連載

【歴史を飾ったライバル対決】

軽のパワー競争に火をつけた三菱の4代目ミニカターボ

1970年代の排ガス規制強化とオイルショックを乗り越えた1980年代を迎えると、高級車やスポーツモデルのみならず、軽自動車にも高性能・高機能化時代が到来した。さらに、軽自動車の規格変更によってエンジン排気量が360cc→550cc(1976年)や車体サイズが全長3200mm→3300mm(1980年)に拡大され、軽自動車にもパワーとサイズに余裕が生まれ、若者を対象にした楽しさやスポーティさが求められるようになった。

1969年の2代目ミニカ70(上)/1971年ミニカスキッパー(下)
1971年のミニカ71(上)/1977年の4代目ミニカami55(中)/1984年の5代目ミニカ

そのような中で、1983年3月に三菱の4代目ミニカシリーズの「ミニカ・エコノ」と「ミニカ・アミL」に、軽自動車初のターボエンジンが搭載された。排気量550cc 直2 SOHCエンジンに世界最小の三菱重工製ターボを装備して最高出力39ps/最大トルク5.5kgmの高出力を誇ったのだ。

三菱のターボモデルを追うように、ダイハツは1983年10月に“ペパーミント・ターボ”と謳った「ミラターボ」を投入。エンジンは、550cc 直2 SOHCターボで、最高出力41ps/最大トルク5.7kgmを発揮した。対するスズキは、1985年10月に最高出力44ps/最大トルク5.9kgmを発揮する550cc 直3 SOHCインタークーラーターボエンジンを搭載した「アルトターボ」を発売した。

ここから、3大メーカーによる本格的な軽パワー競争が始まった。

出力自主規制値64psのキッカケとなったアルトワークス

1984年9月にデビューした「アルトワークス」のベースとなった2代目「アルト」

スズキ2代目「アルト」の高性能化第1弾は、上記の通り1985年10月の「アルトターボ」で、これはキャブ仕様だった。第2弾として、当時他社もまだキャブ仕様だったのに対し、EPI(電子制御噴射)仕様のDOHCエンジンを搭載した「アルト・ツインカム12RS」を1986年2月に発売。NA(自然吸気)エンジンながら、最高出力42ps/最大トルク4.2kgmを発揮した。また、EPI化によってアルトターボの出力は、48ps/6.5kgmに向上して、当時の最強を誇った。

1987年2月にデビューしたスズキ「アルトワークス」

そして、アルトターボとツインカムRSを合体させた高出力化の集大成として、1987年2月に登場したのが、現在も高い人気を誇る高性能モデル「アルトワークス」である。

アルトワークスは、排気量550cc直3 DOHCエンジンにインタークーラーターボを搭載した軽初となるツインカムターボエンジンを搭載、トランスミッションは5速MT。EPIに加えて、ESA(電子進角)、水冷オイルクーラーと当時の最新技術を盛り込んだ高性能エンジンは、最高出力64ps/7400rpm、最大トルク7.3kgm/4000rpmを発生、レッドゾーンはなんと9500rpm以上というスパルタンなモデルだった。

スズキ「アルトワークス RS/R」
スズキ「アルトワークス RS/R」

アルトワークスは、FFの「RS-X」とフルタイム4WDの「RS-R」を用意し、特に4WDの「RS-R」が若者の間で大人気となり、アルトワークスはピークで年間8.5万台超の販売を記録した。

車両価格は87.5万円。当時の大卒初任給は、12.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約161万円に相当する。

もともとアルトワークスは、もっと高出力(78ps?)で発売を計画していたが、当時社会問題化した交通事故増加の一因がクルマの高出力化と考えられていたことから運輸省が待ったをかけ、アルトの最高出力64psが軽自動車の出力自主規制値となったのだ。

