採用。ギヤポジションと燃料計を常時表示するほか、時計/積算計/距離計/平均燃費を切り替え表示する。
必要最小限のスイッチボックス。ウインカーはプッシュキャンセル式だ。
座り心地の良いシート。法律上はタンデムが可能であり、ピリオンシートはカスタマイズパーツ(SP武川製、9350円)として用意されている。
前ヒンジ式のシートを持ち上げると燃料タンクが現れるのはスーパーカブ110らと同様だ。容量は4.1Lとなっている。
大型のラゲッジキャリアには荷掛けフックがあり、大きなバッグでもしっかりと括り付けられるので便利だ。純正アクセサリーでさまざまなボックスが用意されている。
上下2段の丸型LEDヘッドライトは、特徴的なヘッドライトガードで囲われている。ウインカーはフィラメント球だ。
2020年モデルで、二輪車灯火器基準に関する法規対応を施したテールランプを採用。最新の2026年モデルでもこれを継続している。
パッセンジャー用の可倒式ステップはスイングアームにレイアウトされる。

クロスカブ110(2026年モデル)主要諸元

車名・型式 ホンダ・8BJ-JA60
全長(mm) 1,935
全幅(mm) 795
全高(mm) 1,110
軸距(mm) 1,230
最低地上高(mm) 163
シート高(mm) 784
車両重量(kg) 107
乗車定員(人) 2
燃料消費率(km/L) 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 67.0(60)〈2名乗車時〉
          WMTCモード値 67.9(クラス 1)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 2.0
エンジン型式 JA59E
エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒
総排気量(cm³) 109
内径×行程(mm) 47.0×63.1
圧縮比 10.0
最高出力(kW[PS]/rpm) 5.9[8.0]/7,500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 8.8[0.90]/5,500
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式 セルフ式(キック式併設)
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L) 4.1
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式4段リターン
変速比 1速 3.142
    2速 1.833
    3速 1.333
    4速 1.071
減速比(1次/2次) 3.421/2.642
キャスター角(度) 27°00´
トレール量(mm) 78
タイヤ 前 80/90-17M/C 44P
    後 80/90-17M/C 44P
ブレーキ形式 前 油圧式ディスク(ABS)
       後 機械式リーディング・トレーリング
懸架方式 前 テレスコピック式
     後 スイングアーム式
フレーム形式 バックボーン