CFMOTO・1000MT-X……181万5000円(2026年4月販売開始)





どこまでも従順なエンジン、心地よい鼓動感も魅力

数ある中国メーカーの中でも、いま最も勢いを感じるのがCFMOTOだ。個人的にも昨年試乗したミドルアドベンチャー「450MT」の完成度には大いに感心し、欧州で“日本車キラー”などと高く評価されている理由にも納得した。

そのMTシリーズの頂点として登場したのが、新型「1000MT-X」である。
心臓部は、990デュークRや990 RC Rにも採用されるKTMの946.2cc水冷並列2気筒だ。海外メディアによれば、小~中排気量クラスに単気筒しか持たなかったKTMが、450MTにも搭載されているCFMOTOの450ccパラツインに興味を示したことをきっかけに、両社の相互供給が実現したという。

KTMでは「LC8c」と呼ばれるこのパワーユニットは、75度位相クランクを採用するのが特徴だ。その振動を打ち消すため、シリンダーヘッドとクランクシャフト前方に計2本のバランサーシャフトを備える。最高出力は112PSで、これは直接のライバルとなるBMW・F 900 GSの105PSをわずかに上回る。

ライディングモードはスタンダード、レイン、オフロード、マスターの4種類。まずはスタンダードで走り始める。
1000ccに迫る排気量に13.5:1という高圧縮比ながら、アイドリング付近でクラッチをつないでも燃料噴射の制御は実に自然だ。低回転域でギクシャクすることは皆無で、エンジンはどこまでも滑らかに吹け上がる。スロットルを積極的に開ければ、フロントタイヤが浮き上がりそうなほど力強い加速も見せる。
しかし、このエンジンの魅力は単なるパワーではない。
鼓動感あふれるツインらしい排気音とは対照的に、ライダーへ伝わる振動は驚くほど少ない。それでいて後輪が路面を力強く蹴り出す感覚はしっかり伝わってくる。75度位相クランク特有のリズミカルなフィーリングも心地良く、長距離を走っていても飽きる気配がないのだ。
6000rpmを超えると加速はさらに勢いを増し、9500rpmから始まるレッドゾーンまで一気に吹け上がる。1速だけで80km/hを軽く超えるほどの伸びも印象的だ。
電子制御スロットルによるレスポンスも秀逸で、右手のわずかな動きに対しても車体が忠実に反応する。スロットルワークだけで前後荷重を自在にコントロールできる感覚は、大排気量アドベンチャーとして非常に完成度が高い。
レインモードではレスポンスがだいぶ穏やかになり、文字通り雨天のときや路面温度が極端に低いときなどに安心だろう。マスターモードは、おそらく他メーカーでいうところのカスタムやユーザーモードに相当すると思われるが、ポルトガル語版しか発見できなかったオーナーズマニュアルには詳しい説明が見当たらなかったため、この点は今後改めて確認したい。
さらに印象的だったのが、標準装備される双方向クイックシフターの完成度だ。市街地で多用する2000~3000rpm付近から違和感なく使うことができ、シフトダウン時のブリッピングも自然。さらにスロットルを開けながらのシフトダウン、閉じながらのシフトアップにも対応してくれるので、シフトチェンジにおける興を削がれることがない。

付け加えると、クイックシフターが優秀ゆえに走行中はほぼ操作不要のクラッチレバーだが、これの操作力が非常に軽いため、長い信号待ちでもわざわざニュートラルに入れる必要がないほどだ。
唯一気になったとすれば左足に感じる熱さだ。試乗日の最高気温は32℃で、近年の日本としては特別暑い日ではなかったが、走行中は常に左すね付近へ熱風が当たり続けていた。オフロードブーツやレザーパンツなら気になりにくいかもしれないが、夏場は何らかの対策を考えておきたいところである。
オンロード寄りに軸足を置いたであろう車体設計が光る

