後にも先にもコレ一代!スポーツ×無段変速の新ジャンル開拓者
オートバイに主に求めるものがスペックからライフスタイルへ移行していった1990年代後半。各メーカーは、原チャリスポーツにも日常に無理なく溶け込むフレンドリーさを付加し、多様な価値観に対応しようと試みていた。
そんな中、ヤマハ・TDR50、カワサキ・KSR‐1という、スポーツ走行が楽しめ、かつ日常での扱いやすさも兼ね備えた「デュアルパーパス・ミニ」のジャンルに、CVT(無段変速)という禁じ手(?)を引っ提げて登場したのが、97年登場のスズキ・ストリートマジックだ。
原付12インチミッションミニの市場において、スズキはホンダ・NSR50、ヤマハTZM50Rの牙城に食い込む戦略には出ず、ポジションが楽でとっつきやすいKSR‐1を参考車に定めた。
12インチミッションのジャンルに、CVTを採用することで気軽に乗れて、かつスクーターに無いスポーツ性能が楽しめるモデルを提供。当時の広告にはタレントの長瀬智也を起用して、「俺マジ ストマジ」のキャッチコピーは鮮烈だった。
しかし、そもそもNSR50やTZM50R、KSRを選ぶライダーはシフト操作をしたいわけで、そこにCVTというのは、「なんか無理っぽくね?」という印象を持つ者もいたのは否めないだろう。もっと言えば、前者はレプリカやモタードの小さい版、というストーリー性がある。そういうストーリー性がストマジにはなかったものの、モトチャンプ読者は「スーパースクーターの市販版だ!」と歓喜。それもそのはず、当時は全国各地でミニバイクレースが盛んに行われており、スクータークラスの改造無制限クラスでは、NSR250Rのような形状のアルミフレームにフルチューン・スクーターエンジンを積んだ「スーパースクーター」と呼ばれるマシン達が活躍していたのだから。
というわけで、いままでの12インチミッションにはない、気軽さ&とっつきやすさ。これにこれまでのスクーターには無い走行性能を持たせようと試みた結果、スズキは意図せずに90年代最強のオートマチック・スポーツ原付を作り上げてしまったというわけだ。こういう逸話は実にスズキらしく大好きだ。
スクーターの利便性を捨て12インチミニ勢に挑んだ
エンジンは、1987年に登場したアドレス50系(ボア×ストローク41mm×37.4mm)系で、最高出力は上限いっぱいの7.2㎰を発生。最大トルクは当時一般的だった0.7㎏m台に対し、0.82㎏mを発揮した。
特筆すべきはフレーム構成で、スチール製ダイヤモンドフレームに、上下にクランプのあるフロントフォークを採用。これによりスクーターらしからぬ高い剛性とシャープなハンドリングを実現。
ジョグやディオが頑張っても構造上たどり着けない、高い走行性能を獲得していたのだ。
1990年代において、50㏄クラスの無段変速スクーターで上下にフォーククランプのあるモデルは皆無(ソフトバイクを除く)。この構造は2001年にヤマハ・TMAXで採用され話題になるのだが、何故どのメディアも先駆者であるストマジに言及しなかったのか、筆者としては不満なのである。
ではNSR50やTZM50R、KSR-1の12インチミッション車に比べてどうだったか? というと、正直スポーツ走行性能だけを求めるライダーには敬遠されてしまった。こればかりは仕方ないと思うし、スズキの思い切ったコンセプトを具現化した姿勢は称賛されるべきだ。
ちなみに筆者がストリートマジック(50cc)に乗った印象は、しっかりした車体剛性は感じられ、最高出力7.2psというだけあってパワー感もなかなか。1998年に登場する110㏄モデルならさらにパワフルだったと想像する。これならきっと12インチミッション車と峠で互角に渡り合えたであろう。
右手ひとつでスポーツ性が楽しめるオートマチック・スポーツだったストリートマジック。
唯一無二という観点からすればこれほど面白い90年代車もない。今こそ評価したい一台である。
SPECIFICATIONS
■エンジン:空冷4スト単気筒49㏄
■最高出力:7.2㎰ /6750rpm
■車両重量:73㎏(乾燥)
■当時価格:17万9000円
※この記事は月刊モトチャンプ2023年2月号を基に加筆修正を行っています


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