BMW・R 1300 R ツーリング AUTOMATED SHIFT ASSISTANT……2,571,000円~

日本では2025年9月6日に受注開始となったBMW・R 1300 R。その元祖は1994年に発売されたR 1100 Rだろう。2001年にR 1150 R、2006年にR 1200 Rへと進化し、2015年のフルモデルチェンジで空水冷ボクサーツインと倒立式テレスコピックフォークを新採用。このタイミングでヘッドライトがオーソドックスな丸型1灯から異形タイプとなり、2019年のR 1250 R、そして最新のR 1300 Rもこの流れを引き継ぐ。
2014年にヘリテイジシリーズのR nineTが登場したことで、翌2015年にフルモデルチェンジしたR 1200 Rでは異形ヘッドライトを採用したストリートファイター路線に。そして、それを極めたのがこのR 1300 Rと言えるだろう。猛獣が身構えているかのようなスタイリングは、他メーカーのストリートファイターに比肩するほど躍動的であり、丸いエンブレムを見なければこれがBMWだとは分からないレベルだ。なお、純正アクセサリーのパニアケースセットは27万6562円(取り付け工賃別)だ。
試乗車に装着されていたタイヤはダンロップ・スポーツマックス ロードスマートⅣ GTで、指定空気圧は1名乗車時でフロント:2.3bar/リヤ2.5bar、2名乗車+積載時で2.5bar/2.9barとなっている。
車体色はスナッパー・ロックス・ブルー(N4U)、レーシング・ブルー・メタリック(N2L)エクスクルーシブ、ライト・ホワイト(N4B)パフォーマンス、ブラック・ストーム・メタリック(ND2)オプション719の4種類。装備がシンプルなSTD仕様はN4UとN2Lのみに設定(211万9000円~)。ツーリングおよびツーリングASA仕様は全カラーに用意され、最も高価なのはND2のツーリングASAで283万2000円となっている。

ロードスターの転機は2015年のフルモデルチェンジにあり

少しだけBMWのロードスターと筆者との昔話をさせてほしい。

筆者は1999年にR 1100 Rを購入した。車両価格は145万円だったと記憶する。「20代でビーエムの新車を買う」という目標を達成したのだ。1085ccの空油冷ボクサーツインは、最高出力80PSを発生。決してパワフルではなかったが、どの回転域からでも必要十分な力が取り出せ、まさに意のままに操れる従順なネイキッドだった。北海道や九州へのキャンプツーリングに飽き足らず、各地の林道にも足を踏み入れ、最終的には「ボクサートロフィー」というワンメイクレースにも参戦している。この間、致命的な故障こそなかったものの、経年劣化によってハーネスの被覆がボロボロに。これの修復にはかなりの費用がかかることから、5万kmを目前に手放してしまった。とはいえ、このバイクを通じて得られた経験は相当なボリュームであり、ゆえに今なおBMWのロードスターには思い入れが強いのだ。

これはSUGOで開催されたMAX10 マイバイク耐久レースに出場したときのもの。リヤホイールを18→17インチ化したり、フロントキャリパーをブレンボ化しつつABSユニットを撤去。さらにファイナルギヤとエキパイをR 1100 RSのものに変更したり、前後にオーリンズを投入するなど、少しでもタイムを更新するためにさまざまなカスタマイズを実施。このときの経験が今も役に立っているのは間違いない。

2001年に発売されたR 1150 Rは、リヤホイールが17インチ化され、トランスミッションは5→6段に。この一見地味なように思える改良は、すでにレースに参戦していた筆者にとって非常にうらやましかった。ただ、初期入力から極端に利きすぎるサーボブレーキだけはどうしても馴染めずじまい。後に追加されたバリエーションモデル「R 1150 R ロックスター」を借りてボクサートロフィーに出場したこともあるが、自分のR 1100 Rでの自己ベストを更新できず、買い換えるまでには至らなかった。

2006年に登場したR 1200 Rでは悪名高きサーボブレーキを廃止。画像は2011年モデルで、この年にボクサーツインをDOHC化し、最高出力は109→110PSへ。ワイヤースポークホイールとローダウンサス、ローシートを採用する仕様(右)はクラシックと呼ばれた。

