GRが用意する“売った後”の体験価値

GR DRIVING EXPERIENCE(ジーアール・ドライビングエクスペリエンス、以下GRDE)は、クルマを安全に操り、車両の持つポテンシャルを引き出してスキルアップできる、ステップアップ型のドライビングプログラムだ。富士スピードウェイ(静岡県・小山町)内の施設、モビリタでレッスンを受けることができる。4月にプログラムを一新した。
なぜGRはドライビングプログラムを展開するのか。それは、「売って終わりではなく、体験を通じて“クルマの楽しさ”を提供したいから」と説明する。それには、クルマを正しく操るスキルを学べる場所を作ることが必要だと。GR車にはそれぞれ個性やポテンシャルの違いがあるものの、そのポテンシャルを存分に引き出せる場はなかなかない。その場をGR自ら提供しようというわけだ。

「GR1級」から「GR4級」まで段階的に学ぶ

プログラムはGR1級からGR4級まで設定。GR1級は「サーキットコースで安全に楽しく走行できる」のが到達目標で、実践訓練の位置付け。パイロンコースで限界走行を行なうほか、サーキットで走るためのルール講習を受けたのち、ショートサーキットでトレーニングを行なう。

GR2級は「グリップ限界で車両挙動を操れる」ことを到達目標とし、ウエットのパイロンコースで限界走行を行い、μ(ミュー:路面抵抗)の低い状況でも対応できるコントロール性を養う。
GR3級は「車両の荷重移動と操作の関係性」「車両挙動を理解する」のが主眼。低μ路でオーバーステア、アンダーステア挙動を体感し、車両の動きと荷重移動を意識して適切に操作できることを目指す。
GR4級は運転の基礎を学ぶプログラムで、正しいドライビングポジションを学び、基本的なステアリング操作、加速、減速といった運転の基礎を理解する内容。安全に運転を楽しむためのファーストステップに位置付けている。このほか、運転の基礎を学ぶ体験コース(半日)を用意している。

初めて参加する人はGR4級または体験コースを申し込むことが可能。過去に受講歴がある人は、GR3級から参加することが可能だ。また、GR3級とGR4級は自分のクルマで参加することが可能。この場合、GRやトヨタ以外のブランドでも参加可能だ(GRが用意する車両をレンタルすることも可能)。GR1級とGR2級はFR車を使ったトレーニングとなるため、GRDE側で用意するGR86を使ってプログラムを行なう。受講料には車両レンタル代やタイヤおよび燃料代が含まれている。
低μ路で学ぶアンダーとオーバーの挙動、
GR3級とGR2級のプログラムを体験することができた。前述したように、GR3級は低μ路(すべりやすい路面に水を撒いたコース)でオーバーステアとアンダーステア挙動を体感するのが主な狙い。受講車のGR86はスタッドレスタイヤを履いており、よりすべりやすい状態になっている。
GRDEの講師はさまざまレースで活躍するGRドライバーが務める。まずは助手席に乗り、講師の運転でコースを覚えつつ、どういう走りをしたらアンダーステアやオーバーステアの挙動が出て、その挙動が出てしまった場合にどう対処すればいいのか、目で見て、体で感覚をつかみ、言葉で聞いて学習する。

無線のアドバイスで自分の弱点が見える
同乗走行が終わると、今度は自分で運転する番だ。講師は管制塔から無線でアドバイスを送ってくれる。助手席で見ていたらずいぶん簡単そうに運転していたのに、自分でやろうとするとなかなかうまくいかない。曲がりたいのに曲がりたい方向に動いてくれないし、ちょっとラフなアクセル操作をするとスピンモードに陥る(実際、何度かスピンした)。
思いどおりにいかないクルマの動きが出たときはすかさず、無線でどうしてそういう挙動が出てしまったのか、講師がアドバイスしてくる。そして、その挙動が出てしまったときはどう対処すればいいのか、その対処法も教えてくれる。教えてもらったことをすぐに試せるのが、このプログラムのいいところだ。レーシングスピードで挙動が乱れたら冷や汗どころの騒ぎではないが、低μ路なら20km/hプラスの速度域で挙動の変化が安全に体感できる。そこも、いいところである。

コースやクルマの動きに慣れた(?)頃、「じゃ、タイム計ってみましょうか」と無線で指示が飛んできた。プレッシャーがかかったときに冷静さを保てるかどうかを見るのが狙い。速く走りたいと焦る気持ちと、無理をせず正確な操作を心がけようとするメンタルのバランスが難しい。
しっぺ返しが怖いので、公道では意図してアンダーステアやオーバーステア挙動を出すことはできない。GRDEでは安全に、しかも安心して挙動変化を体感できるのがいい。講師みたいにスライドコントロールが上手になりたい。そう思わせるレッスンでもあった。
ウエット路面で問われるブレーキ操作
GR2級のパイロンコース走行もGR3級の低μ路での走行と同じで、はじめに講師の運転によるレクチャーを受けながらコースを周回する。運転席に乗り込んだ後はやはり、無線でのアドバイスを受けながらの走行となる。コースはタイトコーナーの連続だが、2速が吹け切って3速に入るシーンもあるので、そこそこのスピードまで出る(メーターを確認する余裕はなかった)。急制動、急加速、急旋回が連続した走行だ。体験日はあいにくの雨だったので全面ウエットだったが、本来はコースの半分がドライ、半分がウエットで、路面の違いによる挙動の違いを体感できる仕組み。

講師と同じように運転できないのはGR3級の低μ路と同じ。筆者が頻繁にアドバイスを受けたのは、「ブレーキのリリースが早すぎる」ことと「ブレーキの踏みが甘い」こと。自分では意識していなかったが、言われてみればそのとおりで、滑りやすいウエット路面なのにABSが作動するほど強いブレーキを踏むことはできていなかったし、コーナー進入のだいぶ手前でブレーキをリリースしていた。本来ならもっと制動距離を短くできるはずである。
自分の弱点を理解する意味でも、価値あるプログラムと感じた。それに、GR86のポテンシャルの高さと、講師陣の運転スキルの高さを実感した体験でもあった。レーシングドライバーの運転を間近に見ることができ、直接指導を受けられる。それだけでも価値あるプログラムだと言える。
