後席が広く、荷室も使いやすいのはコンパクトなヴェゼル

カローラクロスの“Zアドベンチャー”は、カローラ誕生60周年を記念して追加された特別仕様車だ。専用デザインの横長ハニカムメッシュグリルが装着され、ロワバンパーやフェンダーアーチなども傷に強いメテオコート塗装のブラック仕上げとなるほか、ウィンドウフレームもブラック塗装のモールドを追加することでアクティブかつスッキリとしたアウトドアスタイルにまとめられている。

ヴェゼル HuNTパッケージも、同じく内外装に専用装飾を加えたモデルだ。外観にはカッパーメタリック塗装のフォグライトガーニッシュなどが追加されるほか、ヴェゼルのラインナップのなかで唯一、ルーフレールが備わる点もHuNTパッケージの特徴となる。

HuNTパッケージの内装はカーキ×ネイビーカラーのコンビシートに変わり、ファブリックの素材には撥水・撥油機能のある“FABTECT(ファブテクト)”を採用。一方、カローラクロスのZアドベンチャーもシート表皮は清涼感ある低彩度グリーン“ミネラルカラー”に変わるが、防水でない点は見逃せない。

両車の基本構造はそれぞれのベース車に準じており、室内寸法や使い勝手はそのままだ。ボディサイズはカローラクロスの方が全体的に一回り大きいが、後席の膝まわりはヴェゼルの方が圧倒的に広い。ただし、頭上空間はカローラクロスの方が拳ひとつぶん広く確保されている。

荷室寸法はカローラクロスが長さ849mm×幅947mm×高さ864mmであるのに対し、ヴェゼルが765mm×1015mm×725mmだ。全長が長いカローラクロスの方が奥行きは大きく取られているが、後席を格納しつつ前席を最前端まで移動させたときの最大荷室長はカローラクロスの1885mmに対して、ヴェゼルは1840mmと大きな差はない。

また、カローラクロスは後席格納状態では床面と背もたれの間に大きな段差ができるが、センタータンクレイアウトとダイブダウンシートの恩恵を受けるヴェゼルはフラットな荷室空間となる。さらにヴェゼルは後席にチップアップ機能が備わるほか、荷室後端に深さ250mmほどの横長の床下収納まで備わる。

カローラクロスも3万3000円のディーラーオプションである“ラゲージアクティブボックス”を追加することで段差は解消できるが、床面が嵩上げされるぶん荷室高は低くなる。少なくとも車中泊用途で使いやすいのはコンパクトなヴェゼルの方と言えそうだ。

トヨタ カローラクロス Z“Adventure”
ボディサイズ=全長4455mm×全幅1825mm×全高1620mm
ホイールベース=2640mm
車両重量=1400kg
タイヤサイズ=215/60R17(前後)

ホンダ ヴェゼル e:HEV X HuNTパッケージ
ボディサイズ=全長4340mm×全幅1790mm×全高1590mm
ホイールベース=2610mm
車両重量=1350kg
タイヤサイズ=215/60R16(前後)

FFモデル同士の比較なら動力性能も燃費性能も僅差

両者のパワートレインは標準モデルとまったくの共通だ。エンジン排気量はカローラクロスが1.8L、ヴェゼルが1.5L と差はあるが、両車のエンジンはどちらもハイブリッドシステムとの併用を前提に全域アトキンソンサイクルで稼働するため、エンジン単体のスペックは動力性能差にほとんど影響しない。

両車のハイブリッドシステムは、カローラクロスはエンジンと最高出力95ps/最大トルク185Nmのモーターを使い分けて走行するシリーズパラレル方式の“THS-II”。対するヴェゼルはエンジンを発電機として用い、低中速はすべて最高出力131ps/最大トルク235Nmのモーターで走行し、高速域ではエンジン直結で走行するシリーズ方式ベースの“e:HEV”だ。

駆動モーターの使い方が違うことによって、動力性能や燃費性能には走行条件に応じて明確な差が表れる。一般用途における動力性能に関しては強力なモーターを搭載するヴェゼルの方が力強く感じやすい。一方で、WLTCモード平均燃費はカローラクロスが26.4km/L(Zアドベンチャー)、ヴェゼルは26.0km/Lとなっており、燃費性能ではカローラクロスが勝る。