フロント21インチを採用するラリーレイド系アドベンチャーで舗装路を走ると、タイヤ銘柄や長いホイールトラベル量の影響もあってか、車体全体にどこかフワフワとした柔らかさというか心許なさを感じることが少なくない。その絶妙な剛性バランスが未舗装路において武器になる一方、高いグリップを持つアスファルトの上では純粋なロードモデルほど限界は高くない。
その点、今回試乗した1000MT-Xは、ホイールトラベルの少ないローシート仕様ということもあってか、BMW・F 900 GSやヤマハ・テネレ700よりもシャシーに芯の強さを感じた。これならトップケースとパニアケースを装着しての高速巡航でも、車体が負けることはないだろう。

ハンドリングそのものはラリーレイド系らしく穏やかな舵角変化を見せるが、短めのサスストロークと剛性感のあるフレームによって、ワインディングでは想像以上にキビキビとした反応を見せる。特に倒し込みや切り返しの軽さは印象に残った。
その理由のひとつが22.5Lという大容量燃料タンクである。容量だけを見るとF 900 GSの14.5L、テネレ700の16Lを大きく上回るが、KTMのアドベンチャーファミリーと同様にエンジンの左右へタンクを振り分けるレイアウトを採用。これによって重心が低く抑えられており、満タン時でも車体の動きが軽いのだ。
標準装着されるピレリ・スコーピオンラリーSTRも好印象だった。セミブロックタイヤながら舗装路でのグリップ力は高く、ロードノイズも非常に静かである。

ブレーキ性能も申し分ない。フロントにはブレンボ製ラジアルマウントキャリパーと同社製マスターシリンダーを採用し、レバー操作に対する反応は極めてリニア。引き代や入力速度によって自在に減速力をコントロールでき、ライダーへ大きな自信を与えてくれる。さらにコーナリングABSまで備えるなど、安全装備にも抜かりはない。
縦型8インチTFTメーターも見どころのひとつだ。単体でも非常に多機能だが、スマホと連携すれば地図画面の表示や、駐車中の車体の動きを検知して通知するセキュリティ機能まで利用できる。タッチパネルが走行中に使いやすいかはさておき、ここまで大きな画面になると縦位置の方が見やすいと気付けたのは大きなメリットだ。

1000MT-Xは、「R 1300 GSでオンロードをメインとしたツーリングをしたいけれど、取り回しが重いので軽量なF 900 GSにしようか迷っている」という人に刺さるであろう秀作だ。22.5Lの大容量タンクはロングツーリングで大きな武器となり、装備内容はBMW・F 900 GSやトライアンフ・タイガー900 デザートエディションを上回る部分も少なくない。それでいて価格は両車より約30万円も抑えられており、コストパフォーマンスという点でも非常に魅力的な1台だ。

ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)
試乗したのはローシート仕様で、シート高は830mmを公称。乗車1Gでサスペンションがほどよく沈み込むので、リッタークラスのアドベンチャーモデルとは思えないほど足着き性が良い。ハンドルバーはワイドかつグリップ位置が高めで、スタンディングでも無理がないライポジとなっている。
ディテール解説










CFMOTO・1000MT-X 主要諸元
【エンジン】
エンジン形式 水冷並列2気筒、4ストローク、DOHC 8バルブ、75°位相クランクシャフト
排気量 946.2cc
内径×行程 92.5mm×70.4mm
出力 83kw(112PS) / 8500rpm
トルク 105N·m / 6250rpm
圧縮比 13.5:1
トランスミッション CF-SCスリッパークラッチ、6速、湿式マルチプレート
双方向クイックシフター
スロットル 電子制御式
【サイズ】
全長 2288mm
全幅 945mm
全高 1426mm(1476㎜ ハイシート仕様)
ホイールベース 1525mm
シート高 830mm(870mm:ハイシート仕様)
最低地上高 240mm
車両重量 222kg
燃料タンク容量 22.5L
【シャシー】
フロントブレーキ φ320mm ダブルディスク、Brembo製4ピストンラジアルキャリパー
リアブレーキ φ260mm シングルディスク、Brembo製シングルピストンキャリパー
フロントタイヤ 90/90 R21 Pirelli STR
リアタイヤ 150/70 R18 Pirelli STR
リム チューブレス対応スポークリム
ABS BOSCH デュアルチャンネル ABS (リアABS ON/OFF可能)
トラクションコントロール BOSCH TCS(3段階調整式)
電源ポート 18W USB Type-A & Type-C





