基本情報


MT-25とMT-03は、ヤマハ・MTシリーズの中排気量帯を担うモデルであり、国内では一般に「中型バイク」と呼ばれるクラスに位置する。いずれも普通二輪免許で運転できるネイキッドスポーツだ。
両車とも水冷・4ストローク・DOHC・4バルブの並列2気筒エンジンを搭載する。スーパースポーツモデルのYZF-R25/YZF-R3と基本プラットフォームを共有しながら、アップライトなハンドル位置とMTシリーズらしいネイキッドスタイルを採用している。
現行型は2025年4月24日に発売された。従来型からアシスト&スリッパークラッチ、スマートフォン連携機能、USB Type-A端子を追加したほか、シートとリア周辺の形状も見直されている。
両車の車体寸法、シート高、車両重量、燃料タンク容量は共通している。MT-03は排気量と最高出力で上回る一方、MT-25は車検が不要な軽二輪に分類される点が大きな違いだ。
どちらも普通二輪免許で運転できるが、普通自動車免許や原付免許では運転できない。
主要諸元
| 項目 | MT-25 ABS | MT-03 ABS |
| 全長/全幅/全高 | 2,090mm/755mm/1,075mm | |
| シート高 | 780mm | |
| 軸間距離 | 1,380mm | |
| 最低地上高 | 160mm | |
| 車両重量 | 166kg | |
| 乗車定員 | 2名 | |
| エンジン種類 | 水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ・直列2気筒 | |
| 総排気量 | 249cm³ | 320cm³ |
| 内径×行程 | 60.0mm×44.1mm | 68.0mm×44.1mm |
| 圧縮比 | 11.6:1 | 11.2:1 |
| 最高出力 | 26kW(35PS)/12,000rpm | 31kW(42PS)/10,750rpm |
| 最大トルク | 23N・m/10,000rpm | 30N・m/9,000rpm |
| 燃料タンク容量 | 14L | |
| 使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン | |
| WMTCモード燃費 | 26.5km/L | 26.4km/L |
| 変速機形式 | 常時噛合式6速/リターン式 | |
| フレーム形式 | ダイヤモンド | |
| 前後サスペンション | 倒立式テレスコピック/スイングアーム | |
| 前後ブレーキ | 油圧式シングルディスク/油圧式シングルディスク(ABS) | |
| 前タイヤ | 110/70-17M/C 54S(チューブレス) | 110/70R17M/C 54H(チューブレス) |
| 後タイヤ | 140/70-17M/C 66S(チューブレス) | 140/70R17M/C 66H(チューブレス) |
| メーカー希望小売価格 | 63万2,500円 | 68万7,500円 |
| 車検 | 不要 | 必要 |
ヤマハ・MT-25、MT-03の魅力

両車の魅力は、同じ扱いやすい車体から、用途に合わせてエンジンを選べることである。
MT-25は最高出力を12,000rpmで発生する高回転型で、回転数を上げながら走る楽しさがある。市街地では穏やかに扱え、ワインディングではギアを積極的に選びながら並列2気筒エンジンを使い切れる。
MT-03は車体重量を増やすことなく、42PSと30N・mを発生する320cm³エンジンを搭載している。発進加速や追い越し、高速道路の合流ではMT-25より余裕があり、二人乗りや高速ツーリングを想定しているのであれば、おすすめしたい。
前述したとおり、車両重量はともに166kg、シート高は780mmである。シート前方が絞り込まれているため足を地面へ下ろしやすく、取り回しにも過度な緊張を強いられにくい。初めて普通二輪クラスへ乗り換える人にとっても親しみやすい構成だ。
37mm径の倒立式フロントフォーク、左右非対称のロングスイングアーム、KYB製モノクロスリアサスペンションなど、車体装備も本格的である。298mm径のフロントディスクブレーキとABSも標準装備され、街乗りだけに用途を限定したモデルではない。
2025年モデルでは、アシスト&スリッパークラッチによってクラッチレバーの操作荷重が軽減された。急なシフトダウン時に発生する後輪の跳ねも抑えやすいため、市街地の頻繁な変速からワインディングまで恩恵を受けられる。
ヤマハ・MT-25、MT-03の気になるポイント
