転倒事故を防ぐ緊急用装置!常用で発生するバッテリー問題

バイクの右ハンドル周辺をよく見てみると、アクセルグリップのすぐ近くに赤色の目立つスイッチが配置されていることに気づくだろう。
これはキルスイッチと呼ばれる装備であり、親指ひとつで簡単に操作できる位置にあるため、エンジンを止める際の便利なスイッチとして日常的に使っているライダーも散見されるが、そもそも本来の役割はなんなのだろうか。
実は、キルスイッチは転倒や事故などの非常事態が発生した際に、ライダーがグリップから手を離さずに素早くエンジンを強制停止させるための緊急用装置として装備されている。

たとえば、走行中に転倒してスロットルが戻らなくなったり、車体の下敷きになってメインキーに手が届かなくなったりした場面において、親指ひとつで確実にエンジンの回転を止め、火災や二次被害の発生を防ぐことがこのスイッチの最大の目的である。
そのため、あくまで緊急時の命綱として機能するものであり、日常的なエンジンのオンとオフを繰り返すために設けられているスイッチというわけではないのだ。
もし普段の停車時にキルスイッチを常用してしまうと、エンジン音は消えるものの車両の電源自体は落ちていない状態、つまりヘッドライトやメーターパネルのランプ類が点灯したままになりやすく、そのままバイクから離れてしまうとメインキーの切り忘れに直結しかねない。
その結果、あっという間に電力を消費し尽くしてしまい、いざ出発しようとしたときにはバッテリー上がりに見舞われるリスクが高まるというわけだ。

したがって、手軽だからといって安易に緊急装置でエンジンを止める癖をつけることは、愛車のコンディションを維持する上でも推奨されない行為といえる。
日頃の走行では本来の役割をしっかりと認識し、非常時にだけ確実な操作ができるようにスイッチの存在を意識しておくことがライダーとしての基本となりそうだ。
「かからない」の原因は切り忘れ?基本はメインキー操作でトラブル回避

また、キルスイッチを日常的に操作する癖がついていると、意図せずスイッチがオフになったまま放置してしまうトラブルの原因にもなるため注意しなければならない。
なぜなら、キルスイッチがオフの状態ではセルモーターが回らなかったり、点火プラグに火花が飛ばなかったりするしくみになっているからだ。
実際、ツーリングの休憩後や翌朝の出発時などに、スイッチを切ったこと自体をすっかり忘れてしまい、何度セルボタンを押してもエンジンがかからないと焦るケースは少なくない。
その結果、車両の故障やバッテリー上がりだと錯覚してしまい、ロードサービスを手配した後に単なるスイッチの切り忘れだったと判明する事態も発生しているという。
さらに、キルスイッチの内部接点はメインキーのシリンダーに比べて単純なつくりであることが多く、頻繁に操作を繰り返すことで接点が摩耗して寿命を縮めてしまい、走行中に振動で接点不良を起こして突然エンジンが停止するといった故障を招くおそれもある。

したがって、こうした無用なトラブルを防ぐためにも、普段のエンジン停止は必ずメインキーで行うことをライダーの基本動作として徹底するべきである。
このように、緊急時の命綱としてのキルスイッチの役割を正しく理解し、普段はメインキーで確実にオフにする習慣をつけることでトラブルを未然に防ぎ、安全に愛車を乗りこなすことが大切だ。
愛車のしくみを正しく把握し、状況に応じた適切な操作を日頃から心がけることで、安全で充実したバイクライフをこれからも長く楽しんでいこう。