ミラターボTR、ミラターボTR-XXと続いたダイハツの高性能化

1983年10月にデビューした「ミラターボ」

ダイハツは、初代「ミラ」で設定された「ミラターボ」に続いて、1985年8月に2代目へのモデルチェンジと同時にさらに高性能化した「ミラターボTR」を投入した。

1987年8月に最高出力64psを達成した「ミラターボTR-XX」

パワートレーンは、最高出力52ps/最大トルク7.1kgmを発揮する550cc 直3 SOHCインタークーラーターボエンジンと5速MTの組み合わせ。エンジン本体についても、吸気ポートの改良や燃焼室のコンパクト化などによって、燃焼効率や吸気効率が改良されて性能向上に寄与した。

1987年8月に最高出力64psを達成した「ミラターボTR-XX」

そして同年10月、さらにスポーティモデルの決定打となる「ミラターボTR-XX」を投入。パワートレーンはTRと同じだが、外観にはエアロパーツを装備、TRよりもトレッドを5mm拡大、車高を15mmダウンしたことで、よりスポーティさが増した。

1987年8月に最高出力64psを達成した「ミラターボTR-XX」

さらに1987年8月にタービンを水冷化、同年10月にはEFI仕様を追加、そして1988年3月にはエンジンを最新化したEFI仕様で、ついに出力自主規制値の64㎰/最大トルク8.5kgmに到達した。

駆動方式はFFで、車両価格は、85.5万円に設定された。

革新的な5バルブエンジンを搭載した三菱ミニカ・ダンガンZZ

1983年3月にデビューした軽初のターボエンジン搭載「ミニカエコノターボ」、軽高性能競争の火付け役か
ミニカami L
1983年3月にデビューした軽初のターボエンジン搭載「ミニカエコノターボ」

1983年3月にデビューした軽自動車初のターボエンジンを搭載した4代目ミニカシリーズ「ミニカエコノターボ」と「ミニカ・アミLターボ」に続いて、三菱はその後も継続的に高出力化を進めた。

ミニカシリーズは、1984年に5代目へモデルチェンジし、550cc 直2 SOHCのターボモデルはインタークーラーの装備とターボの改良によって最高出力42ps/最大トルク5.8kgmへと進化。1984年のマイナーチェンジでは、ターボモデルは最高出力50ps/最大トルク6.7kgmまで向上した。

1989年1月に最高出力64psを達成してデビューした6代目ミニカ「ダンガンZZ」

そして1989年1月には、ミニカシリーズは6代目にモデルチェンジ。6代目ミニカには、量産車として世界初となる5バルブの550cc 直3 DOHCインタークーラーエンジンを搭載したスポーツモデル「ミニカ・ダンガンZZ」が設定された。

1989年1月に最高出力64psを達成してデビューした6代目ミニカ「ダンガンZZ」に搭載されたエンジン

軽の小さなボアに5バルブ(吸×3、排×2)を設置することの技術的なハードルは高いが、最大のメリットはこのクラスのボアサイズでは5バルブが最も吸・排気バルブの開口面積が大きくとれ、吸気充填効率の向上に繋がること。さらに、傘径(質量)の小さな吸気バルブは、高回転域でのバルブの追従性を高め、高回転までエンジンが回せ、高回転・高出力と低燃費をハイレベルでバランスできるのだ。

1989年1月に最高出力64psを達成してデビューした6代目ミニカ「ダンガンZZ」

ダンガンZZのパワートレーンは、出力自主規制値の64ps/最大トルク7.6kgmの550cc 直3 DOHCインタークーラーターボエンジンと5速MTの組み合わせ。駆動方式はFFで、車両価格は99.8万円に設定された。

1989年1月に最高出力64psを達成してデビューした6代目ミニカ「ダンガンZZ」のリヤビュー
1989年1月に最高出力64psを達成してデビューした6代目ミニカ「ダンガンZZ」のコクピット

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現在の技術でインタークーラーターボとDOHCを組み合わせれば、最高出力は容易に64psを超えるが、いまだに自主規制値64psが継続されている。その理由は、軽が高出力化してコンパクトカーとの差がなくなると、軽自動車を税制優遇する意味がなくなり、もし軽の税制優遇が見直されれば、軽の大きなメリットがなくなるのでメーカーとしてはこれを避けたいので、あえて自主規制を守ることを選択しているのだ。その他にも、今はかつてのような軽の高出力モデルの需要がない、構造的に高速域での衝突安全確保に限界があるということも、要因であろう。

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