カブブームの火付け役は、スタンダードにして傑作だった

スーパーカブを語るなら、まず少しだけ歴史を振り返っておきたい。
生活に密着したビジネス車として長年認識されてきたスーパーカブだが、1997年にはリトルカブが登場するなど、次第にプライベートユースへもファン層を広げていった。世界に目を向ければ、その存在感はさらに大きい。2017年にはスーパーカブシリーズの世界生産累計が1億台を突破している。
そして国内のスーパーカブに大きな転機が訪れたのが2009年。スーパーカブ90に代わるモデルとして、スーパーカブ110(型式JA07)が登場した。新設計のバックボーンフレームに110ccのPGM-FIエンジンを搭載し、ピストン裏へオイルを噴射する機構や2段クラッチシステムなどを採用。フロントサスペンションも従来のボトムリンク式から一般的なテレスコピック式へ変更されるなど、大幅な刷新が図られた。
2012年にはJA10へフルモデルチェンジ。ヘッドライト形状を角目として、“ニューベーシックカブ”をコンセプトに、実用性、経済性、快適性に加えて求めやすい価格も追求した。
さらに2017年のJA44では、生産拠点を中国から熊本製作所へ戻し、丸目ヘッドライトを再び採用(JA07に比べて小ぶりになった)。カブらしい親しみやすいスタイルへ回帰した。
そして2022年、現行型のJA59へ。ロングストロークエンジンを新採用し、足周りもフロントブレーキがディスク化され、キャストホイール+チューブレスタイヤと、実用性がさらに高められた。2009年のJA07から数えれば、スーパーカブ110は四世代目へ進化したというわけだ。

2009年
スーパーカブ110(JA07)
FI & 110cc化で全面刷新!
カブ90の上位互換として、国内専用モデルとして開発。低フリクションエンジンやLEDヘッドライトなど、新世代にふさわしいスペックだ。

2012年
スーパーカブ110(JA10)
角目になってリーズナブルに!
生産拠点を日本から中国に移し、リーズナブルな価格を実現した二代目(24万9900円→22万8000円)。角目ヘッドライトが特徴だ。

2017年
スーパーカブ110(JA44)
丸目に戻って原点回帰!
生産拠点を日本(熊本県)に移して再出発。LEDヘッドライトも丸目になり親しみやすい雰囲気に。シート素材も最適化し座り心地も良い。
エンジンも足周りも進化! 現行スーパーカブ110はココがすごい
現行JA59でまず注目したいのがエンジン。従来のボア50.0mm×ストローク55.6mmから、ボア47.0mm×ストローク63.1mmへとロングストローク化された109ccエンジンを採用している。最高出力は8.0ps/7500rpm、最大トルクは0.90kgf・m/5500rpm。WMTCモード燃費は67.9km/Lだ。
見た目以上に大きく変わったのが足周りだ。長年カブの象徴でもあったスポークホイール+チューブタイヤから、前後アルミキャストホイール+チューブレスタイヤへ変更。フロントブレーキもドラム式からディスク式となり、フロントのみに作用する1チャンネルABSを標準装備した。
そして地味だけど、一度使うとありがたさを感じるのがメーター。ギヤポジション表示が加わり、「今何速だっけ?」がひと目で分かるようになった。時計も表示できるなど、毎日の足としての実用性もしっかりアップしている。
こうして並べると、現行110は単に昔のカブを現代風にしただけではない。エンジン、ブレーキ、ホイール、メーターと、実際に乗ったときに効く部分がコツコツ進化している。
それでも、またがったときの雰囲気や使い勝手にはちゃんと「カブ」なのである。この変わりすぎない進化こそ、スーパーカブ110らしさなのかもしれない。
現在のスーパーカブ110(JA59)は車両重量101kg、燃料タンク容量4.1L。グリントウェーブブルーメタリック、タスマニアグリーンメタリック、バージンベージュ、クラシカルホワイトの4色が設定されている。
【ココが進化した①】ロングストロークの109ccエンジン
現行JA59は、ボア47.0mm×ストローク63.1mmのロングストローク型109ccエンジンを搭載。最大トルクと燃費性能の向上を狙いながら、排出ガス規制にも対応している。

