1958年、暮らしに入り込んだ小さなホンダ
いま一度ホンダ・スーパーカブを振り返ってみたい。1958年、まだ2ストロークエンジンが主流だった時代に、スーパーカブは耐久性や経済性を考えた4ストロークOHVエンジンを搭載。仕事にも生活にも使える身近な乗り物として、50ccという小さな排気量の価値をグッと押し上げた存在だ。
そのすごさは、速さや派手さではない。具体的には、毎日乗れる、燃費が良い、壊れにくい、荷物を積める、誰でも扱いやすい。そうした当たり前のようで難しい性能を、ひとつのパッケージにまとめたところにある。だからこそカブは、日本だけでなくアジアを中心に、世界中で頼られるバイクになっていったのだ。

1958年 C100 スーパーカブの原点モデル
わずか3年で56万台を売り上げたC100。OHVエンジンは、当時の2ストにも引けを取らない最高出力4.5psを発揮。
配達から通勤まで、毎日走れる強さが支持された
スーパーカブは、長い歴史のなかで少しずつ姿を変えていった。1966年にはエンジンをOHVからOHCへ変更。横型OHCエンジンの始祖ともいえるC50が登場し、基本的な設計はその後も長く受け継がれていくことになる。
1982年には角目ヘッドライトのスーパーデラックスが登場。リッター180kmという超燃費モデルでキャブレターも特別だった。やさしい雰囲気の丸目カブに対して、角目カブはもう少し道具感が強く、仕事に使うバイクとしてのイメージが強かった印象だ。
1988年には新聞配達に特化したプレスカブも登場。大型キャリアなどの実用装備により、まさに“毎日走るためのカブ”として進化していった。スーパーカブは、ただ長く売れたモデルではない。使う人や時代に合わせて、必要とされる役割を広げ続けてきたモデルだったのだ。

1966年 C50 横型OHCエンジンの始祖
エンジンをOHVからOHCに変更。最高出力は4.8psにパワーアップ。セル付きも用意されていた。

1982年 SDX 丸目から角目へ
ヘッドライトやフェンダーなどのデザインを変更したスーパーデラックス(のちにカスタムに名称変更)が登場。
リトルカブで広がった“おしゃれに乗る”楽しさ
昭和の頃のカブには、どうしてもビジネスユースのイメージが強かった。出前、配達、新聞屋さん、農家、商店街。毎日の生活のなかで見かける便利なバイクではあったけれど、若者が「おしゃれに乗りたい!」と思う対象とは少し違っていた。
でも、平成になると見え方が少しずつ変わっていく。カブラやリトルカブが登場し、さらに漫画『ご近所物語』の影響などによって、スーパーカブがおしゃれな乗り物として認識されるようになっていく。
1997年に登場したリトルカブは、その変化を分かりやすく象徴するモデルだった。前後14インチホイールを採用し、車高を下げることで足つき性にも配慮。女性や若者にも乗りやすく、かわいらしい雰囲気もあった。暮らしを支える道具から、街で楽しめる相棒へ。スーパーカブの守備範囲は、このあたりからさらに広がっていった。

1997年 リトルカブ 2017年まで生産されたロングセラー商品
女性ユーザーでも気軽に乗れるように前後14インチホイールを採用し、車高を30mmダウン。
当時のTALOG 人生いろいろ、カブもいろいろ
リッター180kmの超好燃費を実現したレコードブレーカー、「スーパーカスタム」のデビューは1983年。燃費がスーパーだからのスーパーマン採用はさておき、ここ日本ではいわゆる“角目”よりも“丸目”の方が人気があった。


2025年のファイナルエディション生産終了をもって、50ccのカブは67年の歴史に幕を下ろすことになった。排ガス規制や時代の変化を考えれば仕方のない流れではあるが、1958年から続いてきた50ccスーパーカブの歴史を思うと、やはり大きな節目だ。
ただし、スーパーカブという存在そのものが終わるわけではない。すでにカブファミリーは50ccだけでなく、原付二種や趣味性の高いモデルへと広がっている。街で見かけるカブ、仕事で走るカブ、ツーリングを楽しむカブ、カスタムベースとして愛されるカブ。姿や排気量が変わっても、カブらしさは受け継がれていくはずだ。
50ccを実用車に変え、世界中で働き続け、平成の世ではおしゃれな趣味の乗り物としても輝いたホンダ・スーパーカブ。これほど長く、これほど幅広く愛されたミニバイクは、そう多くない。やっぱりカブは、原付界のレジェンドなのである。

SPEC|HONDA SUPER CUB 50 STANDARD(1999)
全長×全幅×全高:1800×660×1010mm
ホイールベース:1175mm
シート高:735mm
車両重量:79kg
エンジン種類:空冷4スト単気筒
総排気量:49cc
最高出力:4.0ps/7000rpm
最大トルク:0.48kgm/4500rpm
燃料タンク容量:4.0L
燃費:130km/L(30km/h定地走行テスト値)
変速機形式:4速ロータリー
ブレーキ(前・後):ドラム・ドラム
タイヤ(前・後):2.25-17・2.25-17
価格:15万5000円
※スペックは1999年モデル「50スタンダード」
現在は「新基準原付」モデルが活躍中

2025年には原付一種の新たな区分基準(新基準原付)に適合した「スーパーカブ110 Lite」「スーパーカブ110 プロ Lite」「クロスカブ110 Lite」を発売。1100ccモデルをベースに最高出力を抑えるなど、新基準原付の法規に適合。スーパーカブ50シリーズに比べ、出力、トルクともに向上したことでよりスムーズな加速性能を実現している。また、足周りには前後輪にキャストホイールとチューブレスタイヤを標準装備し、メンテナンスのしやすさにより配慮したモデルになった。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年3月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】