2015年にフルモデルチェンジしたR 1200 Rは、エンジンの空水冷化だけでなく、およそ20年貫いてきたテレレバーとの決別もハイライトだった。BMWはこの前年に発売したR nineTとの差別化を図りたかったのか、ここからロードスターは見た目も走りもストリートファイターへと移行する。ライダーに対する従順さは残しつつも、各種先進デバイスによって楽しめる速度域が一気に底上げされた。牧歌的な味わいを求めるならどうぞR nineTシリーズへ……。そう言われているような気がするほどの、ドラスティックな進化ぶりだった。

R 1200 Rは2015年にボクサーツインを空水冷化。フロントサスはテレレバーから倒立式テレスコピックフォークとなった。そのフォークがクルーザー並みに寝ているように見えるが、それもそのはず、一般的なネイキッドのキャスター角が25°前後なのに対し、R 1200 Rは27.7°に設定されていた。付け加えると、後のR 1250 Rではさらに寝かされて28.3°となり、最新のR 1300 Rもこの数値を引き継ぐ。

ボクサーとASAの相性は抜群、開ければ実にパワフルだ

前振りが長くなりすぎてしまったが、筆者がBMWのロードスターに対して人一倍思い入れがあることはお分かりいただけたかと思う。

さて、このR 1300 Rだが、2気筒エンジンのネイキッドでありながら、車体はけっこう重い。並列4気筒のヤマハ・MT-10やスズキ・GSX-S1000、カワサキ・Z1100らと比べると20kg前後も上回るのだ。排気量が1300ccもあるのだから仕方ないとはいえ、サイドスタンドで傾いた状態から車体を起こすだけでも「ヨイショ」という言葉が自然と口から漏れる。

エンジンは145PSを発揮する空水冷ボクサーツインで、今回試乗したのは自動変速システム「オートメイテッド・シフト・アシスタント(ASA)」を採用するツーリングASA仕様だ。ドゥカティ・ストリートファイター V4の214PS、KTM・1390スーパーデュークR EVOの190PSと比べれば、最高出力こそ控えめではある。だが、注目すべきは149Nmという圧倒的な最大トルクで、R 1300 Rはこれを6500rpmという中回転域で発生するのだ。

パーシャルロードとフルロード、二つの吸気カムを切り替える「BMWシフトカム」を採用した排気量1300cc(1299.97cc)の空水冷4ストローク水平対向2気筒エンジン。最高出力は145PS/7750rpmで、最新の排ガス規制ユーロ5+に適合している。オートメイテッド・シフト・アシスタント(ASA)は、クラッチ操作とシフトチェンジを自動で行うシステムのこと。バンク角を考慮したダイナミック・トラクション・コントロール(DTC)や、同じくバンク角に応じてエンブレの制御するエンジンブレーキ・トルク・レギュレーター(MSR)なども採用。エンジンスポイラーはレーシング・ブルー・メタリックとライト・ホワイトが標準装備する。

ツーリングASA仕様にはライディングモードProが採用されており、エコ/レイン/ロード/ダイナミックモードが選べるほか、スロットルレスポンスやDTCなどの設定を個別に調整可能だ。ASAの自動モードDとボクサーツインとの相性は抜群で、一般道においてはエコやレインモードでも、シフトカムが切り替わるであろう5000rpm付近に到達する前に次々とシフトアップしていく。それだけ低~中回転域に潤沢なトルクがある証拠だが、大排気量のツインだからといってエンジンフィールは決してクルーザー的なものではなく、快活な吹け上がりは間違いなくスポーティーと表現できるものだ。

ダイナミックモードでスロットルをワイドオープンすると、強い蹴り出し感を伴いながらとてつもないダッシュ力を披露する。そこにはもう空油冷時代の牧歌的な面影はないが、ボクサーツインならではの滑空感は未だ健在。これこそが他のストリートファイターとは決定的に異なる点であり、このモデルの大きな魅力の一つになっている。

ASAの自動モードDは、減速していくと停止直前まで2速を維持する設定で、走行中に1速まで自動的にシフトダウンすることは決してない。最初はこれに違和感を覚えたが、通常走行において特に問題ないことが分かると、それ以降は気にならなくなった。一方で、少し心配になったのは冷却ファンが回り出すタイミングだ。試乗日はさほど気温が高くなかったにもかかわらず、信号待ちのたびにクーリングファンが稼動していた。もし猛暑日で渋滞にハマったときなどは、メーターの警告表示を見逃さないように注意しておいた方がいいだろう。

