走りと造形を突き詰めた25年の結晶
居酒屋マスターが所有するフルチューンBNR34!
ワンオフのカーボンケブラー製レーシーフェイスに、リヤバンパー中央から大胆に突き出したセンター出しマフラー。さらに、ボディサイドいっぱいに躍動感あふれるデザインで掲げられた『九州料理 寅吉』の店名。その強烈なインパクトで一瞬にして記憶に刻まれるこのBNR34は、“寅吉マスター”こと野岸さんが2001年に購入して以来、25年もの歳月をかけて理想の姿へと磨き上げてきた一台だ。

「もともとは90クレスタでドリフトを楽しんでいて、次は80スープラへの乗り換えを考えていました。ただ、友人がBNR34を手放すタイミングだったので、試しに乗ってみようと思って購入したんです。すると、GT-Rの走りとサーキット走行の魅力にどっぷりハマってしまいましたね」。
購入時の車両は、カーボンボンネットやGTウイングを装着した、定番とも言えるブーストアップ仕様だった。軽くカウンターを当てながらも力強く前へ進んでいくGT-Rならではの走りに魅了された野岸さんは、関西の人気レース『マイスターカップ』に参戦。優勝を重ねる中で、さらなる速さを追求するためのビルドアップも加速度的に進んでいった。

その熱量は想像を超えるものだった。2700発にも及ぶステンリベットを自ら打ち込み、ボディを補強。フロント周りのカーボンケブラー化を始め、TD07-25Gを組み合わせた2.7L仕様への変更、センター出しマフラーの製作など、まさにフルスロットル状態だった。2012年の大阪オートメッセで車両を展示した際には、すでに現在のスタイルに近い状態まで仕上がっていたというから驚かされる。
「店をオープンしたばかりで忙しかったこともありますが、自分の理想としていた完成形にかなり近づいたことで、ある意味、燃え尽きた感覚もあったんです。大阪オートメッセが終わった頃には、GT-Rをゆっくり楽しみたいという気持ちが強くなっていました。それに、エンジンブローを経験してサーキット走行への不安も少し感じていたので、2.8LにT78-33Dタービンを合わせた700ps仕様になったタイミングで、ひとまずチューニングは一区切りとしました」。
しかし、GT-Rへの情熱が冷めたわけではない。むしろ、その後もこれまでと変わらない熱量でクルマと向き合いながら、次なる進化を思い描く“イメージチューニング”の期間へと移行していった。分かりやすく言えば、次々と登場する新しいチューニングパーツの情報や評価に常にアンテナを張り巡らせ、愛車に採用するメニューを熟慮するフェーズに入ったのである。

こうして、怒涛の進化を遂げた約10年間と、その後の約10年間にわたる熟考の時間を経てきた野岸さんのBNR34。しかし、近年になって再び動きが見られるようになった。フラットフロア化を始めとする新たなビルドアップが少しずつ進められ、サーキット走行も再開。また、25年という長い付き合いとなった愛車だからこそ、「サーキット走行やツーリング中こそ楽しいが、単なる移動時間となってしまう道中は楽しくない」と考えるようになり、牽引免許の取得や積載トレーラーの導入といった周辺環境の整備にも取り組んでいる。
「長年あれこれ考えながら製作したフラットフロアですが、フロア下の整流や駆動系の冷却性能に納得できなくて、結局3回も作り直しました(笑)。今は“乗りたいときに集中して楽しむ”というスタイルで、サーキットやツーリングを年に1〜2回走る程度ですが、やっぱりGT-Rは楽しいですね」。

ブーストアップ仕様から始まったRB26チューンは、2度の2.7L仕様を経て、現在は2.8L×T78-33Dによる700ps仕様となっている。コンディションは上々だが、パワーFCから最新フルコン+各種センサーへと変更して制御を刷新するほか、Vカムの投入なども思案中だ。

ブーストアップ仕様時から貫いているのが、チタンを使ったワンオフパイピングだ。軽さや剛性、熱の影響を受けにくいといった機能面はもちろん、エンジンルームの格好良さを高める質感にもこだわった。

JZX90クレスタの頃から採用しているというウエストゲートのサイド出しは、V-OPTでエンジンブローを起こして燃えたチューニングカーを見たことをきっかけに考案したもの。引火の要因となる熱源を減らすためのアイデアだ。


排気効率とリヤビューの迫力を求め、メイン90φ、テール100φのセンター出しチタンマフラーを製作。パイピングをロスなく取り回すため、スペアタイヤ収納部をカットして仕上げた本気のアイテムだ。

クラッシュしてしまったフルカーボン仕様を修復するため、取り組んだのがカーボンケブラー化だ。ところが、ケブラーの貼り込み作業は想像以上に難しく、当初は立体感の出る綾織り仕上げを構想していたものの、貼り込みミスによって材料が不足。フロントバンパーのみ、綾織りよりも安価な平織りを使用している。

錆の要因となる熱の影響を抑えながらボディ剛性を高めるため、タワーや開口部は2700発にも及ぶステンリベットで徹底補強。ピラーやサイドシルなどの空洞部には発泡ウレタンを注入している。

イケヤフォーミュラの調整式アームやスピリット車高調で煮詰めた足回り。FRライクなフィールでトラクションを高めていくため、フロントには1.5ウェイ、リヤには2ウェイのATSカーボンLSDをマッチングする。

出張で訪れた博多で九州料理や人情に惚れ込み、住み込み修業を経て2011年に野岸さんがオープンさせたのが、博多もつ鍋を中心に九州料理を提供する『寅吉』だ。夫婦ともに大のクルマ好きということから、クルマ好きが気軽に集まれる場所にしようという想いで、寝屋川市の大阪運輸支局近くに店を構えている。R35バンパーが飾られた、カーショップを思わせる外観が目印だ。

25年という歳月をかけて築き上げられた、唯一無二のBNR34。その進化は決して終わることなく、オーナーとともにこれからもゆっくりと歩み続けていく。
●取材協力:九州料理 寅吉 大阪府寝屋川市昭栄町11-5 TEL:072-819-7839
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九州料理 寅吉
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