パリ18区、孤独な男の復讐劇

『チャオ・パンタン』は、『老人と子供』や『愛と宿命の泉』などで知られるクロード・ベリが監督した1983年の作品。公開当時、フランスでは400万人近くの観客を集める大ヒットとなり、セザール賞でも5部門に輝いたフレンチ・ノワールの名作です。
パリ18区。夜のガソリンスタンドで働くアル中の中年男ランベール。ある晩、ユダヤとアラブの血を引く青年ベンスサンと出会い、孤独な二人は次第に心を通わせます。しかし、ベンスサンは麻薬売買絡みで殺害され、ランベールは復讐を決意し夜の街へ向かうのですが……。
フランスの国民的人気コメディアンだったコリューシュが演じるランベールは、当時私生活に問題を抱えていたというコリューシュにピッタリ。その役柄にズシリとした深みを与えていて、セザール賞の最優秀主演男優賞に輝いたのも納得の名演です。
そんな本作はパリ18区が舞台ということで、街中の描写には無数の欧州車が登場します。映画冒頭、青年ベンスサンの背後からゆっくりと近づくパトカーは、1979年製のルノー・18。街にはルノーの小型車のほか、当時はバリバリの新車だったであろうプジョー505や、1977年製のフォルクスワーゲン・ポロGLS、1973年製のボルボ・144GLなどが次々と登場します。

一方、ランベールが働くガソリンスタンドには“TOYOTA 1000”の名で輸出されたパブリカ(70年代製の2代目)が給油に来たり、1980年製のトヨタ・ハイエースや1977年製のホンダ・アコード、輸出用であろう1979年の三菱コルトが路駐してあったりと、日本の旧車にも目移りしてしまいます。
しかし最も印象的なのは、ランベールとベンスサンの運命を左右することになる重要なシーンで印象的に映し出される、1968年製のシトロエン・ID19。あまりにも衝撃的な展開に体が硬直し、その真っ白な車体がじっとりと記憶に焼き付くことでしょう。
公式サイト:https://tchao-pantin2026.com/
