後席の快適性に優れるキックスと、広さで勝るヴェゼル

新型キックスのもっとも目を引く点はアメリカンフットボールのヘルメットをモチーフとした変形Vモーショングリルだ。基本デザインは2年前に先行して販売された海外向けと共通だが、細部は日本向けに調整された。

一方のヴェゼルは欧州車然とした佇まいだが、北米を主戦場とするホンダらしく、どことなくアメリカンテイストも感じられる。とりわけ新型キックスとヴェゼルの2台は、ともに個性的な外観が大きな特徴と言えるだろう。

新型キックスはやや大型化し、ボディサイズはヴェゼルとほぼ同じ大きさになった。それに応じてホイールベースとトレッドも拡大されており、新型キックスの最小回転半径は0.2m増えてヴェゼルと同じ5.3mだ。ただしヴェゼルのe:HEV Zグレードは、タイヤサイズの違いから最小回転半径は5.5mとやや大きい。

新型キックスは後席空間も拡大されたが、膝周り空間の広さでは依然としてクラストップレベルのヴェゼルが上だ。一方で頭上空間は新型キックスの方がやや広く、後席に備わる快適装備も充実している。

新型キックスには後席用のエアコン吹き出し口とリクライニング機構、アームレストが追加された。ヴェゼルの後席にもアームレストは備わるが、リクライニング機構は備わらない。また、後席用エアコン吹き出し口はハイブリッドの4WDグレードのみの設定だ。

荷室空間も新型キックスがやや優勢となる。両車の荷室寸法は新型キックスが885mm×1025mm×870mm、ヴェゼルは後席空間を優先したぶんキックスに対して荷室長が100mm以上短い765mm×1015mm×725mmだ。

ただし使い勝手ではヴェゼルに分がある。新型キックスは後席格納時の背もたれの傾斜が大きいうえ、荷室床面との間に大きな段差が生じる点は旧型から変わっていない。ヴェゼルのリヤシートはダイブダウン機構によってフルフラットにすることができるうえ、後席にはホンダ得意のチップアップ機能も備わる。

日産 キックス X+
ボディサイズ=全長4365mm×全幅1800mm×全高1615mm
ホイールベース=2655mm
車両重量=1430kg
タイヤサイズ=215/60R17(前後)

ホンダ ヴェゼル e:HEV Z
ボディサイズ=全長4340mm×全幅1790mm×全高1590mm
ホイールベース=2610mm
車両重量=1380kg
タイヤサイズ=225/50R18(前後)

スペックは互角! 第3世代e-POWERは高速燃費でもe:HEVに迫る

キックスのパワートレインはエンジンで発電し、常時モーターで走行するシリーズ方式のハイブリッドシステム“e-POWER”となる。一方、ヴェゼルはシリーズ方式が苦手とする中高速域でエンジン動力を直接駆動に使うことで効率を稼ぐ変則型シリーズ方式“e:HEV”だ。

ヴェゼルは1.5L の4気筒エンジンに最高出力131ps/最大トルク253Nmのモーターが組み合わされ、おおよそ60km/h以下ではモーターで走行し、それ以上の速度ではエンジン走行に切り替わるように制御される。

新型キックスに搭載された第3世代e-POWERは、発電機となる3気筒エンジンの排気量を旧型の1.2L から1.4L へと拡大し、モータースペックは旧型比で最高出力7ps、最大トルク35Nm向上させた143ps/315Nmに増強された。加えてモーターやインバーター、減速機など主要5部品を一体化した5in1構造に変わり、パワートレインの小型軽量化と高効率化に加え、パワートレイン全体の高剛性化により静粛性も向上している。

新型キックスのWLTCモード平均燃費は、旧型から約1割もの向上を果たした25.7km/L(X+グレード)となり、ヴェゼルの25.3km/L(e:HEV Zグレード)をわずかに上回った。さらに、高速燃費はヴェゼルの24.4km/Lに対して23.8km/Lとわずかに届かないものの、法定速度内で走行している限りはほぼ互角の燃費性能となるまで新型キックスは進化している。

新型キックスは4WDがe-4ORCEに変わった点も大きなトピックだ。e-4ORCEは前後モーターとブレーキを統合制御することで滑りやすい路面での安定性を高めるだけでなく、緻密な駆動制御によって車体の揺れを抑え、乗り心地も高めてくれる。

対するヴェゼルの4WDはプロペラシャフトを介して駆動力を伝えるオンデマンド方式であり、高度な駆動制御は行なわれるものの車両安定性向上の域を出ない。

日産 キックス X+
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1433cc最高出力=98ps/6000rpm
最大トルク=115Nm/6000rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

ホンダ ヴェゼル e:HEV Z
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1496cc
最高出力=106ps/6000-6400rpm
最大トルク=127Nm/4500-5000rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

選択グレード次第ではコスパも大差なし! 違いはキャラクター

新型キックスのX+グレードの新車価格は354万9700円、ヴェゼルのe:HEV Zグレードは326万8100円となる。

価格が安いうえ、装備が充実しているのはヴェゼルの方だ。ヴェゼルのe:HEV Zはシートヒーターとステアリングヒーターが標準装備となるほか、左右独立式のオートエアコンやアダプティブドライビングビーム、ハンズフリー式パワーテールゲートが備わる。

新型キックスのX+グレードは、シートヒーターは標準装備だがステアリングヒーターはオプションだ。リモコンオートバックドアは標準で備わるがハンズフリー機能は備わらない。またアダプティブヘッドライトは、パノラミックガラスルーフや電動シートが標準装備となる最上級グレード“G(389万8400円)”のみの装備となる。

コストパフォーマンスで優劣を決めるなら、後席空間が広く荷室の使い勝手にも優れるうえ、装備も充実しているヴェゼルを選んでおけば間違いはないだろう。

しかし、新型キックスは上質感が飛躍的に向上している。居住性と快適性が向上した後席や大きく質感を増したインテリア、静粛性が増したパワートレインやボディの遮音性向上に加え、乗り心地を高めてくれるe-4ORCEなどの変更点は、すべて第3世代e-POWERの利点を最大化するためのアプローチと言えるだろう。

実のところ新型キックスの高い価格は、メーターと一体配置される12.3インチディスプレイの“NissanConnectインフォテインメントシステム”によるものだ。

豊富なオプション設定で装備を選べるベーシックグレードの“X”の価格は、ヴェゼルのe:HEV Zグレードに並ぶ325万9300円に抑えられる。さらに標準装備とオプション設定を極力省いた新グレード“Xシンプルパッケージ”は299万9700円であり、ヴェゼルの廉価グレード“e:HEV X”と装備も価格も並ぶ。

下位グレードを選ぶと内装トリムは簡素になるが、新型キックスの車体そのものが持つ上質感は失われない。

新型キックスとヴェゼルは、多くの面でよく似た特徴と性能を持つコンパクトSUVだ。しかし、エンジンの存在を乗員に極力感じさせない工夫がなされた新型キックスと、4気筒エンジンの存在感を積極的にドライバーへ伝えるヴェゼルは、ある意味、対極にある存在と言えるだろう。

車両本体価格

日産 キックス X+:354万9700円

ホンダ ヴェゼル e:HEV Z:326万8100円