セミアクティブサスのDSAが優れた操縦安定性を実現

R 1300 Rがライバル各車よりも重いことは先ほど触れたとおりだが、いざ動き出してしまえば軽快な運動性を発揮するのはBMWモトラッドの常だ。

クランクシャフトが車体に対して縦置きにレイアウトされているため、エンジン回転数の上下にかかわらずロール方向の動きは軽快だ。R 1100 R時代と比べるとマスの集中感がより増しているかのような印象で、特に低速域でのスラロームではリッタークラスのネイキッド並みにスパッ、スパッと左右へ切り返すことができる。その後に続く二次旋回については、ときおり1510mmというホイールベースの長さを感じさせることもあるが、これが安定性の源にもなっているのは確かだ。

ツーリングおよびツーリングASA仕様は、ダイナミックESAの上位互換であるDSA(ダイナミック・サスペンション・アジャストメント)を採用する。負荷によってダンピングおよびバネレートを自動的に変化させるセミアクティブサスで、基本的には車体が極端にピッチングしないような設定となっているようだ。機械的なアンチノーズダイブを発生するテレレバーの動きに近く、これも切り返しの軽さを生んでいる。また、ACCでの巡航中、前走車のブレーキングに合わせて自動的に減速する際、車体は決して前のめりにならず、むしろリヤが沈んでいるかのような挙動を見せる。これ自体はフルインテグラルABS Proとも連携していると思われるが、このDSAがあるからこそACCの便利さがより際立っていると言えるだろう。

ツーリングおよびツーリングASA仕様はスポーツブレーキを採用。チタニウムカラーの前後キャリパーは、ブラックのSTDキャリパーに対してブレーキ性能が優れているという。右レバー/右ペダルのどちらか一方だけを操作しても前後に制動力が配分されるフルインテグラルABS Proや、ブレーキング時に意図しない加速を防ぐダイナミック・ブレーキ・コントロールを採用。フロントサスは倒立式テレスコピックフォークだ。
リヤサスペンションはリンクレスのモノショック。STD仕様はダイナミックESA、ツーリングおよびツーリングASA仕様はDSA(ダイナミックサスペンションアジャストメント)を採用。加えてライト・ホワイトはスポーツサスペンションとなっている。

ラジエーターシュラウドをはじめとするボディワークのおかげか、下半身の防風効果は意外と高く、また軽い前傾姿勢によって高速巡航もさほどつらくはない。日本で楽しめる速度域を考えるとR 12 nineTの方が有利とも思えるが、R 1300 RのツーリングASA仕様は257万1000円~で、R 12 nineTの256万2000円~と価格はほぼイコールなのだ。付け加えると、採用されている先進デバイスの数はR 1300 Rが圧倒的に多い。そういう視点で見ると、この最新ロードスターが俄然魅力的に思えてくるはずだ。

ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)

シート高は810mm(スポーツサスペンションを採用するライト・ホワイトのみ820mm)で、リッタークラスの一般的なネイキッドとほぼ同等。マシンのボリューム感に圧倒されがちだが、足着き性はご覧のとおり良好だ。ハンドルはワイドかつ低い位置にあり、上半身は軽く前傾する。峠道やサーキットでフロント荷重がしやすいライポジとなっている。

