全長4410mmのコンパクトSUVに7人乗り! その狙いはどこにある?

日本では2026年7月24日に発売された新型シトロエン「C3エアクロス ハイブリッド」。最大のトピックは、コンパクトSUVでありながら3列7人乗りを実現したことだ。
ボディサイズは全長4410mm×全幅1790mm×全高1660mm。先代からホイールベースを65mm延長し、2670mmとすることで3列シートを成立させた。

ただし、ここで疑問が浮かぶ。そもそも、このサイズのSUVに3列目は必要なのだろうか。7人乗りが必要なら、最初からミニバンを選べばいいという考え方もある。しかし、普段は1〜4人で移動し、ときには祖父母や子どもの友人を乗せる。そんな使い方なら、常に大きなクルマを所有する必要はない。新型C3エアクロスが提案するのは、まさにそうした使い方だ。

しかも、単に乗車定員を増やしただけではない。3列目は左右独立して格納でき、2列目には6:4分割可倒式シートを採用。乗車人数や荷物の量に合わせて室内を使い分けられる。
つまり、7人乗りであること以上に、普段はコンパクトSUVとして使いながら、必要なときだけ乗車定員を増やせることが、このクルマの価値なのだろう。

身長181cmでも座れる3列目! ただし、足元には相応の割り切りが必要
では、肝心の3列目はどれほど使えるのか。実際に身長181cmの筆者が座ってみた。まず意外だったのは、頭上空間だ。コンパクトなボディに無理やり3列目を押し込んだ印象があったのだが、座ってみると頭が天井に触れることはない。予想していたほどの窮屈さは感じなかった。

一方、足元はかなり独特だ。3列目はフロアに対して座面が低く、座ると膝が大きく持ち上がる。いわゆる体育座りに近い姿勢になる。しかし、2列目シートの下に足先を入れられる(助手席側のみ)ため、足元のスペースが完全に失われているわけではない。

また、シートのクッションも予想以上にしっかりしている。3列目だからといって、ただの補助席のような薄っぺらい座面ではない点は好印象だった。
もっとも、「大人でも座れる」ことと、「大人が快適に移動できる」ことは別問題と考える必要はある。着座姿勢を考えれば、3列目は子どもや短距離移動を中心に考えるのが現実的だろう。大人7人で長距離を移動する用途には少々厳しいかもしれない。

それでも、いざというときに2人分の座席を増やせるのは魅力だ。少なくとも、カタログ上の乗車定員を満たすためだけに設けられた、有益な空間利用だと感じた。
145PSのハイブリッドは軽快! シトロエンらしいソフトな乗り心地も健在
走り出してまず感じたのは、発進の軽快さだ。パワートレインは1.2L直列3気筒ガソリンターボエンジンに電動モーターを組み合わせた48Vハイブリッド。システム最高出力は145PSで、トランスミッションには6速DCTを採用する。

スペックだけを見ると、それほど力強い印象は受けないかもしれない。しかし、実際にはモーターによるアシストが効いており、発進時の加速は軽快だ。また、車内の静粛性も良好だった。とくに風切り音は気にならず、落ち着いた雰囲気で移動できる。
そして、やはり印象に残るのが乗り心地である。新型C3エアクロスには、シトロエン独自の「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)」が標準装備されている。

実際の乗り味はかなりソフトだ。路面からの入力を硬さで抑え込むのではなく、柔らかく受け止めるような感覚がある。乗り心地のよさを重視するシトロエンらしさは、この新型でも健在だった。
さらに、1列目と2列目にはアドバンストコンフォートシートを採用。厚みのあるクッションによって身体を受け止める設計で、サスペンションとシートの両面から快適性を追求している。


もちろん、気になる部分もあった。ひとつは回生ブレーキだ。減速時の効き方がやや強く感じられ、慣れるまではアクセル操作に気を使う場面がある。また、シフト操作にも少々戸惑った。Dレンジに入れたつもりがNレンジになってしまうことがあり、操作感には改善の余地を感じた。さらに、特徴的な2本スポークステアリングは、駐車時などにどの程度ハンドルを切っているのか、感覚的につかみにくいところもあった。

こうした細かな部分には慣れが必要だが、クルマとしての基本的な乗り味は好印象。とくに、快適性を重視した走りには、このクルマならではの魅力がある。
7人乗りSUVの3列目は「普段使わない」からこそ価値がある?

新型C3エアクロスの価格は、ベーシックグレードの「PLUS HYBRID」が399万9000円、上級グレードの「MAX HYBRID」が435万円だ。いずれも3列7人乗りで、145PSのハイブリッドシステムやPHC、アドバンストコンフォートシートを標準装備する。MAXでは17インチアルミホイールやステアリングヒーター、フロントシートヒーター、スマートキーなどが追加されるが、基本的な走行性能や乗車定員は変わらない。
では、このクルマは誰に向いているのか。試乗して感じたのは、3列目を日常的に使用する人よりも、普段は5人以下で使い、ときどき6〜7人で移動する機会がある人に適しているのではないか、ということだ。3列目を格納すれば荷室として使え、必要になれば座席を増やせる。日常の使い勝手を大きく犠牲にすることなく、乗車人数の変化に対応できるのが強みだ。
一方、3列目の快適性を最優先するのであれば、やはりミニバンのほうが合理的な選択になるだろう。だが、新型C3エアクロスの魅力は、単純に乗車定員や室内空間の広さだけでは語れない。シトロエンらしい個性的なデザイン、ソフトな乗り心地、軽快なハイブリッドの走り。そこに「いざというときは7人乗れる」という選択肢が加わったことに意味がある。
7人乗りだから選ぶのではなく、気に入ったコンパクトSUVが、実は7人乗りにも対応している。そんな捉え方をすると、新型C3エアクロスはなかなか魅力的な存在に思えてくる。