最高出力は8.0ps/7500rpm、最大トルクは0.90kgf・m/5500rpm。毎日の通勤からちょっとした遠出まで、カブらしい扱いやすさと頼もしさを両立している。
【ココが進化した②】フロントディスク+ABSを標準装備
足周りで分かりやすい進化がフロントブレーキ。従来のドラム式からディスク式へ変更され、フロントに作用する1チャンネルABSも標準装備となった。 Honda公式でも、現行スーパーカブ110は前輪ABSを装備すると明記されている。

フロントはディスクブレーキ化され、1チャンネルABSも装備。見た目以上に、現行110を象徴する大きなアップデートだ。
【ココが進化した③】キャストホイール+チューブレスタイヤ
カブといえば細いスポークホイール、というイメージを持つ人も多いはず。でもJA59では前後17インチのアルミキャストホイールを採用し、タイヤもチューブレス化された。Hondaは、パンク時の修理がしやすいこともメリットとして挙げている。

スポーク式からキャストホイールへ。クラシカルなスタイルを残しながら、足元はしっかり現代仕様だ。
【ココが進化した④】ギヤポジ表示で実用性アップ
メーターにも現代化の波が来ている。ギヤポジションと燃料計を常時表示し、時計、TRIP、走行距離、平均燃費などを切り替えて確認できる液晶表示を装備。「今、何速だっけ?」がひと目で分かるのは地味にありがたい。

丸型メーターの雰囲気はそのままに、液晶表示を追加。ギヤポジション、燃料計、時計など、日常で欲しい情報が見やすくまとまっている。
【実用装備】大きなリアキャリアもやっぱりカブ!
新しくなった部分だけではなく、昔から続く“カブらしい便利さ”も健在。大きなリアキャリアは、買い物からツーリングまで幅広く活躍。レジャー用品などを積むのに十分なサイズだ。

大きくフラットなリヤキャリアはスーパーカブの伝統装備。ボックスを装着したり、荷物を積んだりと使い方は自由自在。
働く「110プロ」、原付免許で乗れる「110 Lite」もある!
スタンダードの110を中心にしつつ、現在のスーパーカブファミリーにも軽く触れておきたい。
スーパーカブ110プロ
配達・配送などの業務を想定した働くカブ。14インチのキャストホイール、大型フロントバスケット、大型リアキャリアなどを備え、積む・降ろす・配るといった動作をしやすくしている。110ccロングストロークエンジンやフロントディスク+ABSも採用。価格は39万6000円。

大型フロントバスケットと前後14インチホイールが特徴の110プロ。仕事で使うための装備を徹底している。
スーパーカブ110 Lite
そして2025年12月、新基準原付に対応するスーパーカブ110 Liteも登場した。

109ccエンジンをベースに最高出力を3.5kW以下に抑え、【新基準原付】として原付免許で運転できるモデル。スーパーカブ110 Liteに加え、業務向けのスーパーカブ110プロ Liteも用意されている。ギヤポジションや時計、平均燃費などを表示するメーターも備える。
便利で、丈夫で、気軽。それでいて、走りや安全装備は時代に合わせてしっかり進化している。スペックだけを見ればもっと速いバイクはいくらでもある。でも毎日乗れて、仕事にも遊びにも使えて、乗るほどに「これでいい」ではなく「これがいい」と思わせてくれる。
やっぱりスーパーカブ110は、“良心のカタマリ”なのである。

スーパーカブ110主要諸元
型式:8BJ-JA59
総排気量:109cc
最高出力:8.0ps/7500rpm
最大トルク:0.90kgf・m/5500rpm
車両重量:101kg
燃料タンク容量:4.1L
変速機形式:常時噛合式4段リターン(停止時ロータリー式)
価格:35万2000円(税込)
※この記事は月刊モトチャンプ2025年8月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】
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