業界人コラム 日本の自動車工場は「遅れている」のか? テスラがギガキャストを使い始めた理由【写真・10枚目】 【写真2】 IDRAはもともとイタリアの機械メーカーだったが、2008年に香港のLKテクノロジー・ホーリディングが買収し、大型鋳造機ビジネスを本格的に開始した。おそらくテスラは2番目の顧客と思われる。 【写真3】 リョービの菊川工場(静岡県)にあるUBEマシナリー製の6500トン型鋳造機。必要な設備と合体させると、このように巨大な設備になる。鋳型も巨大であり、4分割してもひとつが50トンを超える。 【写真4】 テスラが「ロードスター」のボディ設計を委託したのは英・ロータスだった。エンジンを使わないため熱対策が不要になり、全体をアルミ合金で作ることができた。ロータス「エリーゼ」「エヴォーラ」はエンジンを積むためエンジンルームだけは鋼板を使っていた。 【写真5】 このようにカットされたり折り曲げられたりしたアルミ部品を接着剤、ボルト締結、溶接で組み立てる。大掛かりな設備は不要であり、作業は2〜3人でできる。ロータスのボディ構造をテスラが学び、次の「モデルS」では自前の設計になる。左上の写真は1台分の部品を置くための箱。部品を並べると左下のようになる。 【写真6】 テスラ「モデルS」のフロント部分。バンパー裏側にあるバンパービームの奥に、このような形状のアルミ鋳物がある。この大きさなら型締め力3500トンの鋳造機で製造できる。この鋳物から左右の前輪内側を通る上下2段の8角形フロントサイドメンバーが見える。これはアルミ押出材を曲げたもの。左右のフロントサイドメンバーをつなぐ横方向のクロスメンバーもアルミ押出材。 【写真7】 「モデルY」の右側リヤホイールアーチ部分。見てわかるようにリヤサイドメンバーに相当する下側部分にはX状の補強リブが入っている。この、Xが向いている方向で型抜きするため、左右一体では作ることができない。ホイールアーチ内に空いている四角い穴は、素材を調べるために切り取られた跡であり、実際の製品ではここは壁になっている。ただし、この縦方向の面は厚みがあるため重量が嵩む。ホイールアーチまで一体化したアルミ鋳物を他社があまり採用しない理由は重量にある。 【写真8】 2024年モデル「モデルY」のフロント部分。ご覧のようにホイールアーチ部分はアルミ鋳物であり、そこから前方にアルミ押出材とアルミ薄板で作ったフロントサイドメンバーが出ている。この構造を2年弱でやめ、鋼製に戻した本当の理由は何なのだろうか。 【写真9】 UBEマシナリー製6500トン鋳造機の、固定プラテン取り付け部分。人が乗っている部分は、使用時には左方向にスライドする。巨大な鋼材のカタマリであり、こうした一体型部品を製造する設備と手間は想像を絶する。また、据え付けのために分解して運搬するときは、日本の道路にかかっている橋の重量制限が問題になる。ちなみに超大型トレーラーで運搬される新幹線車両は44トンであり、ギガキャストの鋳型よりもずっと軽い。 【図1】 モノコックボディの見本。2009年発売のBMW5シリーズ(F10型)のボディは約300点の小さなパネルを接合して作られている。色分けしてある部分は、赤がもっとも強度の高い鋼板を使っている部分で、金色は赤よりは強度を下げている。緑はアルミ鋳物。シルバーの部分はそれほど高い強度の鋼板は使っていない。 【図2】 溶けた素材(溶湯と呼ぶ)を鋳型に閉じ込めて冷やすことで成形する方法。隅々まで素材を行き渡らせながら製品の中に気泡を閉じ込めないように型と溶湯の注入方法を設計する。 【図3】 オレンジ色の部分がアルミ鋳物「ギガキャスト」だ。ちょうどボディ中心線上で左右に分割されている。一体ではない。左右車輪の内側をボディ中心線と並行に置かれたリヤサイドメンバーを厚手で複雑なリブ形状のアルミ鋳物にしたことでボディ剛性は格段に上がった。半面、重量が増え修理には手間とコストがかかるようになった。 【図4】 一般的なアルミ鋳造機の構造。可動盤=可動プラテンと固定盤=固定プラテンにそれぞれ鋳型(金型)を取り付け、型締シリンダーで両方を押さえる。このときの押さえる力が型締力。アルミ溶湯は射出シリンダーとプランジャーロッドで押し込む。ゆっくり押し込むと最初に鋳型に入った溶湯が固まり始めてしまうので、高圧をかけて素早く押し込む。この方法を圧力鋳造と呼ぶ。 この画像の記事を読む