最初に理解しておきたいのは、MT-25とMT-03はネイキッドモデルであるため走行風を直接受けやすいことだ。短距離では開放感につながるが、高速道路を長時間走ると上半身の疲労が増えやすい。高速ツーリングが中心なら、スクリーンの追加も検討したい。
エンジンは両車とも回転を上げて性能を引き出す性格である。特にMT-25は、低回転のままアクセルを開けても大型車のような強い加速は得にくい。変速回数を抑えてゆったり走りたい人より、ギアを選びながら走ることを楽しめる人に適している。
収納スペースも限られている。ヘルメットやレインウェアを車体へ収納することは難しく、通勤や買い物で使う場合はリアボックスやバッグが必要になる可能性が高い。
また、現行型にUSB端子が用意されたとはいえ、規格はType-Aである。スマートフォン側がUSB Type-Cのみの場合は、対応するケーブルを別途準備しなければいけない。
電子制御装備についても、上位MTシリーズのようなライディングモードやIMU連携制御を備えたモデルではない。シンプルさは長所でもあるが、最新の電子装備を重視する人には物足りなく感じられるだろう。
ヤマハ・MT-25、MT-03 中古市場
2026年8月5日時点のグーバイクでは、MT-25が約391台、MT-03が約229台掲載されている。掲載車両全体の平均価格は、MT-25が約50万円、MT-03が約55万円である。
ただし、この平均価格には中古車だけでなく、新車の在庫車や注文販売車も含まれている。純粋な中古車だけの平均ではないため、予算を立てる際は年式や走行距離ごとの販売価格を確認する必要がある。
MT-25は初期型から現行型まで流通量が多く、30万円台から選択肢を探しやすい。2020年以降のモデルは40万円台が中心となり、走行距離が少ない車両や高年式車では50万円台に入る。
MT-03はMT-25より掲載台数が少なく、全体の価格帯もやや高い。初期型は30万~40万円台、2020年以降のモデルは40万~50万円台が目安になる。320cm³エンジンを搭載する割にMT-25との価格差が小さい車両もあり、車検を許容できるなら比較対象に入れやすい。
ヤマハ・MT-25、MT-03 中古 注意点
中古車選びでは、年式による装備差、車両の状態、改造・整備履歴、購入後に発生する費用の4点を分けて確認することが重要だ。
まず、年式による装備の違いを把握しておきたい。2020年モデルではフロントデザインが大きく変更され、LEDヘッドライトや倒立式フロントフォークが採用された。2025年モデルでは、アシスト&スリッパークラッチ、スマートフォン連携機能、USB端子などが追加されている。年式によって装備内容が異なるため、販売価格だけで判断しないことが大切である。
2019年モデル以前の国内仕様にはABSが装備されておらず、2020年モデル以降は前後ABSが標準装備されている。ABSを重視する場合は、モデル年式や型式を車両情報と現車で確認したい。
車両状態については、エンジン、冷却系、駆動系、足回り、車体外装の順に確認すると分かりやすい。エンジン始動後の異音やアイドリングの乱れに加え、冷却水の漏れやオーバーヒートの形跡がないかを確認したい。クラッチの滑りや変速時の引っ掛かりについても、可能であれば実際に操作して確かめることが望ましい。
足回りでは、フロントフォークからのオイル漏れやステアリング操作時の引っ掛かり、チェーンとスプロケットの摩耗が主な確認ポイントとなる。タイヤは残り溝だけでなく製造年も確認し、長期間交換されていない場合は購入後の交換費用を見込んでおきたい。ハンドルやレバー、ステップ、エンジンカバーに目立つ傷がある車両は、転倒歴の有無も販売店へ確認するべきである。
続いての確認項目は、改造内容と整備履歴だ。マフラーやフェンダーレスキット、電装品などが取り付けられた車両では、保安基準への適合状況に加え、配線処理や純正部品の有無が重要になる。不適切な電源分岐や配線処理は、バッテリー上がりや電装品の接触不良につながる可能性がある。
整備記録簿が残っている場合は、消耗品の交換時期や定期点検の実施状況も確認できる。MT-25とMT-03では、過去にECUプログラム、燃料タンク、オイルポンプ、ラジエターホースなどに関するリコールやサービスキャンペーンが案内されている。車台番号から対象車両に該当するかを調べ、必要な作業が完了しているか販売店へ確認したい。
最後に、購入後の費用も考慮する必要がある。特にMT-03では、車検の残存期間が重要な確認項目となる。購入直後に車検を迎える車両は、車両価格が安くても、整備費用や法定費用を含めると実質的な負担が大きくなる場合があるため忘れずに確認しておきたい。
ヤマハ・MT-25、MT-03の中古車が安い理由