ただし市街地モード燃費ではヴェゼルが2.1km/L差で優れるが、郊外モード燃費では2.5km/L差でカローラクロスが上だ。高速モード燃費は25.2km/Lと24.9km/Lでカローラクロスが僅差で優れる結果となる。

しかし4WDのWLTCモード燃費性能はカローラクロスが24.6km/L、ヴェゼルが21.5km/Lとなっており、全速度域で平均3km/Lほどの差を付けてカローラクロスが勝る。

カローラクロスの4WDシステムは最高出力41ps/最大トルク84Nmのモーターで後輪を直接駆動するE-Fourだ。それに対し、ヴェゼルはプロペラシャフトを介して後輪を駆動するため、どうしても駆動ロスが大きくなってしまう。

取り回しに関しては互角と言ってよいだろう。ヴェゼルの上級グレードの最小回転半径は5.5mだが、小径の高扁平タイヤを履くHuNTパッケージは最小回転半径が5.3mとなるうえ乗り心地もややマイルドになる。

対するカローラクロスの最小回転半径は5.2mだ。Zアドベンチャーも下位グレードと同じ高扁平タイヤが装着されるため、ベースとなるZグレードよりも乗り心地の面ではやや優位だ。

トヨタ カローラクロス Z“Adventure”
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1797cc
最高出力=98ps/5200rpm
最大トルク=142Nm/3600rpm
トランスミッション=電気式CVT
駆動方式=2WD(FF)

ホンダ ヴェゼル e:HEV X HuNTパッケージ
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1496cc
最高出力=106ps/6000-6400rpm
最大トルク=127Nm/4500-5000rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

ヴェゼルのHuNTパッケージは装備面でカローラクロスに劣る

カローラクロス Zアドベンチャーの新車価格は366万3000円、ヴェゼル e:HEV X HuNTパッケージは310万8600円となる。

大きな価格差があるのは、カローラクロスのZアドベンチャーが最上級のZグレードがベースであるのに対し、ヴェゼル HuNTパッケージは廉価グレードのXがベースとなるためだ。それにより、両車は搭載装備に大きな差がある。

カローラクロスのZアドベンチャーは、ベースのZグレードでは標準装備となる“ハンズフリーバックドア”がオプションとなってしまうが、運転席はパワーシートであるうえ、前席にはシートヒーターに加えてベンチレーション機能も備わる。最上級グレードがベースとなるだけにディスプレイオーディオも標準装備だ。

加えて、カローラクロスのZグレードは今回の改良でブラインドスポットモニターとアドバンストパーク、ステアリングヒーターが標準装備化されたことで充実度がさらに増している。

対するヴェゼルのHuNTパッケージは、4WD(332万8600円)を選ばなければシートヒーターは装備されず、最上級グレードなら標準装備となるステアリングヒーターやハンズフリーテールゲートも備わらない。ブラインドスポットモニターやマルチビューもオプション装着不可であるうえ、ナビも約23万円の高額オプションだ。

カローラクロス Zアドベンチャーはヴェゼル HuNTパッケージに比べて高額だが、充実した装備を考慮するとコストパフォーマンスは非常に高い。

一方ヴェゼルは“Z PLaYパッケージ(369万9300円)”を選べば、装備や価格の面でカローラクロス Zアドベンチャーと並ぶ。しかしその場合は、HuNTパッケージならではの内外装と防水シートは諦めなければならない。装備選択の狭さがヴェゼル HuNTパッケージの大きな足かせだ。

しかし、アウトドアシーンにおける室内空間や使い勝手はヴェゼルの方が優れている。装備で劣るという条件が呑めるのであれば、入手困難な状態にあるカローラクロスの代替としてヴェゼル HuNTパッケージは魅力的な選択候補となり得るだろう。

車両本体価格

トヨタ カローラクロス Z“Adventure”:366万3000円

ホンダ ヴェゼル e:HEV X HuNTパッケージ:310万8600円