ディテール解説

全仕様においてダーククロム仕様のエキパイにデザインオプションサイレンサーが採用される。ホイールにはタイヤ空気圧センサーを標準装備。
スイングアームは片持ち式で、シャフトドライブ特有のトルクリアクションを軽減するEVOパラレバーを採用。リヤブレーキディスクはφ285mmと大きめで、ヒルスタートコントロールを組み合わせる。
全仕様においてキーレスライド、イモビライザー、グリップヒーター、12Vソケット、USBポートなどを採用。加えてツーリングおよびツーリングASA仕様は、ナビホルダー(取り付け工賃込み10万8944円)やライディングアシスト(アクティブクルーズコントロール、前方衝突警告)を標準装備する。ハンドルバーはクランプの向きを変えることで前後に10mm動かすことが可能だ。
電子制御スロットルなのでスロットルワイヤーはなく、またASA仕様にはクラッチレバーがない。左側スイッチボックスはマルチコントローラーを中心に構成され、右側の最上段にあるボタンはイグニッションのオン/オフだけでなく、ステアリングロックも兼ねる。
シートは前後別体式で、ストリートファイターながら前後ともヒーターを内蔵しているのは非常に珍しい。
ライト・ホワイト以外はコンフォートパッセンジャーシートを採用。ヒータースイッチは左面に設けられている。
Mライトウェイトバッテリー(リチウムイオン)、ETC2.0車載器を標準装備する。シートレールはアルミダイキャスト製だ。
ASA仕様のシフトペダルはスイッチとしての機能のみ。センサーからの信号を受けたアクチュエーターがシフトドラムを動かす仕組みだ。
レンズの左右にDRLをレイアウトしたLEDヘッドライト。その上部にはアクティブ・クルーズ・コントロール(ACC)や前方衝突警告、車線変更警告機能などで使われるレーダーセンサーを内蔵する。
樹脂パーツによって立体的にデザインされたリヤエンド。グラブバーもうまく全体のシルエットに溶け込んでいる。

R 1300 R(2026年モデル)主要諸元

●エンジン
最高出力 107 kW (145 PS) / 7,750 rpm
エミッション制御 クローズドループ制御式三元触媒コンバーター
タイプ 空冷/水冷2気筒4ストロークボクサーエンジン、可変インテークカムシャフトコントロール BMW ShiftCam
ボア × ストローク 106.5 mm × 73 mm
排気量 1,300 cc
最大トルク 149 Nm / 6,500 rpm
圧縮比 13.3 : 1
点火 / 噴射制御 電子制御インテークパイプ・インジェクション / スロットル・バイ・ワイヤ付デジタルエンジンマネジメントシステム
排ガス基準 EU 5+

●走行性能 / 燃費
最高速度 240 km/h
WMTCに準拠した1Lあたり燃料消費率(1名乗車時) 20.8 km/L
WMTCに準拠したCO2排出量 110 g / km
燃料種類 無鉛プレミアムガソリン(スーパー)(max 15%エタノール、E10/E15)、95 ROZ/RON、90 AKI

●電装関係
オルタネーター 650 W
バッテリー 12 V / 14 Ah、メンテナンスフリー

●パワートランスミッション
クラッチ 多層構造湿式クラッチ(アンチホッピング)
ミッション 常時噛み合い式6速トランスミッションをエンジンブロックに内蔵
駆動方式 カルダンシャフト

●サスペンション / ブレーキ
フレーム 板金シェル構造のフレーム、リアフレームはアルミニウムダイキャスト
フロントサスペンション 倒立式テレスコピックフォーク
リアサスペンション BMW Motorrad EVO-パラレバー、アルミキャストシングルスイングアーム
サスペンションストローク、フロント/リア 140 mm / 140 mm
軸距 1,510 mm
キャスター 127 mm
ステアリングヘッド角度 62.5°
ホイール アルミニウムキャストホイール
リム(フロント) 3.50″ × 17″
リム(リア) 6.00″ × 17″
タイヤ(フロント) 120/70 ZR17
タイヤ(リア) 190/55 ZR17
ブレーキ(フロント) ダブルディスクブレーキ(310 mm 径)、フローティングマウント式ディスクブレーキ、4ピストンラジアルブレーキキャリパー
ブレーキ(リア) シングルディスクブレーキ(285 mm 径)、2 ピストンフローティングキャリパー
ABS BMW MotorradフルインテグラルABS Pro

●寸法 / 重量
シート高、空車時 810 ㎜ (スポーツサスペンション装備:820 ㎜)
インナーレッグ曲線、空車時 1790 mm(スポーツサスペンション装備:1810 ㎜)
燃料タンク容量 約17 L
リザーブ容量 約4 L
全長 2,125 mm
全高 1,090 mm
全幅 835 mm ※ミラー含まず
乾燥重量 227 kg
車両重量(ドイツ工業規格DIN 空車時、走行可能状態、燃料満載時の90%、オプション非装備) 239 kg
許容総重量 460 kg
最大積載荷重(標準装備の場合) 221 kg
車両重量(日本国内国土交通省届出値、燃料100%時) 244 kg

※生産国:ドイツ