MT-25とMT-03の中古車は、同クラスの極端な希少車と比較すれば安い部類に入る。その主な理由は、2015年から長期間販売され、中古車の供給量が十分にあるためだ。
前述したとおり、特にMT-25は掲載台数が多い。流通量が豊富なモデルは、希少性によって相場が押し上げられにくく、年式や走行距離に応じて価格が下がりやすい。
2020年と2025年に装備が大きく更新されたことも、初期型の価格を下げる要因である。新しいフロントデザインや倒立式フォーク、アシスト&スリッパークラッチなどを求める購入者が高年式車へ流れるため、従来型は価格面で差を付けなければ売りにくい。
また、250~400cm³クラスは競合車が多い。ホンダ・CB250RやCBR250RR、カワサキ・Z250やNinja 250、スズキ・ジクサー250など、同じ排気量帯のさまざまなモデルと比較されやすい。自社のYZF-R25/YZF-R3も選択肢になるため、MTだけが高値を維持し続ける市場ではない。
MT-03については車検が必要であることも相場に影響する。車体価格がMT-25に近くても、維持費を重視する購入者はMT-25を選びやすい。その結果、排気量や出力の差に対して中古価格差が小さくなる場合がある。
安価な車両が多いことは、重大な欠陥を抱えたモデルであることを意味しない。販売期間の長さ、供給量、モデル改良、競合の多さによって、年式相応の価格になっていると考えるのが妥当である。
ヤマハ・MT-25、MT-03の変遷
MTの名称が初めて用いられた量産車は、2005年に欧州で発売されたMT-01である。続いて2006年には、660cm³単気筒エンジンを搭載する初代MT-03が欧州で登場した。この初代MT-03は、現在の320cm³並列2気筒モデルとは直接的なつながりを持たない別系統の車種である。
現在につながるMTシリーズは、2013年に欧州を中心に販売が始まったMT-09と、2014年に登場したMT-07によって本格的に確立された。その後、YZFシリーズの車体を活用した小排気量モデルが加わり、シリーズの対象が初心者や若年層にも広がっている。

国内向けのMT-25と現行系MT-03は、2015年10月10日に発売された。開発コンセプトは「大都会のチーター」で、YZF-R25/YZF-R3をベースに、市街地での俊敏性とMTらしいデザインを組み合わせている。
2017~2019年はカラーやグラフィックの変更が中心だったが、2020年に最初の大幅な改良を受けた。フロントマスクを現在につながるデザインへ変更し、LEDヘッドライト、倒立式フロントフォーク、液晶メーターなどを採用している。
その後は排出ガス規制への対応やカラー変更を重ね、2025年にはアシスト&スリッパークラッチ、スマートフォン連携機能、USB端子を追加した。フルモデルチェンジで基本構造を一新するのではなく、2015年型の扱いやすいプラットフォームを段階的に熟成させてきたモデルである。
ヤマハ・MT-25、MT-03は「やめとけ」と言われるバイクなのか
MT-25とMT-03は、一律に「やめとけ」と評価すべきバイクではない。ただし、用途によっては別のモデルを選んだほうが満足しやすい。
高速道路を長時間走り、走行風をできるだけ避けたい場合には、カウルを備えるYZF-R25/YZF-R3やツアラーのほうが適している。低回転から強い加速を求める人や、変速操作を減らしたい人も、特にMT-25では物足りなさを感じる可能性がある。
通勤用として大きな収納スペースを求める場合や、最新の電子制御を重視する場合も、優先順位を見直したい。
一方、市街地で扱いやすく、休日にはワインディングやツーリングも楽しめる1台を探しているのであれば有力な候補だ。維持費と高回転型エンジンの楽しさを重視するならMT-25、同じ車体サイズで加速と高速走行の余裕を求めるならMT-03が適している。
まとめ
MT-25とMT-03を選ぶ際は、排気量の大小だけで判断しないことが大切である。
新車価格差は5万5,000円だが、MT-03には車検が必要であり、長期的な所有条件は同じではない。一方、高速道路や二人乗りを頻繁に利用するなら、MT-03の余裕は維持費の差を受け入れるだけの価値になり得る。
中古車では、安さを優先するなら初期型、装備と価格のバランスを求めるなら2020年以降、スマートフォン連携や軽いクラッチ操作まで求めるなら2025年以降が判断の目安となる。
最終的には、日常で最も多く走る道路を基準に選ぶべきだ。街中と一般道が中心ならMT-25、高速道路を含む行動範囲の広さを重視するならMT-03という選び方が、購入後の後悔を抑えやすい。


