跳ね上げ式ドアを採用するのはどんなモデル?

マツダが、小型FRスポーツカーを想定したとみられる新たな車体構造の特許を出願していたことが明らかになった。図面に描かれているのは、フロントにエンジンを縦置きし、後輪を駆動する2シーターのオープンスポーツ。さらに目を引くのが、スーパーカーを思わせる跳ね上げ式ドアである。

マツダ アイコニックSP

果たしてこれは次期「ロードスター」なのか。それとも「MAZDA ICONIC SP(マツダ・アイコニックSP)」の市販化に向けた技術なのか。特許の内容を詳しく見ると、ロードスターとは異なる新たなスポーツカーを想定している可能性も浮かび上がってくる。

マツダ ロードスター次期型 予想GC

今回確認されたのは、ドアの取り付け部分や車体骨格に関する特許だ。

最大の特徴は、一般的な横開きドアではなく、ドア後端を外側へ逃がしながら上方へ持ち上げる「フリップアップ・サイドドア」を想定していること。いわゆるバタフライドアに近い構造で、これまでのマツダ市販スポーツにはなかった装備である。

ただし、特許の核心は派手なドアではない。マツダが取り組んでいるのは、こうしたドアを持つオープンボディで、軽量化と高剛性、衝突安全性をどう両立させるかという部分だ。

オープンカーは固定式ルーフを持たないため、ボディ剛性の確保が難しい。さらに跳ね上げ式ドアには複雑なヒンジが必要となり、その荷重を受け止めるAピラー周辺にも強度が要求される。

そこで特許では、ドアを支えるヒンジピラーとフロントサスペンション取り付け部を近接させ、複数の補強部材によって接続。サスペンションから入力される力をピラーや車体中央へ分散し、重量増加を抑えながら剛性を引き上げる構造が示されている。さらに前面衝突時の荷重をサイドシルなどへ逃がし、キャビンの変形を抑える考え方も盛り込まれている。

パワートレーンは直4縦置き?

ジャパンモビリティショー2023で発表されたICONIC SPはロータリーエンジン搭載を想定している。

興味深いのはパワートレーンだ。

図面では、直列4気筒とみられるエンジンがフロントに縦置きされ、その後方にトランスミッションを配置。まさにロードスターを連想させるオーソドックスなFRレイアウトとなっている。

一方、2023年のジャパンモビリティショーで公開されたアイコニックSPは、2ローターのロータリーEVシステムを搭載するコンパクトスポーツとして登場した。ロータリーエンジンを発電などに利用し、電動駆動を組み合わせる構想で、今回の特許図面とは一見すると異なる。

もっとも、この図面だけで次期スポーツカーが直4エンジンになると判断するのは早い。今回の特許はドアと車体構造が主題であり、描かれたエンジンは搭載例にすぎない可能性がある。

むしろ気になるのは、このバタフライドアがロードスターのキャラクターに合うのかという点だ。

歴代ロードスターが守ってきたのは、軽量、コンパクト、そして比較的手の届きやすいスポーツカーという哲学である。重量とコストの増加につながりやすい跳ね上げ式ドアは、その思想とは必ずしも相性がいいとはいえない。

そう考えると、今回の特許はロードスターそのものではなく、その上に位置する新型FRスポーツを想定したものという見方が面白くなってくる。

候補として真っ先に浮かぶのがアイコニックSPだ。マツダは2025年の事業説明で、同車をブランド価値を体現する「ブランドアイコン」と位置付けている。市販モデルでバタフライドアまで採用すれば、ロードスターとの差別化という意味でも非常にわかりやすい。

さらに別のシナリオも考えられる。次期ロードスターと将来の上級スポーツで車体技術や基本骨格の一部を共有しながら、ロードスターには通常ドア、上級モデルには跳ね上げ式ドアを採用するという展開だ。特許には複数車種への応用を見据えた技術が盛り込まれるケースもある。

特許出願がそのまま市販化を意味するわけではない。それでも、軽量FR、2シーター、オープンボディ、そして跳ね上げ式ドアという組み合わせは興味深い。

次期ロードスターだけでは説明しにくい要素が含まれているだけに、マツダがその先にもう1台のスポーツカーを見据えているのか。今回の特許は、アイコニックSP市販化を含めたマツダのスポーツカー戦略を占う、新たな材料となりそうだ。