人の髪の毛ほどの薄いガラスが曲面化を可能に。ボディの輪郭に沿って配置したOLEDパネル

アウディが2026年7月に発表したQ9は、同ブランド初のラージフルサイズSUVだ。全長5.31m、ミラーを含む全幅2.21m、全高1.81m、ホイールベース3.14mのボディはアウディ史上最大。世界第2位の自動車市場であるアメリカの顧客に向けて開発したモデルで、アウディのSUVラインナップの頂点に立つフラッグシップとなる。

アウディQ9 SUV

そんなQ9の後ろ姿で目を引くのがテールライトで、第3世代のデジタルOLEDを採用している。デジタルOLEDとは、発光面を多数のセグメントに分割し、それぞれを個別に点灯・調光できるようにしたもの。バスシステムで車両の制御ユニットとつながり、点灯パターンを自在に変化させられる。面光源を収めたライトエレメントの厚さはわずか1mmだ。

アウディQ9 SUV

Q9では6枚のパネルに計512のセグメントを配置。パネルは外側、中間、内側の3種類で、セグメント数は外側が99、中間が84、内側が73となる。

アウディQ9 SUV

そして、アウディがこれまで量産車に採用したなかで最大となる外側のパネルを、3次元の曲面に成形したのもQ9のテールライトの大きな特徴である。曲面のデジタルOLEDパネルを量産車に採用したのは、Q9が世界初。曲面化を可能にしたのは、OLEDパネルの基板となるキャリアガラスの薄さだ。厚さは0.1mmと、人の髪の毛ほどしかない。これによりパネルを半径200mmまで曲げられるようになったというわけだ。

第3世代のデジタルOLEDテクノロジー

曲面化の狙いはデザインの自由度だけではない。リヤランプの外側の部分にまでOLEDを配置したことで、斜め後方のより広い角度からも光が見えるようになった。横方向からの視認性を高め、安全性の向上につなげているわけだ。パネルは耐久性や発光の均一性、コントラストについて、自動車用に定められた要件を満たすよう設計・検証されている。

セグメント数の多さを活かし、デジタルライトシグネチャーは前後で最大8種類を用意。従来のスタティック(静的)とフルアクティブ(動的)に加え、今回初めてセミアクティブのシグネチャーを表示できるようになった。面で発光するOLEDの特性によってムラの少ない均一な光が得られ、特に夜間は立体的な効果が際立つという。

表示するのは光のデザインだけではない。アウディはテールライトを、周囲に情報を伝える外部ディスプレイとして発展させている。Q9のコミュニケーションライトは、リヤのライトシグネチャーのなかに警告シンボルを表示し、事故や故障の発生地点を後続の道路利用者に知らせる。

デジタル化とセグメントの細分化を重ねてきたアウディのOLEDテールライト

アウディが量産車のリヤライトにOLEDを初めて採用したのは、2016年のTT RS。自動車メーカーとして世界初の採用で、面で発光するOLEDならではの、ムラのない光と高いコントラストを実現した。

アウディTT RS

2020年には改良型のQ5とA8でOLEDをデジタル化し、セグメントの個別制御が可能に。ユーザーが複数のデジタルライトシグネチャーから好みのものを選べるようになった。2024年のQ6 e-tronでは第2世代へと進み、個別に制御できるセグメント数が10倍に増加。警告シンボルを表示するコミュニケーションライトを備え、停車中に後方から人やクルマが近づくとすべてのセグメントを点灯させて注意を促す機能も受け継いだ。そして2026年、Q9とQ7のモデルラインで第3世代に移行している。

アウディQ5
アウディQ6 e-tron
第2世代のデジタルOLEDテクノロジー
第1〜3世代のデジタルOLEDテクノロジーを集めた展示

アウディAGで照明開発の責任者を務めるシュテファン・ベルリッツ氏は、「アウディにとって照明とは、何よりもまず安全性、つまり見ることと見られることです。Q9の曲面デジタルOLEDは、デザインの自由度、パーソナライゼーション、周囲とのコミュニケーションを新たなレベルで組み合わせています」と話す。そのうえで、照明をクルマと周囲とのやりとりをより安全で直感的にするためのコミュニケーション手段へ、段階的に変えていく考えを示している。

歴代アウディのデジタルOLED採用モデル(TT RS、A8、A6、Q6 e-tron、Q7、Q9)