オフロード志向のSUVの開発を検討する可能性も示唆

アウディのCEO、ゲルノット・デルナー氏が海外メディアの取材に応じ、「EV販売の伸び悩みと内燃機関車への関心の高さを受けて、パワートレーン戦略をより柔軟な方向へ見直している」と語ったことがわかった。

アウディ R8

電気自動車(EV)は世界的に販売の伸びが鈍化しており、とくに米国市場では苦戦が目立つ。税制優遇措置の縮小や充電インフラの整備遅れなどが影響し、需要は当初の想定を下回っている。こうした状況を受け、アウディは将来の製品戦略を見直し、EVと並行して内燃機関モデルの開発も継続する方向にあるようだ。

アウディ R8

アウディは2021年、フォルクスワーゲン・グループの高級ブランドとして、2026年以降に投入する新型車をすべてEVとし、2033年までに内燃機関車を廃止する方針を打ち出していた。しかしデルナーCEOは、現在の市場環境、とくに米国では内燃機関車への需要が再び高まっていると指摘する。

「市場は非常にダイナミックで、それぞれの地域に特性があります」とデルナーCEOは述べる。EVに積極的な中国市場でも、長距離走行へのニーズからプラグインハイブリッドやレンジエクステンダー(EREV)への関心が高まっているという。

アウディは今後、ハイブリッド化の進展に向けて既存のパワートレインを改良していく計画で、内燃機関ベースの新たなプラットフォームを開発するかどうかについても、近い将来に判断を下す必要があるとしている。

さらにデルナーCEOは、「ドライブトレインの主軸が内燃機関に回帰する可能性は十分にある」とし、「バッテリーEVが再び急速に拡大するかどうかは現時点では不透明だ」との見方を示した。

米国に限らず、日本を含む世界市場でも同様の傾向が見られる。純電気自動車への関心がやや後退する一方で、十分な電動走行距離を確保しつつ、長距離移動では内燃機関を活用できるプラグインハイブリッドやEREVへのシフトが進んでいる。

こうした状況の中でも、アウディはプラットフォーム戦略において独自路線を維持する構えだ。デルナーCEOは、EVと内燃機関車をそれぞれ専用プラットフォームで展開する方針を改めて強調している。

これは、EVとICE車を共通アーキテクチャで開発するメルセデス・ベンツとは対照的なアプローチである。アウディは「それぞれに最適化した専用プラットフォームこそが最良の解決策だ」との立場を崩していない。

一方で、今後の注目は2023年に生産を終了したミッドシップスーパーカー、アウディR8の後継モデルだ。ハイブリッドV8を搭載するランボルギーニ・テメラリオの姉妹車が開発されるとの噂もあるが、デルナーCEOは明言を避けつつも、その可能性を否定していない。

さらに、オフロード性能を重視したSUVの開発についても検討の余地があることを示唆。メルセデス・ベンツGクラスやフォード・ブロンコ系モデルと競合する新たなカテゴリーへの参入も視野に入れている可能性がある。

電動化一辺倒からの見直しが進む中、内燃機関の再評価は自動車メーカーにとって新たな選択肢となりつつある。アウディの戦略転換は、その象徴的な動きといえるだろう。