連載

西川淳の自動車1Weekダイアリー

プレタポルテとオートクチュール

よくよく考えてみるとクルマの使い道は人それぞれ本当に違っていて、そこにファッション的な意味合いまで加えると、これはもう本来オートクチュールでなければならない性格の商品であると思う。そのうえ、いうまでもなくたいへん高価な品物なのだ。であるにも関わらず、大量生産によって“少しは安く”買えるというマジックに魅せられた我々ユーザーは、そのごくわずかな黎明期の事例を除き、長いあいだプレタポルテで我慢させられてきた。否、本来的には我慢できなかったからこそ、たくさんのメーカーやブランドが存続し、さまざまなカタログが目の前に並び、マイナーチェンジやフルモデルチェンジが繰り返されたことで、本当に自分にあった1台を見つけるという理想へ近づく“実感”をえてきた。言ってみれば、ユーザーに幻想を追いかけさせることで、今や最も大きな産業のひとつへと発展したというわけだ。

本当はオートクチュールでなければ満足できないはず(=一人ひとりの使い方が全く違う機能品であり、ファッション品である)のに、とりあえず選りすぐりではあるけれどもプレタポルテで我慢していただく。このギャップこそが、自動車産業のサスティナビリティを支えてきた。ドレスアップやチューニングはさしずめ、そのギャップを本能的に知るクルマ好きのささやかな個人的抵抗というわけだった。昨今、高級ブランドを中心にスペシャルオーダーやカスタムオーダーが増えている事実もまた、その本質的なギャップから目をそらす作戦のひとつであるとみることも可能だろう。レストモッドもそうだ。だからこそ自分に合った1台を探す一生のジャーニーを、我々は積極的に楽しんだ方が良い。

2026年8月第2週

2026年8月8日(土)晴れ

BYD ラッコ
BYD ラッコ
友人が運営するイベントにて。
友人が運営するイベントにて。

早朝5時半に「BYD ラッコ」で東京を出発、京都を目指す。盆休みがスタート、という方も多かったのだろう、東名高速、伊勢湾岸、新名神といういつものルーツはところどころ大渋滞で、20km以上というのが4回もあった。ただでさえ長時間勝負だったわけだが、こちとら電池容量の小さな軽BEVのラッコだ。はなから長期戦覚悟なのでかえって気分は落ち着いていた。結局、充電は富士川SA30分(朝メシ)、浜名湖15分(アイス)、長島PA30分(ランチ、こちらの冷し中華は最高)の3回で、ドライブ所要時間は9時間半。高速電費は9kmちょい。新東名の120km/h区間は“速く走れないストレス”が溜まりそうで久々に旧東名を走ったけれど、やっぱり景色を楽しめる旧東名は良いねぇ。ラッコを自宅に置いて神戸三宮へ。友人が運営するイベントを見学し、大阪梅田へ。会食ののち帰宅。

2026年8月9日(日)晴れ

北野天満宮の夏祭りにて。
北野天満宮の夏祭りにて。

久しぶりの完全休養日、といっても貧乏性なので原稿や講演の構想や下書きを始めたり、懸案のプロジェクトを再検討してみたり。夕方、北野天満宮の夏祭りへ。

2026年8月10日(月)曇り

梅田にて。
梅田にて。

午前中、秘密のガレージの見学に。午後から大阪でミーティング。夕方、和歌山の友人たちと梅田で会食。そのまま新大阪泊。

2026年8月11日(火)曇り

台風を心配しつつ、夕方から千葉で開かれるイベントにゲスト登壇するため新幹線で東京へ移動。道中、台風のためイベントが順延されたとの連絡。なかなか動きの奇妙な台風だったから仕方ないか。雨風も強くなってきたので、この日はホテルでゆっくり原稿執筆。都内泊。

2026年8月12日(水)曇り

BMW 330e
BMW 330e

雨の収まる気配もなく、午前中は常宿の部屋で原稿執筆。昼前に少し明るくなった頃を見計らって「BMW 330e」で京都へ向け出発した。4気筒ガソリン+電気モーターのPHEVで、現行型3シリーズもそろそろ乗り納め、思い出作りドライブとなった。このところBEVが続いたので、エンジン車の“アシが延びる”感覚になんだか安らぎさえ覚えて、やっぱり私は古い世代のクルマ好きなのだと再認識。大きくなったとはいえ3シリーズの大きさは相対的にはまだまだ使いやすいレベルに収まっており、それが高速道路上でも“ちょうどいいサイズ”感となって妙に落ち着く。ただし4気筒エンジンは特に官能的ではなく、街中ではちょっとばたつく乗り心地もあった。PHEVの完成度としてはもうひと踏ん張り必要というレベルだ。PHEVが理想という人もいるけれど、ことミッドサイズ以下のサルーンやワゴンでは、ICEVかBEV、どちらかに割り切った方が良いクルマ体験を得ることができると思う。京都まで一気にドライブ。流石にはやい。

2026年8月13日(木)曇り時々雨

BYD ラッコ
BYD ラッコ

早朝より北野天満宮でラッコの撮影。散髪。午後から自宅にて原稿。

2026年8月14日(金)晴れ

330eの一般道テストを兼ね、かねてから気になっていた福井県小浜市のレストラン「ブルーライトヨコヤマ」さんへ。お盆休みの真っ最中とあって、福井県のビーチは家族連れで大賑わい。ヨコヤマさんでは“タヤリン”という自家製の卵パスタにアサリクリームのソースをかけたスペシャルティをいただいたが、これがもう最高だった。ほか季節の皿も美味。京都市内から周山街道を抜けて小浜へ、帰りは鯖街道から大原、京都市内へという5時間半の一般道テストコース、これから定期的に走ることになりそうだ。ちなみにこれまでは、京都から琵琶湖、湖東から信楽、伊賀を抜け、南山城から木津川、宇治という南まわりの4時間半コースが主だった。

2026 8/8〜2026 8/14

走行距離 約1100km 試乗車数 3台

2025 11/1〜2026 8/14累計

走行距離 約4万6300km 試乗車台数 185台

BYD ラッコ

お寿司屋さんの夢を見て日本人のプライドを考えた【西川淳の自動車1WeekダイアリーVol.39】

スーパーカー界の重鎮、モータージャーナリスト西川淳。この連載は、昨年還暦を迎えた氏が、日々どんなクルマに乗って、何を感じたのか徒然なるままに語るものである。果たして今週はどこで何をして過ごしたのか?

連載 西川淳の自動車1Weekダイアリー

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京都〜東京往復で「BEVは電化製品」という事を痛感【西川淳の自動車1WeekダイアリーVol.38】