連載
自衛隊新戦力図鑑空対艦ミサイルを空対空ミサイルに
防衛省が2026年8月31日に発表した来年度予算の概算要求で、開発中の国産超音速ミサイル「ASM-3改」に「空対艦/対空ミサイル」と記したことが注目を集めている。
ASM-3は、国産3番目の空対艦(航空機から艦船を攻撃する)ミサイルとして開発された。マッハ3以上の超音速で敵艦の迎撃を突破することを目指したものだったが、射程が短いことが問題視され量産配備されなかった。ASM-3改はASM-3の射程延伸型であり、敵に攻撃されない安全な位置から発射するため、最大射程は400kmとも言われている(既存の国産空対艦ミサイルは150km程度)。
冒頭でも述べたように、この超音速・超長射程の空対艦ミサイルASM-3改を、空対空(航空機から航空機を攻撃する)ミサイル化するという方針が示された。そんなことが可能なのだろうか?

対艦・対空――求められる能力の違い
まず、空対艦ミサイルと空対空ミサイルの違いから見ていこう。空対艦ミサイルの主な目標は、水上を航行する大型艦艇だ。低速・大型で二次元的にしか動かないため、目標追従のため高機動である必要がない。
一方で、空対空ミサイルは航空機が相手であり、主な目標である戦闘機は高速・小型かつ3次元的に動き回る。そのため、ミサイルは高機動かつ超音速(マッハ3~4)であることが求められる。

このように能力がまったく違うため、普通に考えれば兼用できるものではない。世界的に見ても空対艦ミサイルを空対空ミサイルに転用した例は存在しない。航空自衛隊の意図は何か?

航空自衛隊がASM-3改で狙うのは、高速・小型な戦闘機ではなく、戦闘機に比べれば低速の大型機、「早期警戒管制機(AWACS)」だ。AWACSは、戦闘機部隊のはるか後方から強力なレーダーで空域全体を把握し、“空の司令塔”として味方の誘導・管制を行なう。
そのため、AWACSを撃墜できれば敵は「頭脳と目」を一気に失い、戦力を大幅に低下させる。「攻撃を受けるかもしれない」というプレッシャーを与えて後退させるだけでも、大きな効果がある。射程が長く、対艦ミサイルにしては高速のASM-3改を空対空に使う理由が、ここにある。

誘導方式はそのまま使える?
次に「どうやって当てるのか?」を考えてみよう。空対艦ミサイルは2段階の誘導方式で目標に向かう。1段階目は遠方の目標まで向かう段階。慣性航法やGPSで、おおよそ敵艦がいる方向に飛んでいく。2段階目が目標の間近。ミサイル自身のレーダーを起動させて敵艦を正確に捉え、命中する。

この2段階の誘導方式は、長射程空対空ミサイルも原則的に同じものだ。目標が二次元(海表面)から三次元(空中)に変わるため、そのまま使えるわけではないが、ソフトウェアの改修などで対応するのだろう。9月1日の記者会見で航空幕僚長は、ジャーナリストの高橋浩祐氏の質問に、(空対空ミサイル化は)プログラム改修により対応する旨の回答をしている。
実は対AWACSを想定した超長射程空対空ミサイルは、アメリカ軍が先行している。艦対空超長射程ミサイルの空中発射型AIM-174Bはすでに配備され、8月にはAIM-424 LRAAMが発表された。日本も既存のASM-3改を「空対空」化することで、早期に対AWACS攻撃能力を獲得する狙いがあると思われる。

