Q:チェーンの遊びって必要なの? たるんでいるより張ったほうが良さそうだけど?

神奈川県/チェーン調整苦手さん

結論から先に言えば、チェーンをピンピンに張ってはいけない。チェーンには、リヤサスペンションが動いたときのために、車両ごとに決められた適正なたるみが必要だからだ。逆に緩すぎてもチェーンが暴れたり、スプロケットから外れたりする危険がある。つまり大事なのは「できるだけ張る」ことではなく、指定された範囲に合わせること。

あの“たるみ”はサボりじゃない! サスが沈むとチェーンは張る

後輪はスイングアームの先端に取り付けられ、スイングアームは車体側のピボット(フレームとスイングアームが繋がっている部分)を支点に上下する。段差を越えたり、ライダーが乗ってリヤサスペンションが沈んだりすると、リヤアクスル(リヤホイールがささっているシャフトの部分)は真上へ移動するのではなく、スイングアームピボットを中心に円弧を描いて動いている。

いっぽう、ドライブチェーンはエンジン側のフロントスプロケットと、後輪側のリヤスプロケットを結んでいる。ここで重要なのが「フロントスプロケットの中心」「スイングアームピボット」「リヤアクスル」の3点の位置関係だ。通常の停車状態では、この3点は一直線には並んでいない。ところがリヤサスペンションが沈んでスイングアームの角度が変わると、3点は一直線に近づいていく。このときフロントスプロケットからリヤアクスルまでの距離が長くなるため、チェーンの遊び(たるみ)は減っていく。

そのため、停車状態でチェーンをピンピンにしてしまうと、走行中にリヤサスペンションが沈んだとき、チェーンが必要以上に引っ張られてしまったり、リヤショックの動きが妨げられる。チェーンに残されている“たるみ”は余っているのではなく、バイクが動くために必要な余裕なのだ。

「25〜35mm」は適当な数字じゃない! 正しく測るには?

理屈が分かったところで、次は実際にどれくらいの数値に収めれば良いのか。2026年型CT125・ハンターカブでは、ドライブチェーンの遊びは25〜35mmに指定されている。「少し緩んで見えるから、もうちょっと張っておこう」と感覚だけで調整するのではなく、まずは自分のバイクの指定値を確認したい。

点検するときは、前後スプロケットの中間付近でチェーンを上下に動かし、その移動量を確認するのが基本。ただし、車両の姿勢や測定位置などは車種によって指定が異なる場合があるため、取扱説明書に従うのが確実。指で押して「こんなもんかな?」ではなく、一度定規を当てて測ってみると、感覚的に思っていた適正値と違っていることもある。

さらにチェーンは、全周が必ず均等に摩耗するとは限らない。後輪を少しずつ回しながら複数箇所で確認し、場所によってたるみ量が大きく違わないかも見ておきたい。張り具合の差が大きかったり、一部のリンクだけ動きが悪かったりするなら、単なる張り調整だけではなくチェーンそのものの状態も確認したいところだ。

張りすぎても、緩すぎてもダメ! それぞれ何が起きる?

張りすぎたチェーンは、リヤサスペンションが沈んだときに必要以上の張力が掛かりやすくなる。そうなればチェーンや前後スプロケットだけでなく、フロントスプロケットが取り付けられている出力軸や、その周辺のベアリングなどにも余計な負担を掛ける可能性がある。また、チェーンが突っ張ればリヤサスペンションの動きを邪魔することにもつながる。

だからといって、緩いほど良いわけでもない。たるみが大きすぎると、加速や減速のたびにチェーンが大きく上下し、ガチャガチャと音が出たり、チェーンケースや周辺部品へ当たったりすることも。さらに状態が悪化すれば、スプロケットから外れる危険性も高まるからだ。

ピンと張ったチェーンを見ると、なんとなく「きっちり整備してある!」ように見える。でも、本当に良い状態は見た目では判断できない。走って、リヤサスペンションが沈んで、また伸びる。その動きにちゃんと付き合えるだけの余裕を残しておく。

チェーンの“遊び”って、余っているんじゃなくて、バイクがきちんと動くために必要な余白なんです。「そういえばしばらく見ていないな」という方は、一度確認してみると良いかもしれません。

【モトチャンプ編集部】