
先生:損 保太郎
某損保サービスセンターに勤務。修理費用を聞いて、その高額さに驚くどころか怒り出す人もいるという。今回は高騰するクルマの修理費がテーマだよ。
生徒:モン太
「ちょっと擦ったくらいなら大した金額じゃないでしょ」と思っていたが、実際の見積もりを見てビックリ。なぜそんなに高いのか気になって仕方がないモン。
修理代が6年で約25%アップ! 部品代も工賃も上昇傾向
保太郎 ここ数年、クルマの修理費用はかなり上がっているんだ。現場での感覚としても、「ひと昔前なら20万円くらいかな?」と思うような修理でも、実際に見積もりを取ったら30万円を超える、なんてケースは珍しくないよ。
モン太 上がり幅がえげつないモン。ボッタクってるモンか?
保太郎 あはは、そういうわけじゃないよ。損害保険料率算出機構のデータを見ると、車両保険の1件当たり修理費は2017年度の29万329円から2023年度には36万3149円へ上昇している。約6年間で25%ほど上がった計算になるんだ。

モン太 ホントに上がってるモンな。なんでこんなに高くなったモン?
保太郎 自動車業界に限った話ではないけれど、物価高や人手不足による人件費の上昇、それに部品価格のアップが大きいね。
修理費の内訳を見ても、2023年度の車両保険では部品費が50.7%、工賃が22.8%、塗装費が17.3%を占めている。つまり部品代だけじゃなく、作業するための工賃や塗装費まで幅広く影響を受けるんだ。
モン太 なるほど。単純にパーツだけが値上がりしているわけじゃないモンな。
保太郎 そういうこと。それに最近のクルマは、安全運転支援装置の普及も修理費を押し上げる要因になっている。
衝突被害軽減ブレーキや車線維持支援システム、全方位モニターなどを動かすために、車体にはカメラやセンサーがたくさん付いているよね。そうした部品は前後バンパーやドアミラーなど、ぶつけやすい位置に付いていることも多い。
モン太 壊したら高そうだモン……。
保太郎 部品そのものが高額なだけじゃない。バンパーやミラーなどを交換したあと、システムを正しく作動させるためにエーミング、つまりカメラやセンサーの調整・校正作業が必要になるケースもあるんだ。
さらに意匠性の高い部品が増えたことも理由のひとつ。とくにLEDヘッドランプは内部が一体化されていたり、デザインが複雑だったりするから、国産車でも片側10万円を超えるものは珍しくない。
モン太 ひぇ~、おそろしや~。人件費アップ、ハイテク化、パーツそのものの高額化。いろんなものが影響していてるモンな!
ミラー片側10万円!? カメラ付きなら交換して終わりじゃない
モン太 修理費が高くなっている理由は分かったモン。じゃあ実際、どれくらい掛かるモン?
保太郎 気になるよね。今回はバイクとクルマの接触で起こりそうな2つのケースを想定して、参考見積を作ってみたよ。
まずは、バイクですり抜け走行中に軽自動車の左側ドアミラーを破損させてしまったケース。
この車両・条件での見積額は、合計9万5205円。ざっくり約10万円だ。
モン太 ミラー1個で約10万円!? そんなにするモンか?
保太郎 このクルマには全方位モニター用のカメラがミラーに内蔵されているんだ。ミラー本体だけで約5万6000円。カバーや交換工賃に加えて、全方位モニターの再設定作業も必要になる。「ミラー1個を交換するだけ」と思っていても、最終的には約10万円かかってしまうんだ。

この金額は特定車両・条件で試算した一例です。車種や装備、修理方法などによって金額は異なります。
モン太 もう軽い気持ちですり抜けはしないモン! で、もうひとつは?
低速の出会い頭でも約29万円! ヘッドライトに塗装、再設定まで必要
保太郎 次の例は、住宅街の十字路交差点で、低速の出会い頭事故を起こしてクルマの右前にぶつけてしまったケースだ。
フロントバンパー、右ヘッドランプ、右フロントフェンダーに損傷があったと想定している。対象のクルマは、さっきのミラー交換と同じ車両だよ。
モン太 低速なら、さすがにそこまで高くないモンね?
保太郎 これが合計29万246円なんだ。
モン太 約30万円!? ちょっとした事故の金額じゃないモン!
保太郎 右ヘッドランプユニットだけで約7万6000円。それにバンパーやフェンダー、グリル類などの交換が重なる。さらにフロントバンパーには全方位モニター用のカメラが付いているから、カメラ自体が壊れていなくても、バンパー交換後にはシステムの調整・校正が必要になるケースがあるんだ。
モン太 また再設定作業!
保太郎 そう。しかも今回は塗装作業もある。
知っている人もいると思うけれど、外装部品は未塗装の状態で供給され、車体色に合わせて塗装が必要になるものも多い。このケースではフロントフェンダーを塗装するんだけど、そのパネルだけを塗ると隣接するフロントドアとの色味の違いが目立つ場合がある。
そこで必要に応じて、隣のドアへ少しずつ色をなじませる「ぼかし塗装」をするんだ。
モン太 でも見積もりにフロントドアの部品脱着まで入っていたら、「過剰修理じゃないの?」って思っちゃうモン。
保太郎 そう感じる人もいると思う。でも、ぼかし塗装をきれいに仕上げるには、必要に応じてドアの付属品を外したり、一度外すと再使用できない部品を交換したりすることもある。
一見すると関係なさそうな項目でも、きれいに直すための工程として必要になる場合があるということなんだ。

この金額は特定車両・条件で試算した一例です。実際の金額は車種、損傷状態、部品価格、塗装範囲などによって異なります。
モン太 ちょっとした事故でも、想像していた倍くらいの修理費だったモン……。
保太郎 しかも最近は、クルマ自体のハイテク化がさらに進んでいる。損害保険料率算出機構では2024年度までの修理費統計も公開されていて、継続して修理費動向を集計している。修理費の高額化は過去の話ではなく、今も注意しておきたいテーマなんだ。
モン太 バイクで相手のクルマにちょっと当てただけだから大丈夫、なんて思わない方がいいモンな。
保太郎 そうだね。そこで大事なのが対物賠償責任保険。相手のクルマや物を壊してしまった時の賠償をカバーする補償だから、こうした修理費の高額化を考えても、契約内容はしっかり確認しておきたいね。
モン太 やっぱり万が一事故を起こした時に困らないよう、自動車保険、つまり任意保険にはちゃんと入っておきたいモンな!
※ここでは一般的な自動車保険や修理費について解説しています。修理費や補償内容、保険金の支払条件などは、車種、損傷状況、修理方法、契約内容などによって異なります。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年11月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】
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